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終わらない悪夢、テリー・ギリアムの世界

2011-02-16 00:30:16 | 映画
テリー・ギリアム監督の「Dr.パルナサスの鏡」を観た。
彼の映画の特徴は、凝った映像と不条理な世界感にある。
これで、テリー・ギリアムの作品は、「12モンキーズ」「ブラザーズ・グリム」「未来世紀ブラジル」に続き4作目。
わざわざテリー・ギリアムだからと選んだわけではなく、レンタルDVDの表ケースに印刷されている絵とあらすじで判断すると、彼の作品に当たるのだ。
彼の作品は、観て楽しいとか幸せになるものでは決してない。
終わりのない悪夢、不条理に支配されている世界を凝りに凝った映像美で描いている。
そして、観たあとは、心の芯に抜けない棘が刺さった状態になり、時折ふっと棘の存在を思い出し、鈍い痛みを感じることになる。
特に、「未来世紀ブラジル」。
大いなる悪意のある意思に管理・統制された世界で、その意思の存在に気付いて抵抗もしくは脱出を試みる非力な人間の苦悩と挫折・敗北する姿を描いた作品。
観て3ヶ月くらい経つけれど、この棘の存在は薄れる気配はない。
それどころか、「未来世紀ブラジル」と眼に見えないダクトで繫がれていて、さらにダクトが太く数も増えていくような、奇妙な感覚に襲われる。
今回の「Dr.パルナサスの鏡」を観たことによって、自分と異世界と繫ぐものが、ダクトの他に鏡も加わったようだ。
それが、自分をどこへ連れて行こうとしているのか、そこは明るく希望に満ちる常世の春なのか、はたまた、高い塀に囲まれた出口のない迷宮なのか。
テリー・ギリアムを水先案内人にするならば、今眼には素晴しく美しくとも、美しさで覆われた世界の隣、行き着くところはメビウスの輪の終着点のない混乱と絶望の世界が待ち受けているのだろう。
いったい、どんな世界が望みなのか、深く考えるために、心と世界を凝視すると、はたして、その有様をしっかりと受け止められるのか、まことに心もとない限りである。

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