りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“アル・ロー” ―全16場― 完結編

2013年03月03日 20時08分46秒 | 未発表脚本

      その時、扉をノックする音。

      リリ、立ち上がる。

 

  リリ「・・・はい・・・」

 

      アル、入って来る。

 

  アル「リリ・・・」

  リリ「アル・・・(慌てて涙を拭うように。)」

  アル「ミシェルの奴に・・・何か聞いたのかい?」

  リリ「(微笑む。)もう・・・帰ってしまうんですってね!」

  アル「長いこと留守にしてたから・・・仕事が立て込んでてね。」

  リリ「私、今まで・・・考えれば当たり前のことなのに・・・アルに

    も自分の生活があるなんて・・・思ってもみなかった・・・馬鹿

    よね・・・いつまでも一緒にいれる筈ないのに・・・私・・・」

  アル「リリ、違うんだ!」

  リリ「・・・え・・・?」

  アル「一緒について来て欲しい・・・」

  リリ「アル・・・」

  アル「俺と一緒に行こう・・・」

  リリ「(嬉しそうに微笑む。が、直ぐに悲しそうな眼差しになり、

    ゆっくり首を振る。)」

  アル「どうして!?」

  リリ「・・・私とあなたは・・・住む世界が違い過ぎるわ・・・。私を

    連れて帰っても・・・あなたが困るだけ・・・」

  アル「そんなことある訳ないだろ!!俺は君を愛しているんだ

     !!ずっと一緒にいたい・・・!!」

  リリ「・・・もう・・・決めたの・・・ロバンさん達と行くって・・・」

  アル「リリ!!(腕を掴む。)」

  リリ「離して・・・(涙声で。)・・・あなたとは行けない・・・」

 

         リリ、走り去る。

         

  アル「・・・どうして・・・リリ・・・」

 

         フェード・アウト。

 

      ――――― 第 15 場 ―――――

 

         カーテン前。マハル出る。

         続いてリリ出る。

 

  マハル「あんた、本当にアルについて行かないの?」

  リリ「(頷く。)」

  マハル「彼について行かないでどうするの!?あんた、一生

      こんな芝居一座で過ごすつもり?」

  リリ「・・・私・・・」

  マハル「アルは真剣に、あんたのことを愛してるのよ!!あん

      ただって分かってんでしょ!?」

  リリ「・・・私なんかが一緒に行ったら・・・迷惑なだけですから

    ・・・」

  マハル「あんた、どうして自分にもっと自信を持たないの?アル

      は初めてあんたを認めてくれた人だって言ってたじゃな

      い!!」

  リリ「・・・マハル・・・」

  マハル「第一、この一座のスターは2人もいらないのよ!!こ

       の一座のスターは私!!あんたがいつまでもいたら

       迷惑なのよ!!愚図愚図言っててないで、さっさとアル

       と行っちゃいなよ!!・・・悔しいけど・・・アルにもあん

       たにも・・・お互いが必要なのよ・・・。あんたが行かない

       んなら、私が行っちゃうよ!!」

  リリ「(思わずマハルに抱き付き、涙声で。)マハル!!ありがと

    う・・・ありがとう・・・」

  マハル「分かったら、さっさと行きなよ!!後は私が上手く皆に

      話しとくからさ・・・。ティボーもちゃんと連れてくんだよ。」

  リリ「(頷く。)・・・あなたのことは一生忘れない・・・」

 

         リリ、走り去る。

 

  マハル「幸せにならなかったら許さないからねー!!(叫ぶ。)

       」

 

         マハルの叫び声で、フェード・アウト。

 

      ――――― 第 16 場 ―――――

 

         カーテン開く。と、ステーションの雑踏の中、

         汽笛の音が響く。

         人混みの中からダンドラ、ミシェル現れる。

         アル、ゆっくり2人に続く。

 

  ダンドラ「元気だせよ!彼女が行かないと言ったんだろ?仕方

       ないじゃないか。戻ったら女なんか選り取りみどりだ。」

  アル「軽々しく言うな!!彼女程の素晴らしい女性がそう簡単

     に見つかるものか!!」

  ダンドラ「(呆れたように。)相変わらず短気だな。」

  アル「俺は諦めるものか!!いつか必ずもう一度彼女を捜し出

     してみせる!!」

  ダンドラ「それにしても全く驚いたな。朝になってみると、もう出

       発した後だったなんて。リリをおまえに拐われそうで、

       焦ったんじゃないか、あの親方。(笑う。)」

  アル「畜生!!売れっ子になった途端、手の平返しやがって

     、あの野郎!!」

  ダンドラ「やれやれ・・・ミシェル、チケットを買いに行こう。こい

       つは手に負えないぜ・・・」

 

         ダンドラ、ミシェル出て行く。

         アル、トランクケースに腰を下ろし、

         物思いに耽る。 

         その時、雑踏に紛れて微かにアルの名

         を呼ぶ声が聞こえる。

         アル、驚いて立ち上がり、辺りを見回す。

 

  アル「リリ・・・?そんな訳ないか・・・」

 

         雑踏の中から現れたリリ、アルから

         少し離れて立つ。

 

  リリ「(嬉しそうに。)アル!!」

  アル「(驚いて。)リリ!?どうして・・・」

  リリ「私も・・・一緒に行っていい・・・?(微笑む。)」

 

         アル、リリの後ろに立つティボーに気付く。

         ティボー、嬉しそうに頷く。

 

  アル「(リリに駆け寄り抱き締める。)勿論さ!!」

 

        

         (音楽流れる。)

         ダンドラ、ミシェル入って来る。

         アルとリリに気付き、2人嬉しそうに

         顔を見合わせる。

         アル、ダンドラに気付き2人、頷き合う。

         ダンドラ、ミシェル、ティボー去る。

         アル、リリの手を取り歌う。

 

         “いつからだろう・・・

         この手を離したくないと

         心から感じたのは・・・

         今まで一度も触れたことのない

         胸に染み渡るこの温かさに・・・

         いつも側にいて欲しい・・・

         そう感じたのは・・・

         もう離さない決して・・・

         やっと掴んだこの温もりは

         永遠の先へと続いて行く

         終わりのない幸せだから・・・”

         

   

 

  アル「愛しているよ・・・」

  リリ「(嬉しそうに微笑む。)」

 

         嬉しそうに手を取り合い、微笑み

         彼方を見遣る2人。

 

 

 

 

 

 

 

 

         ――――― 幕 ―――――

 

 

 





















“エドワード” ―全12場― 完結編

2013年03月03日 20時06分03秒 | 未発表脚本



  デビル「幼い頃のおまえには、死への興味があった・・・。だから
      普通の人間には見えない、俺の姿が見えたんだ。そして
      再び俺と再会した・・・それは今、おまえが死んでもいいと
      心に感じているからだ!!」

         デビル歌う。

         “さぁ行くぞ
         何もかも分かる時が来た
         死の国へ・・・
         誰もが恐怖に包まれ
         足を踏み入れるのを拒む場所
         扉を開ける時がきた
         おまえが望んだその先に
         待つのは絶望か快楽か・・・”

         デビル、エドワードの手を引き後方へ
         行こうとする。

  エドワード「待ってくれ・・・」
  デビル「(ゆっくりエドワードを見る。手を離す。)何だ・・・怖気づ
      いたのか・・・?」
  エドワード「違うんだ・・・俺がおまえと行けば・・・本当にローラは
        ・・・ローラは元の優しく清らかな心を持つ人として・・・
        ずっと生きることが出来るんだな・・・?」
  デビル「(ニヤリと微笑む。)ああ・・・そうさ・・・」
  エドワード「(安心したように。)・・・よかった・・・」

         デビル、段上へ。
         2人、其々歌う。

    エドワード               デビル
    “大切なことに気付いた・・・    “大切なことなど
    やっと・・・               ありはしない・・・
    誰かへの想いは           自分だけが正しくて
    自分への想いと同じこと・・・    他人を思い遣る暇などない
    誰かの為になることは       自分の心に忠実に
    自分の心を満たすこと・・・      興味があれば覗けばいい
    たとえ共に同じ世界に       たとえそこが闇に
    生きることは出来なくても・・・    支配された暗黒の国でも・・・
    心が繋がっていれば        おまえ一人で見つけた
    それでいい
    世界なんて関係ないんだ・・・    誰も知らないその場所へ
    相手を思えば自ずと分かる     さぁ来るんだ今!!”
    自分のいるべき場所が
    どこか・・・”

         その時、ローラの声が聞こえる。

  ローラの声「待って!!」

  エドワード「・・・ローラ・・・?」

         そこへ下手よりローラ、花の咲いた
         鉢植えを手に、走り登場。

  ローラ「エドを連れて行かないで!!」
  デビル「誰だ?(ローラを認める。)何だ、花で生き返った娘か・・・
      」
  エドワード「ローラ・・・どうしてここへ・・・」
  ローラ「エド・・・ありがとう・・・私の為に・・・でももういいの・・・」
  エドワード「・・・え・・・?」
  ローラ「もう・・・あなたのその想いだけで十分よ・・・(手に持って
      いた鉢植えを、下に投げ付ける。)」

         鉢植えが壊れる音。(“ガシャーン”)

  エドワード「ローラ!!」
  デビル「何!?」
  エドワード「君は何てことを!!折角得た命の花を・・・」
  ローラ「こんな花で生き返ったって・・・私は幸せではないのよ、
      エド・・・。況して・・・愛するあなたが私の身代わりとなって
      私の前からいなくなるなんて・・・私には耐えられない・・・
      」
  エドワード「ローラ・・・」
  デビル「なんて愚かな人間だ・・・!!その花がないとおまえは、
      5分と生きてはいられないんだぞ!!」
  ローラ「いいわ!!(デビルの前へ進み出る。)さぁ、死の国の使
      いの者よ!!私をあなたの国へ連れて行くがいいわ!!
      」
  デビル「そこまで言うならいいだろう・・・!!おまえの命、ここま
      でだ!!」
  エドワード「ローラ!!」

         デビル、ローラの手を掴む。
         と、ローラは表情がなくなり、人形のよう
         になる。

  エドワード「ローラ!!ローラ!!行くな・・・!!」

         デビル、ローラの手を引き、後方へ
         行こうとする。
         その時、声が聞こえる。

  声「お待ちなさい!!」

  デビル「(回りを見回す。)・・・え・・・?」
  エドワード「(回りを見回す。)」

         そこへ上手よりエンゼル、ゆっくり登場。

  エンゼル「待ちなさい、デビル・・・」
  デビル「エンゼル・・・!!」
  エドワード「・・・エンゼル・・・?」
  エンゼル「あなたの役目は、良い人間を黄泉の国へ連れ帰るこ
        とではないでしょう・・・?」
  デビル「・・・しまった・・・(小声で。)」
  エンゼル「正しい生き方をして、一生を終えた人間を、天の国へ
        導くのは私の仕事・・・あなたの仕事は良くない行いを
        して死んだ人間を、黄泉の国の魔王の裁判を受けさせ
        る為に連れ帰ること・・・の筈よ。」
  デビル「い・・・いかにも・・・そうだが・・・」
  エンゼル「さぁ、ここからは私が引き継ぐから、あなたはあなたの
        仕事にお戻りなさい・・・。今度また同じような悪いこと
        をしようとしたなら、私から魔王に頼んであなたが裁判
        裁かれることになるわね・・・。」
  デビル「わ・・・分かったよ・・・!畜生・・・どうも俺様はこのエンゼ
      ルとは馬が合わないんだ・・・。(エドワードに向かい。)お
      い、おまえ・・・また死後の世界を覗き損ねたな・・・(笑う。
      )」
  エンゼル「(咳払いをする。)」
  デビル「(笑うのを止めて。)あ・・・いや・・・(溜め息を吐く。)まぁ
      いい・・・もう俺様の出番はなさそうだ・・・。じゃあな!!」
      
         デビル、消えるように去る。

  エンゼル「本当に困った人・・・。時々あのデビルは、人間を困ら
        せるようなことをして、皆に迷惑をかけるの・・・。今回
        の花のようにね・・・。」
  エドワード「あなたは・・・」
  エンゼル「私は天の国の使いの者、エンゼル・・・」
  エドワード「天の国・・・」
  エンゼル「ええ・・・」
  エドワード「院長先生の言ったことは・・・本当だったんだ・・・」
  エンゼル「あなたのお父様、お母様も私のところへやって来たの
        よ・・・小さなウサギさんもね・・・」
  エドワード「・・・え・・・?」
  エンゼル「(微笑み頷く。)さぁ、ローラ・・・あなたは私と一緒に行
        きましょう・・・」
  ローラ「・・・はい・・・」
  エドワード「ま・・・待って下さい!!」
  エンゼル「何かしら・・・?」
  エドワード「少しだけ・・・少しだけ彼女に最後の別れを言う時間
         を僕に・・・!!」
  エンゼル「・・・いいわ・・・でも急いで・・・。花が傷付いて・・・もう
         彼女の時間が残り少ないから・・・。」
  エドワード「はい・・・ありがとうございます!」

         エンゼル、上手へ去る。

    ――――― 第 12 場 ―――――

         背景変わる。(陽の差す、美しい場所に
         なる。)
         エドワード、ローラの側へ歩み寄る。

  エドワード「(ローラの手を取る。)・・・ローラ・・・」
  ローラ「・・・(気が付いたように。)エド・・・?私・・・一体・・・」
  エドワード「ローラ・・・大丈夫かい・・・?」
  ローラ「・・・ええ・・・でも・・・」
  エドワード「ローラ・・・ありがとう・・・僕を助けに来てくれた・・・」
  ローラ「・・・エド・・・私・・・(何かを悟ったように。)・・・もう・・・お
      別れなのね・・・」
  エドワード「・・・ごめん・・・僕が・・・君を守りきれなかったんだ・・・
         」
  ローラ「ううん・・・あなたが私を救ってくれたのよ・・・もう一度・・・
      あなたとこうして話すことが出来てよかった・・・。私の方
      こそ・・・ありがとう・・・」
  エドワード「君と出会ってから今日まで・・・側にいるのが当たり
         前だと思っていた・・・いつも・・・鉄砲玉のような俺が
         ・・・仕事でミスをしても・・・君は必ず笑ってくれた・・・
         そんな君が・・・(思わず言葉に詰まる。)」
  ローラ「エド・・・悲しまないで・・・。分かったでしょう・・・?住む世
      界がたとえ違っても・・・お互いが相手を思い遣る心を持
      てば・・・それで幸せなのよ・・・。あなたが自分を犠牲にし
      てまで、私の命を救おうとしてくれたこと・・・私は忘れない
      ・・・」
  エドワード「ローラ・・・」

         音楽流れ、ローラ歌う。

         “ありがとう・・・
         いつでも私に幸せをくれた・・・
         ただ側にいて
         私に笑顔を与えてくれた・・・”

         エドワード歌う。

         “ありがとう・・・
         知らずに大切だと思う
         心が芽生えた・・・
         側にいる当たり前が
         ただ心地よくて・・・
         永遠に続くと信じて疑わなかった・・・”

         ローラ、嬉しそうに微笑み、ゆっくりと
         後方へ後退りするように。

  ローラ「エド・・・ありがとう・・・ありがとう・・・(木霊する。)」

         エドワード残して、ローラ消えるように
         去る。

  エドワード「ローラ・・・!!(絞り出すように。)」

         エドワード歌う。 

         “ほんの少しの確実な時間・・・
         2人は確かにここにいた・・・
         同じ世界の住人として
         風を共有し生きた証・・・
         この手の温もりが覚えている
         たとえどんなに離れても
         会えないことを悲しんだりはしない・・・
         直ぐには会えなくとも必ず・・・
         いつかまた会える・・・だから・・・
         その時まで・・・
         ありがとう・・・”

  ローラの声(エコー)「エド・・・あなたを愛しているわ・・・」

  エドワード「ローラ・・・君を愛しているよ・・・」








          ――――― 幕 ―――――        
  








   どこから今の私言葉か・・・は、7場のラストのローラの歌~
   が正解でした(^O^)

   さて、では次回からの掲載作品ですが・・・
   今現在、書き進めているアリアちゃん作品に登場する、
   イルカのキューイくんのお話し・・・か、今回作品同様、
   昔に途中まで書き進め、放っておいた作品のどちらか・・・
   と考えています(^^;
   一先ず、明日までお待ち下さい(^_^;)
   お楽しみに~♪

   余談ですが・・・ 
   イルカのキューイくんを書き終えたら、夏の第7回人形劇
   公演の2作品目を書いて行きたいと思っています♥
   最近、優先順位を決めないと、やることが多くなってきて
   いるので、ボ~ッとしている間にどんどん時間が過ぎて
   いってしまって、とっても焦ってしまうのです・・・(´・_・`)










 ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪ ― ♪



     (どら余談^^;)

     只今、この間録音してきたばかりの新作の、編集作業
     に没頭しています(^_^;)
     中々新しいお話しが書けずにいますが、お許し下さい
     m(_ _)m




     
     2月28日(木)

     明日は人形練習日ですが、13日の小学校で公演する
     “ジュリーちゃん”を練習しようと思います♪
     最初、何を公演するかで“クリフくん”と迷ったのですが、
     色んな意味でリベンジとなるジュリーちゃんを、少し短
     めの30分バージョンに作り直し、公演しようと思ってい
     ます(^_^)
     春公演では撮り損ねたビデオも、今回は上手く撮れれば
     いいな・・・と思ってるんですけどね・・・(^_^;)

     その前に、6日は毎年呼んで頂いている小学校で、
     こちらは“アリアちゃん”の15分バージョンを公演予定
     であります♥
     
     23日が、今年度ラストになる公演がありますが、こちらは
     “ももちゃん”と“クマさん”の2本立てになる予定です♥
     
     中々、年2作品の新作発表では、どうしても使い回しが
     多くなり、そろそろ手持ちも増やしていきたいな・・・と
     思うんですけど・・・(^^;

     一先ず・・・
     3月、少しバタバタしますが・・・頑張ります(*^^)v