りとるぱいんわーるど

ミュージカル人形劇団“リトルパイン”の脚本の数々です。

“フランチェスコ” ―全14場― 完結編

2012年01月04日 23時00分16秒 | 未発表脚本


    ――――― 第 14 場 ――――― 

         紗幕開く。
         フェード・インする。と、舞台は小鳥達が囀り、
         朝靄が立ちこめ、木漏れ日溢れる森の風景。
         爽やかな朝の空気が漂う。
         中央に佇むルグラン伯。側にルネ立つ。

  ルネ「(心配そうに。)ルグラン様・・・。昨日から、大丈夫だから
     安心しろと仰っていましたが・・・如何見たところで、剣の腕
     では・・・あの・・・勝ち目はないのでは・・・。今のうちに謝っ
     て許してもらった方が・・・」
  ルグラン「煩い!!誰があんな野郎に頭を下げられると言うの
        だ!!」
  ルネ「でも・・・」
  ルグラン「確かに、剣の腕だけでは悔しいが、おまえの言う通り
        ・・・今の私に勝ち目はあるまい・・・。だが・・・(ニヤリ
        と笑う。)」
  ルネ「ルグラン様・・・?」
  ルグラン「多少、良心が痛まぬでもないが・・・」
  ルネ「一体・・・」
  ルグラン「(服の内ポケットから銃を取り出し、ルネの方へ差し出
        す。)」
  ルネ「こ・・・これは・・・(呆然と銃を見詰める。)」
  ルグラン「・・・おまえも私が死ねば・・・困るだろう?」
  ルネ「それは・・・」
  ルグラン「私がもし、奴の刃の犠牲になりかけた時には、この銃
        で躊躇わず、奴の胸を貫くのだ・・・!!」
  ルネ「ま・・・まさか私に、これでフランチェスコ殿を撃て・・・と・・・
     ?」
  ルグラン「その通りだ・・・。」
  ルネ「しかし・・・」
  ルグラン「愚図愚図言わずに早くし仕舞え!!(ルネの手に、銃
        を握らす。)」
  ルネ「(受け取った銃を見て。)・・・でも・・・」
  ルグラン「やるしかないのだ、ルネ!!こちらがやらねば、やら
        れるまで!!ゲームではない、真剣勝負の決闘に、
        相子などないのだぞ!!」
  ルネ「・・・(ルグランを見詰め、頷く。)・・・分かりました・・・。(銃
     をポケットへ仕舞う。)」
  ルグラン「やるか・・・やられるか・・・二者択一・・・。(ルネの肩へ
        手を掛ける。)躊躇うな・・・。いいな!!」
  ルネ「はい・・・!!その時は・・・」

         そこへ上手よりフランチェスコ、ゆっくり登場。
         ヴィクトール続く。
         フランチェスコ立ち止まり、ルグラン伯を見据える。
         ルグラン伯、視線に気付き、振り返りフランチェスコ
         を認める。

  ルグラン「やぁ、おはよう・・・。余りに遅いので、逃げ出したかと
        思ったよ・・・。(笑う。)」
  ヴィクトール「時間は丁度の筈だ・・・。」
  ルグラン「さぁ、とっとと始めましょう。今日は午後からパンテー
        ン公爵夫人のサロンに招かれているのでね・・・。」
  ヴィクトール「丸でもう決着が付いているような仰りようですね
          ・・・。」
  ルグラン「(笑って。)そう聞こえたのなら失礼・・・。」
  ヴィクトール「ルグラン伯は、余程の必殺技か何かを取得され
          たようだ。(笑う。)」
  ルグラン「余計なお喋りはそれまでだ。さぁ、始めよう!!」
  ヴィクトール「(フランチェスコに。)手加減せずに、さっさとかた
          をつけて仕舞え。(フランチェスコの肩に手を掛け
          る。)」

         フランチェスコ、上着を脱いでヴィクトールに
         手渡し、ルグラン伯を見据えたまま、ゆっくりと
         前へ進み出る。

  ルグラン「(笑いながら。)如何した。臆病神に舌を引っこ抜かれ
        たか・・・?」
  ヴィクトール「フランチェスコ・・・?」
  フランチェスコ「おまえのような、人を人とも思わぬ身分を鼻に
           かけた低俗な奴に、返事する舌は持ち合わせて
           いないだけだ。」
  ルグラン「(顔を強張らせて。)・・・何だと!?」
  ヴィクトール「(2人の間に立ち、2人の顔を交互に見る。)ルール
          はなし。時間はどちらか一方がギブアップするか・・・
          死ぬまで無制限・・・。」

         フランチェスコ、ルグラン伯、睨み合う。

  ヴィクトール「(胸ポケットから、白いハンカチを取り出し掲げる。
          ひと呼吸置いて。)始めろ!!(ハンカチを振り下
          ろす。)」

         緊迫した音楽が流れる。
         ルグラン、剣を抜いてフランチェスコの方へ
         向って構える。フランチェスコ、喧嘩の対戦
         のように身構える。
         2人、其々お互いを牽制しながら、ゆっくり
         立ち位置逆に。

  ルグラン「やあっ!!(剣を振り下ろす。)」

         フランチェスコ、ルグランの剣を素早く
         かわし、ルグランの腕を掴み組む。
         ルグランが剣を振り回してかかって行く
         のに対し、フランチェスコは剣を持った
         まま、鞘から抜こうとせず、喧嘩の組み手
         でかかろうとする。

  ヴィクトール「フランチェスコ!!何してる!!早く、剣を抜け!
          !」

         フランチェスコ、その声に思わず剣に手を
         かけるが、一瞬躊躇う。と、その一瞬を
         突いて、ルグラン、フランチェスコに向かって
         剣を振り下ろす。
         音楽止まり、一瞬、舞台上は全て静止し、一枚
         の絵のよう。フランチェスコ、顔を強張らせ、剣
         を落とす。
         その時、上手よりジェシカ走り登場。

  ジェシカ「フランチェスコ!!」
   
         フランチェスコ、その声にゆっくりジェシカ
         を見、微笑んで倒れる。

  ジェシカ「フランチェスコ!!(フランチェスコに駆け寄り、その
        胸に抱き起こす。)」
  ヴィクトール「(呆然と。)フランチェスコ・・・」
  ジェシカ「(涙が溢れる。)フランチェスコ・・・。確りして・・・。」
  フランチェスコ「(溜め息を吐いて。)・・・おまえの・・・お陰で・・・
           蛮人にならずに・・・済んだ・・・(ジェシカを見詰め
           る。)」
  ジェシカ「フランチェスコ・・・(泣く。)」
  フランチェスコ「(手を差し伸べ、ジェシカの頬に触れる。)泣くな
           ・・・おまえには・・・笑顔が一番・・・相応しい・・・。
           また・・・会お・・・う・・・(亡くなる。)」
  ジェシカ「・・・フランチェスコ・・・」
  ルグラン「・・・やった・・・やった!!(大声で笑う。)遂にやった
        ぞ!!私だけの力で、遂にあいつを倒した!!遂に
        勝ったんだ!!(笑う。)」
  ジェシカ「・・・(フランチェスコの頬を、そっと撫でる。)・・・勝った
        ・・・?誰が・・・勝ったと認めるの・・・?誰が勝ったと
        認めるの!?(ルグランに向かって叫ぶ。)」

         ルグラン、ジェシカの叫び声に、呆然と
         ジェシカを見詰める。

  ジェシカ「たとえ勝ったと認められても・・・勝ったから如何だと
        言うの!?そのことが、どれ程大切なことなの・・・!?
        (涙を堪えるように。)何故・・・人は剣を持つの・・・?
        決して・・・剣は・・・幸せを運んではこない・・・。なのに
        ・・・何故・・・人々は・・・お互いを・・・傷付ける為に・・・
        こんなもの・・・(フランチェスコの落とした剣を手に取り、
        鞘から抜き、ルグランの方へ指し示す。)この剣が運ん
        できたものは一体何!?あなたにとっての幸せ!?
        優越感!?満足感!?充実感!?(剣を置く。)何故
        ・・・フランチェスコは・・・そんなつまらないことの為に
        ・・・命を落とさなければならなかったのよ・・・。あなた
        は二度とフランチェスコに勝てない!!フランチェスコ
        ・・・(再びそっとフランチェスコの頬を撫でる。)・・・剣
        を抜かなかったあなたは・・・勇気ある・・・本当の騎士
        だったわ・・・。最後まで・・・。(フランチェスコに口付け
        る。)」
  ヴィクトール「フランチェスコー!!(叫ぶ。)」

         フランチェスコの名を叫ぶヴィクトール。
         呆然と佇むルグラン伯。
         愛しそうにフランチェスコを何時までも
         その胸に抱き締めるジェシカ。
         音楽、盛り上がって。      ※







         ――――― 幕 ―――――                 






   




     ※ この後に、某歌劇団的にスモーク流れる中、
       フランチェスコ、セリ上がりジェシカとデュエットダンス
       ・・・などと言った場面を、付け足そうと思っていました
       が・・・^^;敢えて、ここで終わりにしたいと思います。
       続きは好きにご想像してお楽しみ下さい♥





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     (どら余談^^;)

     さて、それではここで次回掲載作品の紹介をしておきたい
     と思います(^^)v
     次回は、とっても珍しいのですが、まだ舞台脚本を書かせ
     てもらう以前に、趣味的に書いていた作品から1作・・・♥
     題材的にはバンパイア物・・・と言うことで、何度かご紹介
     した作品の中にもありましたが、今回の作品は、“より”
     らしい作品で、尤も某歌劇団に影響を受けた、よって、
     登場人物も矢鱈と多い・・・、でも“私ワールド”満杯の・・・
     一番シンプルで分かりやすいお話しではないかな・・・と、
     思います^^;
     それでは、次回“アンソニー”お楽しみに・・・♥

     読み直してみて・・・登場人物の多さに、誰が誰だか分か
     らなくなることが度々ありました・・・(^_^;)











     
        http://www.geocities.jp/littlepine2005/ 

       http://blogs.yahoo.co.jp/dorapontaaponta
 
         http://blog.goo.ne.jp/axizgoo7227