烏鷺鳩(うろく)

切手・鉱物・文学。好きな事楽しい事についてのブログ

日本初の恐竜切手:「ふるさと切手 福井」1999年

2018-04-29 | 切手


肉食恐竜ドロマエオサウルスの群れが、一頭のイグアノドンをまさに襲おうとしている。
奥にはイグアノドンの群れが川を挟んだ左側にたたずんでいる。ドロマエオサウルス達は群れから離れた1頭のイグアノドンを見逃していない。数匹で襲おうとしている。
イグアノドンは果たしてドロマエオサウルスの餌食となってしまうのか?


緊迫した一瞬を捕らえた、躍動感溢れる図案である。
「世界初の恐竜切手」である「ルーフェンゴサウルス」を含む古生物切手「特22」が中国で発行されたのが1958年。遅れること41年にして日本でも恐竜切手が発行された。1999年という年は日本での恐竜発掘ブームが高まり始めた時期である。「ふるさと切手 福井」は恐竜王国・福井で発見された恐竜たちを図案化している。


日本郵政のHPには次のような説明が載っている。

イグアノドンは、全身9m、高さ5m、体重5tにも及ぶ草食恐竜であったとされています。肉食恐竜からの攻撃を防ぐため、群れで生活していたと考えられています。名前は、「イグアナに似た歯」の意味にちなんで命名されたものです。
ドロマエオサウルスは、長い尾、後足の2番目の指の大きな爪、長い腕と鋭い爪のある3本の指をもった小型の肉食恐竜であったとされています。走るときや獲物を襲うときには、長い尾でバランスをとって敏捷に動き、集団でも狩りをしていたと考えられています。名前は、「走るトカゲ」の意味にちなんで命名されたものです。
福井・石川・富山の北陸三県と岐阜県にかけて分布する手取層群は、日本の恐竜化石が最も多く産出されています。その中でも勝山市を中心として福井県は、国内で発見された恐竜化石の約8割を産出しています。
また、平成12(2000)年には、「恐竜エキスポふくい2000」が開催されるとともに、全国初となる恐竜博物館の開設も予定されています。


ここで、「なぜ有名なフクイサウルスとかフクイラプトルの切手にしなかったのか?」という疑問をお持ちになった恐竜ファンがいらっしゃるであろう。
切手には「イグアノドン」と「ドロマエオサウルス」と記されている。
しかしながら、実はこの切手、その「フクイサウルス」と「フクイラプトル」を図案化している可能性が非常に高いのではないかと思われるのだ。


どういうことかというと、まず、図案の「イグアノドン」に注目してみよう。
福井県によって、2017年までに4回の恐竜化石発掘調査が行われている。「第一次恐竜化石発掘調査」が行われたのが1989年~1993年である。この時の調査でイグアノドン類を初めとする300もの恐竜化石や足跡化石が発見された。
中国から専門家を招いて1年にわたるクリーニングや種の同定作業の結果、1995年、イグアノドンの全身骨格が復元された。
頭部の上顎骨の構造に特有生が見られたため、このイグアノドン類の化石は2003年に、新種の「フクイサウルス・テトリエンシス」という学名が記載されることとなる。
つまり、化石が発見されたのは1989年~1993年、学名「フクイサウルス・テトリエンシス」が記載されたのが2003年。切手が発行されたのは1999年であるから、イグアノドン類の化石を「フクイサウルス」と呼べるようになったのは、切手の発行の後なのである。
ちなみに福井県ではもう1種イグアノドン類・「コシサウルス・カツヤマ」が発見されているが、これは2008年発見なので図案のイグアノドンの候補からは除外できるだろう。
というわけで、切手のイグアノドンは正式には「フクイサウルス」である可能性があるのだ。


続いて「ドロマエオサウルス」である。こちらはやや複雑である。
その辺の説明が『世界に誇る!恐竜王国日本』に詳しく載っている。

1988年に初めて発見された化石はカギ爪部分だ。最初に見つかった露出部分は爪の一部だけだったが、クリーニングしていくうちに、長さ10cmもの大きさがあることが判明したのである。当初はこの湾曲した爪を、後肢のものと誤認したため、ヴェロキラプトルやデイノニクスなど、ドロマエオサウルス科の小型肉食恐竜の仲間と考えられ、地名にちなんで、「キタダニリュウ」の愛称がつけられた。その後、数々の部位の化石標本が揃うにつれ、カギ爪は前肢のものであることが分かり、上顎の歯が原始的なティラノサウルス類に似ていることや、大腿骨にジュラ紀型の食肉竜下目の特徴が見られることが判明。前期白亜紀とジュラ紀の獣脚類の特徴を併せ持つ、アロサウルス上科に属する新種と修正されたのだ。(p.48)

「フクイラプトル」という学名記載がなされたのが2000年である。こちらも学名記載は1999年の切手発行の後。さらにその後、実はドロマエオサウルスではないという説が出てきたということになる。

※ドロマエオサウルスはヴェロキラプトルやデイノニクスなどが属する「マニラプトラ類」というグループに属しているが、これらのグループとアロサウルスの含まれる「カルノサウリア類」というグループは全く別のグループである。
「マニラプトラ類」から「カルノサウリア類」への変更というのはかなり大きな変更となるのだ(『恐竜学入門』p.196)


整理してみると、イグアノドンとドロマエオサウルスともに、
・化石の発見
   ↓
・切手の発行
   ↓
・正式な学名の記載(新種としての認定)
という流れになっている。正式な学名を記載される前だから、「イグアノドン」類と「ドロマエオサウルス」科という、いわばざっくりした名前しか切手に記載できなかったのだろうと推測できる。


結果的に「ふるさと切手 福井」は「フクイサウルス」と「フクイラプトル」の切手であると言うことができるのである。
しかしそうなると、「ドロマエオサウルス」と図案に記載しているのは、実は「間違えだった」ということになってしまうのだが・・・。 ちなみに、日本郵政のHPにはこの切手の説明として、「ドロマエオサウルスは、長い尾、後足の2番目の指の大きな爪」と、カギ爪が前肢のものだと確認される前の記述が載っている。


恐竜切手のこのような「間違い」というかその後の研究による「実は○○でした」的な話は決して珍しいものではない。有名な「ブロントサウルス」で「実はアパトサウルスでした」というのはごろごろ転がっている話なので、福井の切手に関しても、なにも目くじらを立てるような事案では決してないのである。


恐竜研究は日進月歩である。
かつては「日本には恐竜はいなかった」、とする説が当たり前のように一般的だった。
それが全国から多種多様な恐竜の化石が次々に発見されている。こんなわくわくする発見が日本でなされるとは、少し前まで想像のつかなかったことなのだ。


この「ふるさと切手 福井」もそんな恐竜研究史の一端を垣間見られるという意味では、「日本最初の恐竜切手」という意味以上の物語が含まれているのである。



【参考サイト・文献】
・日本郵政 
http://www.post.japanpost.jp/kitte_hagaki/stamp/furusato/1999/0222/index.html 
・福井県立恐竜博物館 https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/dino/excavation/ 
・『恐竜学入門』 Fastovsky, Weishampel 著、真鍋真 監訳、藤原慎一・松本涼子 訳 (東京化学同人、2015年1月30日)
・『世界に誇る!恐竜王国日本』(宝島社 2017年2月28日)

日本初の古生物切手:「国立科学博物館100年」 1977年

2018-04-26 | 切手


「フタバスズキリュウの骨格復元図と星座に国立科学博物館」(「さくら日本切手カタログ」p.50)。
フタバスズキリュウで図案が斜めに区切られて、青とピンクで塗り分けられている。星座というのは、「カシオペア座」で、博物館のすぐ上の星は「北極星」だそうである(「塩屋天体観測所」)。デザインがとても素晴らしいと思う。ロマンを感じる。「国立科学博物館」を訪れた時に感じた、わくわく感、憧れやロマンといった印象が全てこの切手デザインに集約され表現されている、と言っても過言ではない。


ところでお気づきと思うが、タイトルは「日本初の古生物切手」としてある。わざわざ「古生物」としている。
フタバスズキリュウは日本で発見された「首長竜」という生物である。「竜」と付くけど、これ、恐竜ではない。
この切手を「日本初の恐竜切手」などと書いてあるサイトが散見されるが、私は声を大にして言いたい。

「日本初の恐竜切手」はこれ



じゃないからね!! 日本初の「古生物切手」だからね、これ!! フタバスズキリュウは首長竜で、恐竜じゃないからね!!

「日本初の恐竜切手」はこっち



だからね!! 「ふるさと切手 福井 1999年」だからね!! くれぐれも宜しくお願いしたい!!


幾分すっきりした。


そういうわけで、首長竜というのは何かというと、「絶滅した水生爬虫類」なのである。恐竜とは別の種なのだ。
ネッシーのモデルで有名な、あのプレシオサウルスもこの首長竜のグループに入る。よって恐竜ではない。「サウルス」と付くけど恐竜ではない。「サウルス」というのは「トカゲ」と言う意味である。
他にも、イクチオサウルスという、イルカをやさぐれた感じにした生き物がいた。「魚竜」というグループに属する。これも「水生爬虫類」であり、「サウルス」といえど恐竜ではない。
ちなみに「プテラノドン」という有名な古生物がいるが、これも「空飛ぶ爬虫類」である。ただ、こうした絶滅した爬虫類も含めて便宜上「恐竜」と呼んだりしている場合もあるから、さらにややこしい。
無難に「古生物」とした方が良いのかもしれない。


かくいう私も、恐竜でないものが含まれている切手シリーズを「恐竜切手」と呼んでいる。恐竜がほぼメインと考えられる場合には、やむなく「恐竜切手」と呼んでしまっているのだ。
私の信条として、三分の一以上が恐竜でないシリーズの場合は「古生物切手」と呼んでいる。一応、恐竜とそれ以外の生物達それぞれに対して気を遣っているのだ。彼らだって、それぞれ違った特徴があるのに「恐竜」という呼び名で十把一絡げにされたら、気分も良くないと思うのだ。メジャーなものに吸収合併されそうになるマイナーな存在達にも敬意を表したいのである。


フタバスズキリュウは全長7m。1968年、福島県「いわき市の大久川河岸に露出していた双葉層群入間沢部層から、当時高校生だった鈴木直氏が発見した大型の水生爬虫類」(『世界に誇る!恐竜王国日本』p.82)である。白亜紀後期に生息していた。ティラノサウルスやトリケラトプスとほぼ同時代の生物だ。
なんと、学名に正式に記載されたのは発見から38年後の2006年なのだそうだ。新属新種として「フタバサウルス・スズキイ」と記載された。

エラスモサウルス科のフタバスズキリュウは、他の種類と比べると目と鼻の間が離れていることや、頸骨が長いなどの特徴を持っている。共産化石として、大量のサメの歯が発見され、一部は鰭脚の付け根に刺さっていたことから、サメによる攻撃、あるいは死骸が捕食されたものと考えられている(p.82)。


首が胴体よりも長い、という個性的なフォルムで海の中を泳ぎ回っていた。主に魚やアンモナイト、オウムガイなどを食していたとされている。


切手の図案のフタバスズキリュウは優雅に空を舞っているかのようにも見える。どんな風に海の中を泳いでいたのか、想像がふくらむ。



【参考サイト・文献】
・「塩屋天体観測所」 http://stelo.sakura.ne.jp/stamp/museum.htm 
・『さくら日本切手カタログ2019』(公益財団法人 日本郵趣協会 2018年4月20日)
・『世界に誇る!恐竜王国日本』(宝島社 2017年2月28日)

トルコのクリソプレーズ(Chrysoprase)

2018-04-24 | 鉱物


宇宙に浮かぶ星雲の周りに、無数の若い星々が煌めいている。


水晶をまとった「クリソプレーズ」である。ハッブル宇宙望遠鏡が遠く遠くの星雲を撮影した写真を思わせる。グリーンとオレンジの雲がぐるぐると混ざり合い、分離し、新しい光が産み出されているかのようだ。


埼玉ミネラルマルシェにて購入したこの石は、トルコからやってきた。





裏側はこんな感じである。よく見ると、緑色の部分も、濃い緑と薄い緑が混在している。


クリソプレーズは青リンゴ色で半透明の玉随である。色はニッケルに起因する。クリソプレーズの中には、太陽光にさらされたとき色が薄くなるものがある。緑の色が薄いものを研磨した場合、高品質のヒスイと見間違えられやすい。ギリシャ人にもローマ人にも用いられた。・・・
この鉱物名は、ギリシャ語で“金色の西洋ニラネギ”を意味する“chrysos”と“prase”という言葉に由来する。もともとは色調が薄く黄色みがかったクリソプレーズに対して用いられた名称だったと思われる。(p.227)



この鉱物は「珪酸塩鉱物」というグループに属していて、このグループの代表的な鉱物は水晶である。他にも、玉随(カルセドニー)、カーネリアン、アゲート、ジャスパーなど、色とりどりの美しい鉱物がある。これらの化学組成は”SiO2”で共通していて、ニッケルやクロムといった鉱物がわずかに含まれる事で色とりどり、多種多様な鉱物を産み出している。




拡大してみてみると、水晶の透明な層が、クリソプレーズを包んでいるのが見える。透明な水晶を通して、緑色が見える。とても細かい水晶が表面を覆って、その無数の結晶の小さなポイントが光を反射している。



抹茶餡と茶色い餡が混ざり合った練り切りを、寒天でくるんで細かな砂糖をまとわせたかのようにも見える。
美しい好物がまたもや美味しそうに見えてしまってしかたがない。



【引用文献】
・『岩石と宝石の大図鑑 岩石・鉱物・化石の決定版ガイドブック』 青木正博 翻訳 (誠文堂新光社 2007年4月10日)

スタンプショウ2018 & 埼玉ミネラルマルシェ(3)

2018-04-22 | 鉱物
電車に揺られて大宮へ。いよいよ鉱物の祭典である。
その前に、駅の西口を出たところで「石のベンチ」を発見。座って上野で買ったかわいいパンを食す。そのパンがこちら。



その名も「おにぎりパン」である。中にはツナマヨがぎっしり入っていた。おいしい。しょっぱいものを食べて元気復活である。ちなみに黒いところは恐らく炭か何かの練り込まれた生地であった。




エレベーターを降りてすぐ、会場からの熱気と興奮がだだ漏れである。こちらはとても賑やかだ。年齢層が若干低めで女性が多いせいかもしれない。もちろん若い男性も年配のおじ様も、色んな方々が石を探しにやってきている。
何というか、京都の葵祭を見た後に、岸和田のだんじりを見物に来たかのようなギャップである。どちらも見に行った事はないのだが。


今日のお目当てだった、トルコバザールさんに向かう。こちらの店主さんは、なんと、あの有名鉱物雑誌『ミネラ(No.51)』に寄稿されている。「特集②」の「シルクロードの国TURKIYEのトルコ石とアゲート」(p.34-37)という記事である。
こちらの記事では、主にトルコ産のアゲートを紹介している。ご存じと思うが、トルコでトルコ石は採れない。昔、トルコ経由でヨーロッパに紹介されたため、「トルコ石」と呼ばれるようになったのである。
面白かったのは、アゲートやカルセドニーなど、色によってどこが産地なのか詳しく書いていらっしゃるところだ。またトルコ国内の石事情も織り交ぜてある。なにより、写真のアゲート(瑪瑙・めのう)が美しい。緑とオレンジの層に半透明のカルセドニーが入り込んでいる。
私はアゲートが大好きなので、この号の『ミネラ』はとっても面白かった。
さてさて、何が目当てだったかというと、実はアゲートではない。こちらである。



左の緑色っぽい石である。これは何かというと、細かい水晶の結晶を身にまとった「クリソプレーズ」なのだ!表面がキラキラときらめいている。前回の浅草橋ミネラルマルシェで迷ったあげく、買いそびれ、その後思いが募った石である。まだ売られていたので良かった。こちらはまたの機会にじっくりご覧頂こう。
右側の白っぽい石は「デンドリティック・オパール」の原石だ。白い地に黒い模様が、まるで墨絵のように樹木や景色に見えてくる。カボションや磨き石の形で研磨されているのをよく目にするが、こういった原石の状態は初めて見た。面白い石が2つも見つかった。


ところで、この日、ほんとにツイていたのだ。石の方も大収穫だったのである。量ではない。質の話である。面白い石がこの後も続々と見つかったのである。


続いて、ふらふらと会場を周り始める。もうごった返しである。会場が狭くてクーラーが全然効いていないようだ。大汗かき子になりながら、順番にブースを見ていく。
ふと、日本産の鉱物を集めた店の前で、奇妙な形の水晶が目に入った。



左側の小さな水晶、「キャンドル・クォーツ」と呼ばれているそうである。大きめのポイントと呼ばれる結晶に、小さなポイントが肩を寄せ合うようにしてくっついているのだ。かわいい。お値段もかわいかった。これも結晶のでき方についてなど色々と興味がわいてくる標本である。
右側の宇宙ステーションのような石は「アラゴナイト(霰石)」である。特徴的な六角柱の結晶が大小寄り集まっている。「スタートレック」なんかに出てきてもおかしくないような形をしている。こちらはまた別のお店で発見した。


「ミネラルマルシェ」は「ミネラルショー」よりも規模は小さい。小さいながらもすごい熱気と活気である。押し合いへし合いの大騒ぎなのである。
展示即売されているのも、標本だけではない。きれいに磨き上げられた宝石の「ルース(裸石)」や、ブレスレットやネックレスに使うビーズ、ハートや卵の形に磨かれた石、様々な石で作られたアクセサリー・・・。そのままの石や加工された石が所狭しと並んでいるのである。


「鉱物女子」達がきれいでかわいい石を物色しているのを横目に、掘り出したばっかりのちょっと小汚くも見える石なんかを物色しているのが何を隠そう、この私である。
この日の埼玉ミネラルマルシェにおける漁獲をご覧頂こうか。



色が、なんというか地味に見える。しかし、である。ブログ記事一回分では語りきれない魅力をそれぞれの石が持っているのだ。


あ、ちなみに私は戦利品という言葉があまり好きではない。辞書を引いて頂ければ分かるが、なにも誰かと戦いに行くわけではないのである。同じ趣味を持つもの同士、好きなものに対面する喜びという暗黙の連帯感を味わいに、こうしたイベントに出かけるのであるから。だからあえて、「漁獲」という言葉を使わせて頂く。まだこっちの方が平和的であるから。魚にとっては穏やかではないと思うが、英語の”haul”の訳語である。
私はただの仏頂面した平和主義者なだけである。


閑話休題。続いて汗をふきふき、なじみの石屋さん・ CORO CORO STONEさんのブースへと向かう。店長のルンルンさん(ブログのHNである)は実に面白くて優しい人なのだ。見た目は厳つい、心の優しい人である。いつも石について色んなお話をさせてもらって長居をしてしまう。時間を忘れて石話に盛り上がるのである。
そして面白い石が必ず見つかる。



左側の標本、白い母岩(しまった!何の鉱物かお聞きするのを忘れた!)に赤いスピネルが見え隠れ。かわいい!しかもこれ、ブラックライトを当てると蛍光するのだ!!
いずれ「蛍光鉱物特集」でも組んでご紹介したいと思う。

そして右側が極めつけに変わっている。別のお店で、作業着を着たおっちゃんが売っていた。「ぬけがら水晶」と呼ばれる石である。専門的には「仮像」もしくは「仮晶」と呼ばれている。どんな鉱物かは今後をこうご期待。すごく興味深い標本なのだ。




最後に目にとまったのは「オーシャンジャスパー」。マダガスカルで採れる有名な鉱物である。濃い緑の地に白い小さな点々が浮かび上がる。夜桜を眺めているような感じである。割れ目にキラキラとドゥルージーが覗く。
この石も色々面白いいわれがあるので、是非ご紹介したいと思っている。


長いようで短かった一日であった。短いようで長かったのかもしれない。
切手の祝祭と鉱物の祝祭、同時に味わうというこの奇跡の一日は、お好み焼きとビールで締め括られることとなったのである。乾杯!

スタンプショウ2018 & 埼玉ミネラルマルシェ (2)

2018-04-21 | 切手


ディーラーズ・ブースのある5階は結構独特な空気が流れている。皆さん、お目当ての郵趣品のつまったファイルや箱の中を黙々とチェックなさっている。
売られているのは切手ばかりではない。使用済みの封筒、葉書、風景印などもたくさん見受けられた。FDCという、初日印(切手の発行されたその日に押される消印)をご覧になっている方々もいらっしゃる。


ロータスフィラテリックセンターさんのブースが出ているのでご挨拶に。
「こんにちは」とお声をかけると、
「ああ、プルーストと恐竜の」
と、覚えて下さっていた。
「恐竜ありますか?」
と尋ねると、
「うちでは絶滅しちゃったんじゃないかな」
とのお答え(笑)。
この日は主に手彫りの切手(戦前のすごく古くて貴重な切手)を出していらっしゃっていた。玄人向けの出品である。私は隅っこの方の席で、外国切手のぎっしり入った箱を物色する。
様々な切手や、海外からの郵便物と思われる使用済み封筒、FDCなどが何百という数つまっている。これは探し出すのに時間がかかる。
でもそれが楽しいのである。「宝探しみたいだな」とうきうきしながら漁ってみる。お隣に座っていた紳士は、読み込んでぼろぼろになったカタログを片手に、なにやら玄人向けの品をご覧になっていた。そういうの、かっこいいなあ、と憧れてしまうのである。いつか私も、玄人っぽい趣味に移行する日があるのだろうか。いや、当分恐竜切手かもしれないな。でも、そういう玄人っぽい世界を機会があったら覗いてみよう。


と、未使用の小型シート発見!
衝撃!!植物食恐竜が襲われている図・・・。こちらも、ご紹介するのは後でのお楽しみにしよう。


この後5階の会場をぐるっと一周り。アメリカの作家切手を発見したり、格安の沖縄切手を発見したりと、もはや一人お祭り騒ぎである。

切手で満腹になったところで、再び4階の会場へ向かおう。
スタンプラリーをしていたので、思わずコンプリートしてみる。会場内をぐるっと見学すれば自然と8つのスタンプを集める事ができるという仕組みだ。
今年のキャラクターは「うちのタマ知りませんか?」。懐かしい。子どもの頃文房具などの関連グッズを集めた覚えがある。タマ&フレンズ8匹を捕獲。コンプリートの景品は、オリジナルシールである。



どこに貼ろうかなあ?などと思ったのもつかの間、これもストックブック行きになる。私の場合、死蔵が基本であるから。なんでもきれいな状態でとっておきたいのである。ちなみに左側のミルキーは福引きの5等を当てて頂いたものだ。5等にも縁があるのか?


切手の展示作品を拝見した。例えば「航空機の歴史」を、切手の図案を並べて説明したり、「稲作の工程」を切手で説明したり、切手とその図案を描いた葉書などと、その図案に関係のある場所などの記念品を一緒に飾ったりするのである。いわば、「切手を用いた芸術表現」である。どれも興味深い作品ばかりだった。私は特に「フクロウ」をテーマにした作品がいいなと思った。
いつかやってみたいなあ、と思っている。


地味に楽しいワークショップが開催されている。しかも、公式ガイドブックを購入すると、無料で体験できるワークショップが2つも用意されている。
まずは気になっていた「缶バッチ作り」を体験してみる。好きな切手を1~2枚選ぶと、缶バッチの機械にガッチャンと挟んでくれてできあがりである。なんと100円で体験できちゃう。静かに楽しい。



一番最初にぱっと目にとまったのが「蟹工船」切手だった。ちょっと前に作品を読んで大変興味深かったので、何かの縁だと思い、これにした。文学と切手の夢のコラボである。バッチになると結構存在感がある。デザイン的にもなかなか素敵にできたのではないだろうか。わーい、である。さっそくバッグにつけてみた。


無料体験の一つ目、帰宅してからが意外と盛り上がった「使用済み切手つかみ取り」コーナーである。ガイドブックを持っていると、100グラムまでごっそり頂けるというかなりお得感のあるイベントである。楽しい。ごっそり100グラムはこのぐらい。



結構な枚数である。あとで、ぬるま湯につけて延々と剥がす、というのをやってみよう。1日では絶対終わりそうもない量である。帰宅してから見てみると、結構古いものから最近のものまでバラエティー豊富であった。


「ピンセット体験」というのも無料でできた。切手専用の、先が平たくなっているピンセットを使って、好きな切手10枚(使用済み)を黒い台紙のシートの中に入れていく。「ああ、こんな切手もあるのだね」と、意外と盛り上がる。私は「変形切手」を中心に集めてみた。こんな感じである。



実は日本の切手はあまり詳しくないので、過去にこんな面白い形の切手が出ていたということを、全然知らなかったのだ。新しい発見である。後で「さくら日本切手カタログ」で発行年などを調べつつ、2倍楽しむ予定である。


公式記念グッズのうち、「タマ&フレンズ」のフレーム切手を購入し、開場を後にした。



こうして私は「スタンプショウ2018」を「味わい尽く」したであります!(byケロロ軍曹)


せっかく浅草に来たのだから、「神谷バー」で「電気ブラン」と「煮込み」でも頼んでお昼にしよう、と前日まで思っていたのだが、摩訶不思議な現象が起きた。お腹が空かないのである。この食いしん坊の私がである。
「切手で満腹に」なる、と先に述べたが、正にそれが事実となってしまった。気付けば4時間近くが経過している。実際の感覚ではその半分しか経っていない。


埼玉ミネラルマルシェは14時開場である。今日は祭のはしごであるし、別に急ぐ理由はないはずだ。煮込みだって頂けたはずなのだが。


上野駅に着いたところで、一休みしてコーヒーを頂く。この日は初夏の陽気だったため、「アイスカラメルコーヒー」が体に染み渡る。ちょっと苦めの甘さが歩き回った疲れを癒してくれたのか、心身共にすっきりしたようである。
と、小腹が空いてきた。「神谷バー」に寄らなかった事を後悔しつつ、美味しそうなパンを発見したので購入。


取り敢えずは大宮駅へと向かう。目指すは大宮ソニックシティである。鉱物の祝祭が待っている。というわけで、次回へ続く。