烏鷺鳩(うろく)

切手・鉱物・文学。好きな事楽しい事についてのブログ

日本初の古生物切手:「国立科学博物館100年」 1977年

2018-04-26 | 切手


「フタバスズキリュウの骨格復元図と星座に国立科学博物館」(「さくら日本切手カタログ」p.50)。
フタバスズキリュウで図案が斜めに区切られて、青とピンクで塗り分けられている。星座というのは、「カシオペア座」で、博物館のすぐ上の星は「北極星」だそうである(「塩屋天体観測所」)。デザインがとても素晴らしいと思う。ロマンを感じる。「国立科学博物館」を訪れた時に感じた、わくわく感、憧れやロマンといった印象が全てこの切手デザインに集約され表現されている、と言っても過言ではない。


ところでお気づきと思うが、タイトルは「日本初の古生物切手」としてある。わざわざ「古生物」としている。
フタバスズキリュウは日本で発見された「首長竜」という生物である。「竜」と付くけど、これ、恐竜ではない。
この切手を「日本初の恐竜切手」などと書いてあるサイトが散見されるが、私は声を大にして言いたい。

「日本初の恐竜切手」はこれ



じゃないからね!! 日本初の「古生物切手」だからね、これ!! フタバスズキリュウは首長竜で、恐竜じゃないからね!!

「日本初の恐竜切手」はこっち



だからね!! 「ふるさと切手 福井 1999年」だからね!! くれぐれも宜しくお願いしたい!!


幾分すっきりした。


そういうわけで、首長竜というのは何かというと、「絶滅した水生爬虫類」なのである。恐竜とは別の種なのだ。
ネッシーのモデルで有名な、あのプレシオサウルスもこの首長竜のグループに入る。よって恐竜ではない。「サウルス」と付くけど恐竜ではない。「サウルス」というのは「トカゲ」と言う意味である。
他にも、イクチオサウルスという、イルカをやさぐれた感じにした生き物がいた。「魚竜」というグループに属する。これも「水生爬虫類」であり、「サウルス」といえど恐竜ではない。
ちなみに「プテラノドン」という有名な古生物がいるが、これも「空飛ぶ爬虫類」である。ただ、こうした絶滅した爬虫類も含めて便宜上「恐竜」と呼んだりしている場合もあるから、さらにややこしい。
無難に「古生物」とした方が良いのかもしれない。


かくいう私も、恐竜でないものが含まれている切手シリーズを「恐竜切手」と呼んでいる。恐竜がほぼメインと考えられる場合には、やむなく「恐竜切手」と呼んでしまっているのだ。
私の信条として、三分の一以上が恐竜でないシリーズの場合は「古生物切手」と呼んでいる。一応、恐竜とそれ以外の生物達それぞれに対して気を遣っているのだ。彼らだって、それぞれ違った特徴があるのに「恐竜」という呼び名で十把一絡げにされたら、気分も良くないと思うのだ。メジャーなものに吸収合併されそうになるマイナーな存在達にも敬意を表したいのである。


フタバスズキリュウは全長7m。1968年、福島県「いわき市の大久川河岸に露出していた双葉層群入間沢部層から、当時高校生だった鈴木直氏が発見した大型の水生爬虫類」(『世界に誇る!恐竜王国日本』p.82)である。白亜紀後期に生息していた。ティラノサウルスやトリケラトプスとほぼ同時代の生物だ。
なんと、学名に正式に記載されたのは発見から38年後の2006年なのだそうだ。新属新種として「フタバサウルス・スズキイ」と記載された。

エラスモサウルス科のフタバスズキリュウは、他の種類と比べると目と鼻の間が離れていることや、頸骨が長いなどの特徴を持っている。共産化石として、大量のサメの歯が発見され、一部は鰭脚の付け根に刺さっていたことから、サメによる攻撃、あるいは死骸が捕食されたものと考えられている(p.82)。


首が胴体よりも長い、という個性的なフォルムで海の中を泳ぎ回っていた。主に魚やアンモナイト、オウムガイなどを食していたとされている。


切手の図案のフタバスズキリュウは優雅に空を舞っているかのようにも見える。どんな風に海の中を泳いでいたのか、想像がふくらむ。



【参考サイト・文献】
・「塩屋天体観測所」 http://stelo.sakura.ne.jp/stamp/museum.htm 
・『さくら日本切手カタログ2019』(公益財団法人 日本郵趣協会 2018年4月20日)
・『世界に誇る!恐竜王国日本』(宝島社 2017年2月28日)