烏鷺鳩(うろく)

切手・鉱物・文学。好きな事楽しい事についてのブログ

神田古本祭り(神保町)と梟書茶房(池袋)〈2〉

2018-11-30 | 旅行
神田古本祭りを堪能した私と親友・麦であったが、この日のメイン・イベントに備え、後ろ髪を引かれる思いで午後3時頃神保町を後にする。目指すは池袋!!

さて、何のイベントかというと、とある小説家のトークショー。
ヒント①:神保町にはこの方の有名な小説シリーズに登場する、とある探偵が事務所を構えている。
ヒント②:池袋には、その小説シリーズに登場するとある刑事行きつけの酒場「猫目洞」がある。

ここでピント来た方、なかなかマニアックなファンでいらっしゃる。


正解は、あの、・・・・・


京極夏彦さん!!!!!


麦は京極さんの20年来のファンである。筋金入りである。参加した京極さんのイベントは数知れず。一方私は、麦が熱心に京極さんと京極さんの作品について語るのを聞いているうち、最近ファンになったのである。にわかである。


会場はちょっと不思議なカフェ&書店、「梟書茶房」である。
心躍らせながら地下鉄に揺られ、池袋へ。


場所はEsolaの4階。エスカレーターを降りると、そこには本好きにとっての桃源郷が広がる。
ゆったりとコーヒーを飲みながら読書が楽しめる。大きな革張りの茶色いソファーが並んでいたり、図書館風の机が並んでいたり。その時の気分によってくつろぐ場所を選べるようになっている。
と、ここでもやっぱり写真を忘れた・・・。我々、大分興奮していたのだ。

まずは楽しみだった書籍コーナーへ。
ここは販売している書籍はなんと全て袋とじ。
ここでちょっと怪しい妄想をした方もいらっしゃると思うが、無理もない。
「袋とじ本」である。
つまりは、どんな本が入っているのか分からないのである。表に書いてあるのは、タイトルの代わりの数字とその本の紹介文。そこに書いてある文章で、読みたいか、読みたくないかを直感的に決めるという仕組みである。
いつも決まりきった読書傾向になりがちな私にとっては、これ、結構画期的だなと思った。

というわけで、麦と二人、書籍コーナーに置いてあったカタログも参考に、「これだ!」と思う一冊を探す。

「これって、○○じゃない?」とタイトルを想像したり、「この紹介文からするとこれがピンと来る」などと盛り上がりながら、お互いの気になる本を探していく。あっという間に小一時間が経過していた。

というわけで、私が選んだのはこの2冊!!



どうも1冊には絞れなかったのである。
1冊目の「666」の紹介文は、「これは、ある作家……、いや、友に対する、鎮魂歌である」の一行。どういうわけだか、妙に気になった。
2冊目の「66」はどうやら詩集であるということは何となく分かった。詩は普段あまり読まないのでこれは良い機会である、と両方とも購入。


どんな本が入っているのかわくわくしながらカフェへ。
夜に備えてしっかり腹ごしらえである。

注文した物が出てくる間に、お楽しみの袋とじ本を開けてみる。



右側と中央の二冊が入っていた!!
『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』については、普段の私だったら絶対選ばない一冊だ。なんとなく、思想的なところとか、食わず嫌いで読まなかった作家である。これを機会に読んでみようかな、と思わせる内容の一冊であった。
『ポー詩集』は、実は前から「欲しいな」と思っていた一冊なので、これは奇跡的な選択である。昔、大学時代に授業で読んだ「大鴉」を、もう一度読んでみたくなっていたのだ。しかもこれ、原文も一緒に載っているのが嬉しい!!
どちらも、私にとっては「当たり」であった。自分では絶対読まなそうな本と、読みたかった本の2冊だったのだ。

お互いの本でわいわい盛り上がっていると、食事がやってきた。



まずは、果物たっぷりのフルーツ・ティー。適度な甘さが歩き回った疲れを癒してくれる。
食事の方であるが、これまたさんざん迷った挙げ句、こちらを選ぶ。



フライパンに入ったパンケーキである!!童話の世界に登場しそうなメルヘン情緒たっぷりの一品である。しかも、期間限定の「モンブラン・パンケーキ」!!今日は贅沢しちゃうぞ。
縁の部分がかりっとしていて、ふっくらしながら心地よい弾力のある美味しいパンケーキであった。
ちなみに麦はキノコたっぷりのスパゲッティ。こちらも美味しかったのだそうだ。


さあ、今夜のメイン・イベントの始まりである。



京極さんが「池袋」、「本」、「コーヒー」についてお話ししてくださるのだ。
京極さんが登場すると、もう雰囲気は「京極ワールド」!黒い着物の裏地は深紅。黒い足袋に黒い草履の鼻緒はこれまた深紅。かっこいい!!「百鬼夜行シリーズ」の「京極堂」こと「中禅寺秋彦」を彷彿とさせる!!我々二人は静かに大興奮。
もう、お話が楽しくて、笑いが絶えないトークショーであった。
まずはハロウィンについて。京極さんは博識でいらっしゃる。ケルト起源のこの行事について様々な角度から語ってくださった。
池袋といえば、「池袋の女」という話も面白かった。昔、「池袋の女」という怪奇現象が頻繁に起こっていた、という話からポルターガイストまで。
「コーヒー」に関しては、いつ頃からドリップ・コーヒーを飲み始めたか、とか、好みの銘柄とか。麦と私はメモをとりながら熱心に耳を傾けた。

あっという間の1時間半。夢のようなひとときであった。
そして、なんと、お土産が付いていた。



京極さんをイメージして作られたコーヒー、「京極ブレンド」!!これはトークショーで1杯ずつ配られ、とても美味しかったのだ。これを飲みながら「百鬼夜行シリーズ」を再読したら、この上ない至福であろう。
ちなみに、豆の状態でも販売していたから、麦と私は始まる前にちゃっかり購入していた。
それと、梟書茶房のカタログ。千冊くらいの本の番号と紹介文が載っているので、「次はこの番号の本を買ってみようかなあ」などと、色々妄想、じゃなかった想像と期待がふくらむのだ。


こうして、夢のような「本」の1日は過ぎていった。この日のことは忘れられない大切な思い出となった。
京極さんの世界を紹介してくれた麦には感謝してもしきれないなあ、と改めて思った次第である。

神田古本祭り(神保町)と梟書茶房(池袋)〈1〉

2018-11-04 | 旅行



澄み切った空気。空高く泳ぐいわし雲。小春日和。
読書の秋。
親友・麦に誘われて、神保町の「神田古本祭り」に出かけた!
大分久しぶりの神保町である。学生時代、論文の資料を探しにぶらついて以来だから、・・・年ぶりである。
地下鉄・神保町の駅を降りて、階段を昇り、岩波ホールの建物を抜けると、そこにはスペクタクルな光景が広がっていた!!

と、興奮のあまり、その肝心な古本のだーっと並んでいる光景を写真に取り忘れた私・・・。まあ、いつものことである。
歩道に古本がどっさり積まれた机が、延々と連なる。これは本好きには鼻血の出そうな光景なのである!!


古本祭り常連の麦に、簡単な説明を受ける。私は「超」が付くほどの方向音痴なので、地図をプリントアウトしてきた。靖国通りの南側にずらーっと古本が並んでいるのだということ、ちなみに日ざしを避けるため、ほとんどの古書店が通りの南側に並んでいるのだということなど、麦から地図を見ながら説明を受ける。
そして、いざ!古本探訪へ!!
麦とは読書傾向が異なるため、お昼の時間を決めてそれぞれ自由に本を探すことにした。


まずは三省堂のあたりから出発。
いやあ、これはきりがないということが判明する。どこの出店も本が山積みなので、いちいちタイトルをじっくり眺めていると時間が足りない!!全速力で目を縦横に動かす。
と、面白そうな本発見!!
★『郵便と切手の社会史〈ペニー・ブラック物語〉』星名定雄(法政大学出版局)
これは郵趣家として押さえておかなければならない歴史や郵便制度などのさまざまな情報が、丁寧にまとめられている。これはいきなり掘り出し物である!


続いて、前もってリサーチしておいた「大久保書店」へ入る。こちらはブースを出してはいないようだ。鉱石・古生物を中心とした古書を扱ってらっしゃるお店で、かなり気になっていたので、思い切って入る。
化石に関する古い書物や、地質調査の報告書、地学関係の研究冊子などが並んでいて、見ているだけでわくわくする!!
古生物関係のちょっと古い本は無いかなと探してみると、発見!!
★『よみがえる恐竜王朝』董枝明(小学館)
董枝名と言えば、中国古生物界の重鎮とも言える人物だったような・・・。とにかく、私でさえその名を覚えている位の重要人物である。表紙を開けてみると、なんと!!



ご本人の署名入りである!!右側には「○○先生 恵存(けいそん)」と書かれている。こういう、どなたかに署名入りで送った本というのは、かなり高額になるものだ。作者が有名であればあるほど、その値段は上がる。
この少し前に、大江健三郎さんの署名入りの本を買おうか買うまいか悩んだあげく、泣く泣く断念しただけに、この署名入りは嬉しいぞ!


さまざまなお店のブースを覗いては、店舗の方ものぞいてみるのだから、まあ忙しい。
この際、路上の出店の方に集中すればよいのだが、欲深な私は店舗の方も気になってしまうのである。



一誠堂書店にお邪魔する。雰囲気がなんとも言えず、何日も滞在したくなるような、古い洋館風の造りだ。こちらには、私が私淑して止まない井上靖先生が足繁く通ったというお店だ。「この階段、先生も上り下りしたのだ」とか、「この床も先生が歩いたのだ」とか、「この棚も先生が見上げたのだ」と、半ば変態じみた心持ちで店内をうろうろする。そのあげく、お店の雰囲気にどっぷり飲まれてぼーっとすると、何も買わずに出てきてしまった。
何やってるんだ、私!!


外に出て、ふらふらと出店にまとわりつく。ふと気がつくと、麦との待ち合わせ時間7分前である。待ち合わせ場所は、古本祭りのでっかい看板が立っている、あの交差点。
待ち合わせまでちょっとあるよね、と、意地汚い私はすぐ側の大きなブースを覗いてみる。すると、またもやお宝発見!!
★『井上靖 わが文学の軌跡』(中央公論社)
なんとなんと、井上靖先生のインタビュー集である!!これは何かの縁。迷い無く購入する。お隣の紳士は10冊ほど紐でしばってある何か揃い本をドカーンとご購入されていた。「車で来たから袋はいらないよ」と仰っているのをきいて、「うらやましいなあ」。もう既に単行本を三冊買った私は、若干、肩が痛くなってきたのである。


昼食は麦の気になっていたという、カレーのお店「マンダラ」へ。地下を降りると、行列が。待っている間に私の頭も若干クールダウンしかけてきた。というのも、図鑑を2冊購入するか、揃い本5冊を購入するかで、頭から湯気が出るほど悩んでいたのである。
やがて、我々の番が来て席に着く。カレー2種類のセットにアイスチャイをつける。
やはり、わたし若干興奮気味だったのか、ここでも写真を忘れてカレーをむさぼり食う。
チキンとレバーカレーは、すっきりしたスパイス。マトンの方は、かなりスパイシーで刺激的だった。ナンはふっくら小振りの食べやすいサイズだった。
本のことに集中していたから気づかなかったのだけれど、そうとうお腹減っていたようだ。
お腹も一杯、そして心も冷静になったところで、先程悩んでいた本はどちらも諦めることに。だって、そんなの持って移動するの、無理だろ、私。夜には本日のメイン・イベントが待っているというのに。


さて、お腹が一杯になったところで、再び別れて古本探しへ。
私は、古書センターへと向かう。本が目当てではない。「薫風花乃堂」というお店へ向かう。そして捕獲したのがこちら。



石である。ゴビアゲートと高温石英である。古本祭りにて鉱物購入。ゴビアゲートは、ゴビ砂漠で風化した瑪瑙である。これ、探していたので見つけたときは小躍りしそうになった。そして、京都でとれた高温石英。こちらはいずれ、ルーペを使って楽しむ予定だ。


さて、残り時間も少ないから、半分から西側の方へとずんずん歩く。
途中、路地に入ってみると、こんなお店も。



和綴じ本が山になっている。みなさん熱心に内容を吟味なさっているようだ。こういうの、あこがれるなあ。


途中、格安の古生物図鑑があったので、またもや悩むも、その場を去る。ほんと、欲しい物がありすぎて困るのだが、持って歩くことを考えれば断念せざるを得ないのだ。「矢口書店」さんの前を通りかかると、「ユリイカ」がずらっと並んでいる。
タイトルをくまなく確認すると、そこには!!
★『ユリイカ 特集ミラン・クンデラ』1991年2月号(青土社)
これは嬉しい!!欲しかった号を発見。こちらの号にはクンデラの初期の詩が掲載されていたり、ツヴェタン・トドロフの評論が載っていたりして、今から考えるとかなりゴージャスな号なのである。


というわけで、「神田古本祭り2018」の漁獲をご覧頂こう。



★『郵便と切手の社会史〈ペニー・ブラック物語〉』星名定雄(法政大学出版局)
★『よみがえる恐竜王朝』董枝明(小学館)
★『井上靖 わが文学の軌跡』(中央公論社)
★『ユリイカ 特集ミラン・クンデラ』1991年2月号(青土社)
こちらの4冊と、



ゴビアゲート、高温石英。

結局、「切手」、「恐竜」、「文学」、「鉱物」という、私の好きな物に関する本(と石そのもの)に引き寄せられたということだ。なにか、普段読まないような本で面白そうなものを買ってみようかなあ、などと考えていたのもつかの間、いざ大量の本を目の前にすると、もう好きな物しか目に入らなくなってしまうのかもしれない。


この後、夜には池袋にて素敵なイベントが待っていたのだ。続きを乞うご期待。