烏鷺鳩(うろく)

切手・鉱物・文学。好きな事楽しい事についてのブログ

ウドムルト共和国 恐竜 加刷切手 (3)

2018-04-07 | 切手
次に気になるのは、いつ発行されたかである。これは切手自体に発行年月日が記されていないから見当も付かないところだ。が、加刷してある“地”のロシア切手を手がかりにある程度絞れるのではないかと考えた。


赤1色で印刷されている所から、おそらく、ロシアの普通切手だろうと思われる。「スコット世界切手カタログ」があれば、おそらく一発で解答を得られるだろうが、そんな高価なカタログ、そうそう手に入るものではない。ここは地道に、周りにある材料を手がかりに探っていくしかない。


そこで、大変便利なサイトを発見した。「スタンペディア」である。


スタンペディアとは
スタンペディア世界切手カタログは、2009年12月開始のネットサービスで、現在36ヶ国111,987枚の切手を画像付きで掲載しています。国や年代を指定して切手の一覧リストを表示したり、不特定のキーワードで検索して、ひっかかる切手だけを見ることもできます。時間はかかりますが世界で五番目の世界切手カタログになりたいと思います。


なんとも頼りになるサイトではないか。スコット世界切手カタログを手に入れる事ができない私にとって、心強い味方である。早速ロシアの項目を参照する。図案は1992年のガンビア切手が元であるから、1992年以降を探してみる。


発見!!




1992年9月10日に3ルーブル切手として発行されている。それじゃあ、この年の発行かというと、額面に注目して頂きたい。





左から250,500,1050,3000,5000となっている。ロシア連邦の一共和国だから通貨はルーブル。もしも、1992年当時の郵便料金が3000ルーブルなどという高額であるならば、わざわざ3ルーブルの切手を発行するはずがない。郵便に切手を1000枚貼らなきゃならない。つまり、1992年以降のある時期に、3ルーブルの切手に1000倍の額面を印刷しなければならない状況に陥ってしまったと考えられる。インフレである。というわけで、ウドムルトの加刷切手は1992年に発行されたものではないことが分かった。


スタンペディアの続きをみてみよう。
1992年5月26日に100ルーブルが発行されているが、その後は5ルーブル、3ルーブル、25カペイカ(1ルーブル=100カペイカ)と続く。
翌1993年は25~500ルーブル。
1994年には50~500ルーブル。
1995年になると、1月26日に1000ルーブルが発行された後、2月21日についに5000ルーブルが発行されている。その後、この年は250~500ルーブルを推移。
96年3月27日には再び5000ルーブルが発行されている。96年9月10日にも5000ルーブルを発行。
97年4月30日、8月15日にも同様に5000ルーブル切手を発行。その後は1000、500ルーブルと続いている。
ところが1998年1月1日、突然10、15、25,30,50カペイカ切手が発行されているではないか。デノミか?98年は1~5ルーブルの切手が発行され、そのまま落ち着いた様子である。


ロシア連邦の5000ルーブル切手が発行された時期をピックアップしてみる。
1)1995年2月21日
2)1996年3月27日
3)1996年9月10日
4)1997年4月30日
5)1997年8月15日
以上の発行年月日をてがかりにすると、ウドムルト共和国の恐竜加刷切手は、1995年2月~1997年8月の期間か、もしくはその前後に発行されたのではないかと推測できるのだ。


だから何だ、と言われればそれまでだが、私個人としては幾分すっきりした。


「スコット世界切手カタログ」を見る事ができれば、きっと一発なんだけどな。


ちなみに、1998年、ロシアでは1000分の1のデノミが行われた事が、ウィキペディアに載っていた。私は経済には疎いのだが、切手を手がかりにその国の経済状況がわかることもあるのだなあ、ということが今回の収穫か。というわけで、「ウドムルト共和国 恐竜 加刷切手」は、ソビエト連邦解体(1991年)後の経済混乱期において、インフレが最高に高まった時期であり、その後に行われるデノミの直前くらいに発行された切手であることが分かった。最初はただのoverprintタイプの加刷だと思った物が、surchargeタイプの加刷切手だったのだ。


ただし、まだ謎は残っている。


「なぜガンビアの切手だったのか?」・・・


【参考サイト】
スタンペディア http://www.stampedia.net/ja