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ECB「タカ派利下げ」次は示さず 市場は9月観測も

2024-06-10 00:23:11 | 世界経済と金融


記者会見するECBのラガルド総裁(6日、ドイツ・フランクフルト)=ロイター

 

欧州中央銀行(ECB)は6日、4年9カ月ぶりに政策金利の引き下げを決めた。

ラガルド総裁は記者会見で今後の利下げペースについて「データ次第」と強調し、ガイダンスの明示を避けた。市場ではペースが想定より減速する「タカ派的な利下げ」との見方が広がっている。

 

6日の理事会でECBは主要政策金利を4.5%から4.25%、中銀預金金利を4%から3.75%へと、それぞれ0.25%の引き下げを決めた。

2022年7月にマイナス金利を解除して以降、10会合連続の利上げで累計4.5%金利を引き上げ、その後、前回4月までは5会合連続で政策金利を据え置いてきた。

 

6日の利下げ発表後、外国為替市場でユーロは対ドルと対円ともに同日の高値をつけた。債券市場ではドイツの国債利回りが小幅に上昇した。利下げ自体は市場の予想通りで、ユーロ安や金利低下の材料にはならなかった。

市場関係者が注目したのが、今回の利下げ後の経路だ。英HSBCのファビオ・バルボニ・シニアエコノミストは「ECBが政策金利についてのガイダンスの提供をしなかった。会合後の感触は間違いなくタカ派的な利下げだ」と指摘する。

 

ラガルド総裁は今後の利下げ方針についての記者からの質問に対し、明確な回答を避け続けた。政策金利については「特定の道筋は事前に確約しない」とし、本格的な利下げ局面に入るかは「可能性は高いが、データ次第になる」と強調した。

背景にあるのがインフレへの警戒だ。物価目標の達成については「今後数カ月はでこぼこした道を歩むだろう」とした上で、「賃上げ率が高いためインフレ圧力はなお強い」との見方を示す。サービス部門の根強いインフレの可能性が改めて意識されている。

 

四半期に1度の景気・物価見通しでは、ユーロ圏の物価上昇率について24年に2.5%、25年に2.2%として3月時点の予測から0.2ポイントずつ引き上げた。

「直近は賃金やインフレ率が上振れしており、ECBは慎重な判断をせざるを得ない」(フィデリティ・インターナショナルのグローバルヘッドオブマクロ&ストラテジックアセットアロケーション、サルマン・アフメド氏)と受け止められた。

 

市場では利下げが速いペースで繰り返される可能性は低下したとの見方が広がっている。伊ウニクレディトのグローバルヘッドオブリサーチ、マルコ・ヴァッリ氏は「24年は四半期ごとに0.25%のペースで緩やかに利下げが進む。年内利下げは9月と12月となりそうだ」と予測する。

英キャピタル・エコノミクスのアンドリュー・ケニンガム・チーフ欧州エコノミストも「24年末までの利下げは残り0.5%のみで、次回の引き下げは9月だろう」と見る。どちらも次回の7月会合では利下げはないとの見方だ。

 

ペースが緩やかになったとしても、ECBの利下げは欧州の株式市場にとって追い風となる。欧州銀行株の代表的な株価指数は9年ぶりの高値圏で推移し、米国や日本に比べて直近の上昇率が大きい。利下げによる利ざや縮小よりも、早期の利下げ開始による景気回復で業績が増益に転じ、高水準の株主還元が続くとの期待が強いためだ。

6日にはオランダ半導体製造装置大手のASMLホールディングの時価総額が一時3770億ユーロ(約64兆円)を超え欧州2位となった。23年末の2681億ユーロから4割増えた。金利低下への期待からバリュエーション(投資尺度)の高い銘柄に資金が流入している。

 

今回のECB理事会では利下げに反対の声もあった。慎重に利下げペースを探る中銀と、年内残り2回程度との見方のある市場との乖離(かいり)が広がれば、好調な株式相場の波乱要因にもなり得る。

(ロンドン=大西康平)

[日経ヴェリタス2024年6月9日号]

 

 

日経記事2024.06.09より引用

 


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