日本の岸田文雄首相㊧は3年連続でNATO首脳会議に出席する
(写真は2023年、リトアニアでの首脳会議)=ロイター
北大西洋条約機構(NATO)が7月9〜11日、米ワシントンで首脳会議を開く。
今年も日本や韓国が参加し、ウクライナ支援を軸に討議する。強権国家との亀裂が深まるなか、NATOは「軍事同盟」に加え「価値観同盟」の色彩を濃くする。民主主義陣営の結束をうたう会合になる。
「ウクライナ支援を急ぎ決めたい」。NATOのストルテンベルグ事務総長は米国での演説で強調した。
ロシアは北朝鮮から兵器を調達し、攻勢を強める。ウクライナを助けないと取り返しのつかないことになるとの切迫感がある。
ウクライナでは期待が高まる。すぐにNATOに加盟できないにしても、武器や資金などの包括的な支援策はまとまるのではないか――。そんな観測がある。
6月はウクライナ支援を話し合う国際会議が相次いだ。主要7カ国(G7)はイタリアでの首脳会議で「揺るぎない支援」を宣言し、欧州連合(EU)は加盟交渉を始めた。NATO会議は総仕上げとなる。
設立75年、歴史的な転換期に
米国・カナダと西欧は1949年にNATOを設立した。
「米国を引き込み、ロシアを締め出し、ドイツを抑え込む」。英国出身の初代事務総長イスメイが語ったように当初からソ連(ロシア)が仮想敵だった。
設立75年を迎えたNATOは、軍拡に転じたことに加え、2つの点で歴史的な転換期にある。
1つ目は「価値観同盟」のイメージが強くなったこと。冷戦期は反共という旗印が優先され、独裁国家のギリシャやポルトガルも加盟国として抱えた。いまは民主主義や法の支配を重んじる国家の合議体を演じようとする。
2つ目はグローバル秩序の維持にかかわりつつあること。以前は欧州防衛ばかりを話し合っていたが、最近はインド太平洋も議題になる。ロシアを支える中国をけん制するためだ。
足元の対立を「欧米とロシア」という古い構図から「民主主義と強権」という図式に広げたいとの思惑がにじむ。だからこそ今回の首脳会議に日韓を招いた。
次期事務総長にはオランダ首相
もっとも、微妙なバランスは保とうとしている。
NATOは次期事務総長にオランダ首相のルッテ氏を充てる人事を決めた=ロイター
26日、NATOは近く任期が切れるストルテンベルグ事務総長の後任にオランダのルッテ首相を選んだ。
対ロシア強硬派のエストニアのカラス首相を推す声があったが、過度な緊張は好ましくないとの意見が大勢を占め、やや穏健なルッテ氏に落ち着いたという。対中政策も、どこまで強い姿勢で臨むか意見が割れる。
米国では今秋の大統領選でNATOを軽んじるトランプ前大統領が復帰するかもしれない。欧州では親ロシアの極右政党が台頭し、日韓も内政がぐらつく。
NATO首脳会議の参加国は漠然とした不安を抱えながら結束をアピールするだろう。内外の脅威にさらされるなか、価値観同盟を守ろうとする強い政治的な意志が必要になる。
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日経記事2024.06.28より引用