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日経平均4万円の先 眠れる有望株、株高持続へ物色リレー

2024-03-10 11:53:55 | 日本経済・金融・給料・年金制度

 

「high can go higher(より高みへ行ける)」。米ブラックロックは2月末、強気の表現で日本株高を予想した。3月4日、日経平均株価は初めて4万円を超えた。

利益の伸び、企業改革、慎重な日銀。ブラックロックが指摘する株高要因は海外投資家が抱く日本株の基本的な評価だ。

 

 

日銀の植田和男総裁は7日、2%の物価安定目標について「確度は引き続き少しずつ高まっている」と述べた。

春季労使交渉を見極めた上で、早ければ18〜19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策を解除するとのシナリオが浮上する。

 

ただ植田総裁は「長期国債の買い入れは続く」とも強調し、政策修正が市場の混乱を招かないよう配慮する考えを示す。

マイナス金利の解除後「追加利上げは2025年」(野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト)との声も多い。

 

であれば持続的成長と低インフレという「ゴルディロックス経済」が保たれる――。希望も入り交じった市場の見方だ。

ブラックロックの発言にはもう一つ意味がある。24年に入り上海のオフィスビル2棟を売却する意向と伝わった。中国から日本へのシフトを象徴する。

 

買われたのは一部

海外投資家がけん引した日経平均の4万円突破は海外でも大きく報じられた。同時に、7日の下げ幅が一時500円を超すなど利益確定の節目にもなった。

 

 

投資家の不安は足元の株高がバブルか否かだ。米ブリッジウォーター創業者のレイ・ダリオ氏はバブルの判定に「伝統的な水準と比べた割高感」「経験のない新たな投資家の参入」「レバレッジ投資に支えられているか」など6項目をあげる。

新しい少額投資非課税制度(NISA)による個人投資家の参入は当てはまるかもしれない。だが割高かどうか。米モルガン・スタンレーのジョナサン・ガーナー株式ストラテジストは「東証株価指数(TOPIX)の予想PER(株価収益率)は15倍程度であり、21年初頭の18倍にも達していない」と指摘する。

 

TOPIXは1989年の最高値から約5%低い。対象銘柄で24年以降、上場来高値を付けたのは300に満たない。過熱するほど買われた銘柄は限られ、米エヌビディアが先導した半導体など一部に資金が集まったのが昨年来の高騰劇といえる。

では、今回の上昇相場が持続するには何が必要か。株高をけん引するバトンが半導体関連などから、幅広い銘柄に広がる「物色リレー」が欠かせない。

 

 

次の投資先、4つの切り口

投資できる埋もれた候補は多い。4つの切り口で銘柄を厳選した。1つは高ROE(自己資本利益率)かつ24年度の純利益が大きく伸びそうな中小型株だ。

中小型株が多い内需銘柄は円高にも耐久力を持つ。エイチ・アイ・エス(9603)や乃村工芸社(9716)など独自ビジネスを展開する企業が目立つ。

 

新NISAのスタートもあって、個人投資家の動向にも注目が集まる。モルガン・スタンレーMUFG証券の古川真クオンツ・ストラテジストのアイデアをもとに、投資部門別売買動向で個人の買い越しが目立った翌週に値上がりしやすい銘柄を抽出した。三越伊勢丹ホールディングス(3099)や海運などが名を連ねた。

 

株式相場がここまで上昇すると、個人が好む高配当株への投資も工夫が必要になってくる。25年3月期の1株あたり配当の市場予想平均(QUICKコンセンサス)を用い、配当利回りが高い銘柄をランキングするとセイノーホールディングス(9076)など株主還元に積極的な企業が並んだ。

住友化学(4005)、あおぞら銀行(8304)は配当予想を下方修正した後、大きく値を下げた。自己資本比率など財務余力もあわせ見たい。

 

最後がアクティビストの保有銘柄だ。それ自体が材料となるほか、経営陣が株主還元の強化を決断する可能性がある。

ようやく開いた日経平均「4万円時代の扉」。過度に割安という理由だけでは買えない水準だからこそ、1つずつ銘柄を確かめながら進んでいきたい。

 

 

日本株に来るか「クララ」モーメント

編集委員 藤田和明
昭和の名作アニメ「アルプスの少女ハイジ」では、車椅子生活だったクララが自らの足で立ち上がる名シーンがある。もし今の日本株に重ねるなら、その場面こそが、これから必要になってくるのではないか。

日経平均株価が34年ぶりに最高値を更新、初めて4万円台にのせた。そのリード役は半導体関連をはじめ、世界の需要を取り込み成長するグローバル企業だ。そうした外需頼みを脱し、自国の需要で成長する好循環に移っていけるかが今後の焦点になる。


日本の「クララ」モーメント。日興アセットマネジメントの神山直樹チーフ・ストラテジストは「病気が治っていることに気づいていないが、実は立ち上がって歩くことができる人の比喩」として、これを使う。2023年中はまだ様子見だったが、一歩踏み出せるか「これからが本番」になるという。

神山氏はコロナ禍からの経済の正常化に伴って生じた人手不足や設備不足の状況が、次第に健康に向かわせると見る。積極的に賃金を上げ、新鋭設備の導入に踏み出す。そうした拡張的な企業行動が増えることで、国内需要が自ら立ち上がれる状態に近づく。


クララが立つきっかけをどうつくるか。今の株高自体がムードを改善しているかもしれないし、何より春闘で大企業が思い切った賃上げに動くかが重要だ。23年10〜12月期の法人企業統計で設備投資は前年同期比16.4%増。変化のサインはある。

こうした動きに確度が高まるにつれて、内需が中心の中小型株の上昇を市場が探る場面へ近づくのだろう。


中小型の企業自身が変化していることも見逃せない。北陸を中心にディスカウントスーパーを展開するPLANT(7646)。情報開示の変身ぶりが注目を集める1社だ。

昨年10月、「資本コストや株価を意識した経営」として改善方針を公表。自己資本利益率(ROE)目標の達成に向け、当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジの3つの要素に分解し、取るべき具体策を明示した。


東京証券取引所による昨春の「PBR向上策」要請を契機に、取締役会で毎月議論する重要テーマにした。資本コストなど最初こそ抵抗があったが、議論を重ねるうち「収益力の改善へやっていることと、やらなければいけないことが明確に合致するようになった」と山田准司専務はいう。

財務の机上の議論と現場の行動が一致しやすくなった。塩唐揚げや酢豚の販売が取り組み前の3倍になるなど成果も出始めた。資本政策も老朽施設の修繕のためと蓄えを優先してきたが、それも見直し、総還元性向を100%、翌期以降は30%以上にすると決めた。公表前に比べて同社の株価は2倍強に切り上がっている。


PLANTのような議論は日本の各企業で進行中に違いない。今まだ水面下の議論をどこかで「決定」し、一歩踏み出す企業が増えるのが大事だ。

グローバル企業をグローバル投資家が支持し、日経平均の最高値を形作った。この先は内需企業へ国内投資家の支持が広がるかが焦点。そうなってこそ日本株が自ら立っていける足の力が強まってくる。

(張勇祥、小池颯、飯島圭太郎、松本裕子、勝野杏美、ニューヨーク=竹内弘文、三島大地が担当した。グラフィックスは田口寿一)

[日経ヴェリタス2024年3月10日号]

 

 

 


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