デュポン財閥の創始者 エルテール・イレーネ・デュポン(1771-1834)
話は、235年まにさかのぼります。 1789年おいえば、フランスの人民が バスチーユ の監獄を殺到した フランス革命 が起こった年です。受験生は、789と数字が続くので覚えやすい年号です。
ちょうど、この年の事です。 大西洋を西へ西へと新大陸に向かって航行する船の甲板に、一人のフランス人の老人が、はるか西を見つめ立っていました。
老人のかたわらには、見るからに利発な青年が付き添っており、これを老人の息子と思われました。
老紳士はピエール・デュポンと呼ばれ、青年はその次男 エルテール・イレーネ・デュポン すなわちデュポン財閥の創始者でありました。
デュポン親子は自家用船でアメリカに向かって船旅を続けているところでありました。 老デュポンは、故国フランスではかなり知られた思想家で、フランス革命を醸成した啓蒙思想家の一人でありました。
彼もまた、他の急進的ブルジョ思想家と同じように、新しい時代の象徴である新大陸にロマンチックな憧れをいだいていました。
しかし、この新大陸への夢が単なるあこがれだけでなく、計算のうえにおかれていたことは、老デュポンがすでにヴァージニア土地会社に巨額の投資をおこない、広大な処女地を自分の物にしていたことからも、また長男のヴィクトールをニュヨークで西インド貿易に従事させえいたことからも分かります。
このデュポン一家が故国フランスを後にしたというのは、フランス革命の風向きが次第に激しくなり、どちらかといえば穏健派に属していた老デュポンは、ジャコバン党から敵視されこのままではギロチンの露と消えることは明らかと予想されていたからです。
この老人の直感は正しいものでありました。 事実、老人の親友であり息子エルテール・イレーネ・デュポンの化学研究の恩師であったラヴォアジェは、後日、革命の露と消えました。
こうして労ピエールは、一家をあげて新大陸に移住することになったのですが、この新大陸には老ピエールの思想上の知人が何人もいました。 たとえば、アメリカ建国史上の有名な指導者であり、アメリカ民主主義の基礎を築いた 第三代大統領 トマス・ジェファーソンは、その知人の一人でした。
老ピエールとジェファーソンは、新しい国家アメリカの発展の礎石は農業におかねばならぬという見解をともに持っていましたが、このデュポン一族がアメリカ工業の発展に大きな役割を果たしたのは歴史の皮肉です。
デュポン一族は、こうしてヴァージニアに落ち着きました。 ある日のこと、エルテール・イレーネ・デュポンは、ワシントンの軍隊に加わって歴戦したフランス人士官と一緒に首領に出かけました。
獲物はたくさん獲れ、火薬が足りなくなるほどでした。 一行はやむをえず、途中で火薬を補給することにしました。ところが火薬を補給する段になって、エルテール・イレーネ・デュポン(E・I・Dupnt)は、火薬の質が非常に悪く、化学を学んだ彼はすぐに改良できると思いました。 おまけにその火薬の値段は非常に高かった。
そのことがあってから後、E・I・Dupontはいくつかの火薬工場を視察します。 予想通りお粗末なものでした。
E・Iは、アメリカは火薬製造事業を始めるには大きなビジネスチャンスがあると思ったのです。 彼はさっそく火薬工場の見積もりをつくり、経費・資材を用意するためにフランスに渡りました。
彼は、当時のヨーロッパも情勢をうまく利用します。 ナポレオンはイギリスを敵視していました。 当時イギリスは新大陸はもちろんの事各国に火薬を輸出していましが、もしデュポンがアメリカの火薬市場を支配すると、ナポレオンはイギリスに嫌がらせができ、イギリスはそれだけ貿易上の打撃を受けるだろう。 とE・Iは考えたのです。
そして、ナポレオンはデュポンに対し、全面的援助を与えるよう製当局に命令し、こうしてE・I・Dupontは、潤沢な資金・資材を手に入れました。
何か、ロスチャイルドの話をしている錯覚に陥ります。やはり国際情勢をよく把握し、発想がグローバルで、素晴らしいものがあり、かつ行動力があります。
1802年、E・I・Dupontは、ブランディワインに火薬工場を建設しました。部rンディワインが候補地に選ばれたのは、この付近に白樺が多く、白樺は良質な木他の原料として火薬の製造に不可欠であったからとされています。
アメリカ史上はじめての大きな、しかも最新科学の基礎の上に立った火薬工場は、次のような名称でした。 デュポン・ド・ヌムール父子商会(いかにもフランス風ですね)。
さらのその名称を改めてE・I・デュポン・ド・ヌムール会社としました。 この名前が今日のデュポンの会社名です。
(関連情報)
デュポン財閥-1 概要
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