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ファッション 2023-24年秋冬、押さえておきたい6キーワード Nikkei Magazine

2023-10-06 15:16:05 | 高級ブランド(LVMH、エルメス、グッチ、他)、ファッション

NIKKEI MAGAZINE  

ファッション 2023-24年秋冬、押さえておきたい6キーワード

 

ファッションハック Vo.10          2023.08.21

 

 

 

 

2023-24年秋冬はファッショントレンドの大きな転換点となりそうです。約3年ぶりに様々な制約が解かれ、おしゃれモチベーションは急上昇。そうした気分を察してラグジュアリーブランドからは華やぎや強さ、高揚感を注ぎ込んだ提案が相次いでいます。今回はもうじき出番を迎える新作を手がかりに、6つの新傾向をキーワード別に解説していきます。




時代の曲がり角にあることも、新トレンドの底流になっているようです。気候変動や戦争、経済格差など、様々な面で歴史的な変化が続いています。ファッションを自己表現ととらえるデザイナーたちは思い思いに時代観や問題意識をコレクションに映し出しました。目立つ傾向に挙げられるのは、異なる要素の融合。クラシックとフェミニン、フォーマルと普段着といった、従来の約束事を崩すようなチャレンジには、対立や分断の状況にあって、着る人たちに変化を誘いかけるような作り手の気持ちがうかがえます。

テーラードセンシュアル(Tailored Sensual)


    DIOR 2023-24年秋冬パリ・コレクション

 

伝統や歴史への揺り戻しが起きたのは、23-24年秋冬の目立った変化です。クラシック志向は以前からの流れですが、英国趣味やテーラード技が上乗せされています。たおやかでエレガントな雰囲気を重ねて、ジェンダーミックスに仕上げるのも新シーズンの流儀。あえてまとまりすぎを崩すのが、自分らしく着こなすコツです。

「DIOR(ディオール)」はぼかし花柄のスカートにチェック柄のテーラードコートを重ねて、華やぎと落ち着きを溶け合わせました。堅苦しくまとめないで、シャツの胸元はゆるく開けて、気負わないセンシュアル(官能的)のムードを漂わせているのが着こなしのポイント。チェック柄×花柄の「柄on柄」が重層的なあでやかさを印象付けています。紳士と淑女が出会ったかのようなスタイリングです。

 

フォーマルツイスト(Formal Twist)

 


   PRADA 2023-24年秋冬ミラノ・コレクション

 

 

大胆な再解釈やリモデルが相次ぐのは、23-24秋冬の装いがおしゃれのターニングポイントと映る理由です。服飾の常識を読み替える試みは、「ルールの塊」ともいえるフォーマルウエアにも及びます。タキシードや夜会服の普段使いが提案され、ウエディングドレスにまでまさかのデイリー仕様が用意されました。

ウエディングドレスを日常着として提案したのは、トレンドセッター(先導者)の「PRADA(プラダ)」。シンプルなクルーネックのニットトップスに、ウエディングドレス風のスカートを引き合わせました。ほのかに透けるオーガンディ生地と手の込んだ花モチーフはいかにも特別な日の風情。でも、シンプルなトップスのデイリー感が利いて、全体がこなれた見え具合に。眠っているフォーマル服の日常使いに道を開くスタイリングです。

 

 

ストレート&ロング(Straight and Long)

 


   LOEWE 2023-24年秋冬パリ・コレクション

 

凜々(りり)しいマニッシュな装いがしなやかさをまといます。細身のロングシルエットは、他者にもたれかからないインディペンデントな女性像を描き出すかのよう。見どころは縦落ち感の強いシルエット。ストレートでシャープな着映えがハンサムなジェンダーレス感を寄り添わせます。

重力を味方に迎えたのは、「LOEWE(ロエベ)」のコートルック。しなやかな落ち感を宿したロングシルエットがクールなムードを醸し出しました。起毛させたスエードで仕立てたコートは上質なレザーならではの風合いが自然とボディーになじんでいます。素肌にまとったかのような胸元のVラインと長めの袖がいっそう「I」の字ラインを引き立てました。同じスエード素材のブラックパンツはコートとのコントラストを際立たせ、縦長イメージを強調しています。

 

 

ウォームラップ(Warm Wrap)

 


 HERMÈS 2023-24年秋冬パリ・コレクション (C)Filippo Fior

 

 

レイヤード(重ね着)は秋冬コーディネートの趣を深くします。23-24年秋冬に盛り上がりそうなのは、ぬくもり感の高い、ボディーをくるむようなスタイリング。ケープやマント、ブランケットといった、ゆったりシルエットの羽織系アウターが復活。どこかレトロでありつつ、コージー(穏やかで心地よい)な装いに導きます。

「HERMÈS(エルメス)」はライトブラウン系で色調をそろえる「ワントーン」で、穏やかな大人コーディネートに整えました。着物風に打ち合わせるカシュクールのコートが複雑な表情と動きを演出しています。極上のカシミヤ素材ならではの質感が気持ちまでぬくもらせてくれそう。上質素材にくるまれる安心感を色の統一で深めています。それぞれ異なる表情のレザーで仕立てたパンツとロングブーツでリッチな異素材ミックスに仕上がりました。

 

 

 

レディーブラック(Lady Black)

 


   GIVENCHY 2023-24年秋冬パリ・コレクション

 

黒はレディーの頼れるパートナーですが、新シーズンはまとい方が異なります。定番的な「リトルブラック・ドレス(LBD、コンパクトなワンピース)」に加え、透けるシアー生地を取り入れたり、肩を張った「強め」のジャケットを羽織ったり。型にはまらない着こなしがブラックルックにも波及して、バリエーションが拡張します。

「GIVENCHY(ジバンシィ)」は全身をブラックでまとめながら、ありきたりに見えない装いを提案しました。決め手は質感のマリアージュ。ショルダーラインに強さを宿したテーラードジャケットはフォーマルなたたずまい。一方、スカートはシアー仕立てで、はかなげなムード。上下で雰囲気をガラリと変えて、多面的なキャラクターを引き出しています。厚手の服が多くなる秋冬に取り入れるシアー素材は自然な抜け感を漂わせるのにうってつけです。

 

 

 

エスプリクリーン(Esprit Clean)

 


    JIL SANDER 2023-24年秋冬ミラノ・コレクション

 

 

飾り気を遠ざけたクリーンなムードの装いはロングトレンドに育ちつつあります。流行に左右されない「タイムレス」の意識とも好相性です。新シーズンではウイットやエスプリを盛り込んで、シンプルを覆すアレンジが登場。スタンダードアイテムに意外性をプラスして、ミニマル服の表情を深くしています。

「JIL SANDER (ジル サンダー)」は、張りのある素材から立体感を引き出したセットアップを披露。ピュアなたたずまいに温かみやクラフトマンシップを宿らせました。ロンググローブとの色コントラストでレイヤード風の着映えに。大ぶりネックレスとブーツはメタリックにつやめかせて装いのスパイスに生かしています。朗らかな雰囲気に加え、未来的なムードも漂わせ、見慣れたシンプルとはひと味違う新テイストをまとわせました。

◇     ◇     ◇

着る人の意識変化先取り ブランドの強みへ原点回帰

今度の秋冬トレンドが映し出すのは、我慢を強いられた約3年間を過ぎた、いまの「おしゃれとの向き合い方」です。健やかさや自分らしさ、対人関係などの価値をあらためて知って、着る側には装い方を再考する意識が広がっています。クリエーターやブランドはそうしたマインドを先読みした上で各コレクションに落とし込みました。

長く続いてきた「モードの使い捨て」をやめたのは、大きな変化です。ラグジュアリーブランドはそれぞれの原点回帰を進め、素材の上質感や格上のムード、飽きの来ないデザインを提案。SDGs(持続可能な開発目標)を背景に、長く着続けられる服への支持が広がっていることが背景にあります。

ようやく戻ってきた、本気のドレスアップを楽しめる状況にふさわしい装いが出そろったのも23-24年秋冬の目立った動き。世の中の変化に寄り添った、納得度の高い新トレンドはこの秋冬のおしゃれマインドを弾ませてくれそうです。

文・宮田理江(ファッションジャーナリスト)




宮田理江

トレンド情報や着こなし解説、コレクションリポート、スタイリング指南をメディアや個人サイトで幅広く発信。異なるテイストのミックスコーディネートが得意。自らのテレビ通販ブランドを持つ。ディレクション業務、イベント登壇もこなす。毎日ファッション大賞選考委員。

 



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