ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

絵本なのに

2018-01-31 | アメリカ事情

https://www.barnesandnoble.com

 

合衆国では、義務教育は、K to 12と言われ、キンダーガーテン(Kindergarten)から始まり12年生(高校3年)で終わる。夫は父親がその学校の校長だったので、特別に4歳から始めたが、通常5歳に達してからキンダーガーテンは始まる。小学校では、5人の子供達のそれぞれの学年のclass motherとして長い間ヴォランティアをしたが、年に一回は、ブックフェアが開かれ、業者が絵本や学習に役立つ本を売りにくる。そのブックフェアを手伝うのもclass motherの役目だったので、私もお手伝いした。


最初のブックフェアで、一冊の絵本に目が留まった。それが、Love You Foreverであった。子供達がブックフェアにやってくるほんの少し前に、私は手に取って読んだ。そして本を棚に戻す時、胸がいっぱいであった。すぐ近くにいた他の母親ヴォランティアが近づいてきて、クリネックスをそっと手渡してくれ、「わかるわ。とてもいい本で、母親には泣ける絵本よね。」と言った。私は、子供達と帰宅間際にその本を買って帰った。

 

作者のRobert Munschが、この本が生まれたいわれを彼のウェブサイトに書いているが、この最初のページにある文は、見ての通り、作者の作った歌である。

“I’ll love you forever,       
I’ll like you for always,
as long as I’m living
my baby you’ll be.”

この曲のない歌詞は、彼の妻が二回子供を死産した後で作られたと言う。二回の死産。生まれても息を吸うことなく、亡くなって生まれた我が子達への歌だった。長い間この歌は、作者の頭の中にあり、毎回口に出して歌えなかった。何故なら、歌おうとすると、必ず泣けてきたからだった。頭の中にある歌を歌えないというのは、とても不思議なことだった、と作者は言う。

これは長い間一つの歌だったが、ある日グエルフ大学講堂で講談している時、この歌を物語にしたらいいのかもしれない、と思ったそうだ。

パッと浮かんだLove You Foreverの構想は、本に書いたのと同じ内容であったと言う。

作者の今までの出版社は、これが子供向けの本ではないと感じ、結局違う出版社を使った。ある日その出版社が電話をしてきて、「とても不思議なのです。あの本はアリゾナ州の隠居者コミュニティでとてもよく売れているんですよ。子供は不法*とさえ思える隠居者コミュニティで、売れているんです。子供の本なのに。どうなっているんでしょう?」「大の大人が、大人に買っているんです!」

事実、両親が祖父母に買い、祖父母が両親に買い、子供達が誰もに買い、誰もが子供達に買っている、と言うわけだった。実際のところ、誰もが誰ものために買っている。だからよく売れているのだ。作者はこれが最高の本だと思っている。今までに売れた本は1500万冊に及ぶ。

作者は、この物語の歌を彼風のヴァージョンで歌う。誰もがそれぞれ自作する曲で歌うことである、と作者は言う。

*通常合衆国の隠居者対象住宅では、子供は訪問は出来ても、泊まったり、一緒には住めない。

(以上https://robertmunsch.com/book/love-you-foreverからの要約)



https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71TLzNMmSNL.jpg




この絵本は日本では日本人挿絵画家が描いて、和訳も七五調にされ、それが返って、くどく聞こえたり、リズムが悪いと批判されているようだが、これはLost in translation、つまり一つの言語を他の言語に訳す時どうしても生じる誤差、感覚のずれ、あるいはオリジナル作品の意味合いを喪失するから、と言えようか。それほど難しい英語ではないので、本来のこの絵本の意図を理解するには、やはり原語で読まれた方がいいかもしれない。


私自身英語版の挿絵も嫌いではなく、日本の小綺麗に繊細に描かれた水彩挿絵よりも、オリジナルは、この本の意図をもっと表していると思える。それは私のほんの個人的感想で、読み手それぞれである。ただ、日本語の本では、母と息子の愛というのが、非常に重く感じられて、この母親を姑と見てしまう女性もいるそうである。それでは作者がオリジナルの絵本に意図した事とは、かなり外れてくる。作家も述べているが、これはむしろ大人向けで、それまでの出版社では良い顔をされなくて、別の出版社が引き受けたそうである。幼児にはまだ理解不能かもしれないが、小学校一年だった長女と一緒に読んだ時、彼女は涙をこぼしていたので理解は可能であると思う。他の子供達もそれぞれその時期に読んで同じ結果であった故、決して無理難題ではない。ただし、日本語版は、やはり感じ方が異なるのだと思う。和訳本では、タイトルは、「かしの木の子もりうた」で、翻訳者は、小児科医でもいらっしゃる細谷亮太氏。

 

私はこの絵本を親となった子供達に1冊づつあげた。息子であろうが、娘であろうが、母親の子を思う気持ちにはなんら違いはなく、また成人した子供達の母親への思いは素直に嬉しいものだ、と、この母親は思う。



 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71HyNNbGYvL.jpg 


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