カリフォルニアの5月の夏の陽光で、駐車場の木陰は大人気
私の住むところには異なったチェーン店のグロサリーストアが多数ある。それでも行き付けているストアは、いつ行っても駐車場がぎっしりと使用されて、なかなか思うようなところに駐車できない。それが面倒に感じる時は、オンラインで注文し、支払い、配達してもらう。これは、本当に役に立ち、去年はとてもありがたかった。最近は自分で買い物に行くことが多くなった。そして駐車する場所も、ストアの入り口に近いところよりも少し歩く距離にしている。良い運動になるのが良い。
先日も入り口に近いわけではないが、木陰になっている場所が空いていたので、そこへ行こうとすると、前方から来た車にあっという間に駐車されてしまい、しかたないと、別の場所の木陰を見つけてそこへ向かうと、なんと再び同じように、そこも取られてしまった。そうか、そういうこともある、と3番目の木陰を少し離れたところに見つけてやっと駐車した。
車のドアを開けた途端に、なにかがドアのすぐ横の地面できらりと光った。はて、とよく見ると一枚のクォーター(25セント)硬貨。その時、2度見逃した駐車の機会は、この硬貨がここで待っていたからだったと、都合よく理解した。こんなこともあるんだ、と笑みが浮かんだ。その硬貨は、孫#7の「クリスマスに救世軍の赤いケトル」に寄付するための日本の赤いポスト型の貯金箱に入れた。
短気を起こさず、立腹することもなく、別の木陰を見つけられたのだから、それでいいと思うと、その日は、なんとなく愉快に過ごせた。せっかちに、瞬間に気分を害し、ついていない、と思ったら、きっとその日一日、苦い気持ちを持っていたかもしれない。そしてたった一枚の2021年にだけ発行された25セントのぴかぴかコインの力もあったのだろう。
小さな、つまらないことに怒りを持つほどのエネルギーよりも、小さな、つまらないようなことを楽しめるエネルギーを持つ方がずっといい。一時は、病にこのまま、と思うこともあったのに、今は健康になって、残された時間がすこし延びたのだから、無駄な神経を尖らせるような思いは抱くまい。
Slow to anger, quick to forgive (怒るに遅く、許すに早く)という言葉をモットーにして、そのように生きた夫は、私にそれを思い出させようと、きっとそばにいたに違いない。私が、特に合衆国建国の祖、ジョージ・ワシントンの歴史マニアであるのをずっと知っていた人は、生きている妻が、このコインの裏のデザインを嬉しがるだろうと。そのデザインとは、”Washington Crossing the Delaware"「デラウェア川を渡るワシントン」である。
ニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵の「デラウェア川を渡るワシントン」は、ドイツ系アメリカ人の画家エマニュエル・ロイツェによる 1851 年のキャンバス油絵で、コインの裏面のデザインはこの絵画からである。
アメリカ独立戦争中の 1776 年 12 月 25 日から 26 日の夜, ワシントン将軍が大陸軍(当時の北アメリカ13植民地の軍隊)と共に、敵軍(英国軍)に奇襲攻撃を仕掛けるため、厳冬で氷結したデラウェア川を渡った、という史実に基づいて描かれている。
ワシントンと大陸軍は、デラウェア川を超えてのこの奇襲によって、アメリカ独立戦争勝利へと一歩近づくが、1977~1978年には、厳しい寒さをヴァレーフォージで耐え、その上食糧も底をつき始め、苦境に陥った。下の継続する油彩画を見ると、その苦悩と祈りの気持ちがよく現れている。 結局ワシントンと大陸軍の兵士たちも、その苦しみをそれぞれの信仰と祈りで、耐えぬき、窮地を無事脱し、独立戦争の勝利を獲得し、アメリカは独立したのだ。
Winter at Valley Forge by Arnold Friberg The Prayer at Valley Forge by A. Friberg
そんな絵画からのデザインのついたクォーター硬貨は、フェイスヴァリューの25セント(25円くらい)よりも私にとっては、はるかに価値のあるご褒美である。
ママちゃんさんなら、どうされますか!