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先日の記事タイトルは、「眠くない」であるが、今日は、「眠たい」である。ベネドリルやメラトニンやコンピューターマニュアル本や恐怖症リストを読んだ結果ではない。フルタイムで昼間は大学で勤務しているのに、夜は系図調査に精を出しているからである。つまり昼間眠たくなったりする。夫が、「死んでいる方々にお休みを言う方がよかない?明日はまだ金曜日なんだけど。。。」と、寝ぼけ眼で、夜半ダンジョン(Dungeon=地下牢、地下納骨堂などを意味する古いフランス語)と私が呼ぶロフトの書斎のコンピューター机に、壁のゲッコーのごとくへばりつく私へ声をかける。ロフトだから地下ではないが、系図調査をするには、やはり雰囲気としてダンジョンと呼びたい。
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どうしても完結したい調査があるのだ。アダムとイブ夫妻に辿り着けば完全完結するが、普通系図探求に完結はない。ある程度、つまり過去100年~400年くらい遡ってみた結果、というようなことである。先祖の名前を見つけても、徹底的にその人物に関する誕生、結婚、死の公的記録などを付随させるのが、系図探求たるもので、つまり存在した証拠がなければ、ただの家族の伝説に過ぎない。その作業は、昨今系図に関するデータベースでほとんど出来るし、FindAGrave.comへ行けば、おそらく合衆国の全域の墓地にある墓石についての情報と写真が得られる(無料)。
それでも未だデジタル化されていない書類は未曾有だし、風化した墓石群の古びた墓地もいくらでもあり、若輩国の合衆国でも人知れずなんとなく残っている誰が埋葬されているのかわからないところもたくさんあるのだ。昔ながらに、図書館や裁判所に実際に足を運び、埃をかぶった怖ろしく大きな登記台帳や遺書検認記録などを手に取り、調査することもある。ちなみにスマートフォンは、こんな時実に重宝する。フラッシュをたかずに書類をコピーできるからである。フラッシュ光やコピー機の光でさえ古書の紙質を痛めることがあるからだ。それに有料コピー機を使わなくてもよい、ということも重たい余計な小銭をじゃらじゃら持ち歩かなくてもよいということだ。
もちろん墓所へ赴いて直接該当する墓石を確かめ、墓所管理人事務所で埋葬記録を読ませてもらうこともある。荒野と化した古い古い墓地はたくさんあり、墓石そのものの質がもろければ、長年の雨風によって朽ちてきて銘刻が判読不可能なこともある。もちろんそのような墓地には管理事務所もなければ管理人もいない。墓所管理人事務所も管理人も不在、判読不可能な朽ちた墓石ばかりの古い墓地で、途方に暮れた私は、結局そこの郡役所や裁判所で、かろうじてあった記録で探していた1700年代後半に埋葬された先祖を見つけたこともある。
こんなMoonlighting(本職の他にこっそりする副業)であるが、私はこれに対して報酬は取っていない。本業を引退したらプロフェッショナルの道を進むやしれないが。第一、先ほどいただいた中華ランチに付いてきたフォーチュンクッキーには、"YOUR MOST IMPORTANT WORK IS YET TO COME"(あなたの最も重要な仕事はこれからやってくる)とあるではないか。今や合衆国の趣味第一位を園芸に代わって占める系図は、17歳の時からずっとコツコツと続けてきた研究でもあり、趣味以上である。
おそらく年配な人々は、こんな歌詞を思うかもしれない。実際、これは系図家の歌と言ってもおかしくない。
君の行く道は 果てしなく遠い
だのになぜ 歯をくいしばり
君は行くのか そんなにしてまで
君のあの人は 今はもういない
だのになぜ なにを探して
君は行くのか あてもないのに
君の行く道は 希望へと続く
空にまた 陽がのぼるとき
若者はまた 歩きはじめる
空にまた 陽がのぼるとき
若者はまた 歩きはじめる
”若者たち” 作詞:藤田敏雄;作曲:佐藤勝;歌:ザ・ブロードサイド・フォー;©2001~Interrise Inc.
まさに系図調査と系図研究者のテーマ・ソングである。さすがに「若者」は、おこがましいので、「あなた」や「わたし」、くらいに直しておこう。引退後の私の生活は、世界一周クルーズではなく(明白な資金不足)、おそらく8~10プラス人の孫の誰かを腕に抱きあやしながら、FindAGrave.comをサーフしていることだろう。もちろんこのテーマ・ソングを聞きながら。
昼も夜も関係なく、特に昼よく眠るこの人も、先祖の子孫なわけだ。