道尾秀介 著
「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」やり場のない心を抱えた子供たちが始めた、ヤドカリを神様に見立てるささやかな儀式
。やがてねじれた祈りは大人たちに、そして少年たち自身に、不穏なハサミを振り上げる―やさしくも哀しい祈りが胸を衝く、俊英の最新長篇小説。
直木賞受賞作品。
大人達の都合の中で生活していく子供達が、生き難さの中で見つけた光に託した物が、大人になってしまった私にも辛うじて鈍く光って見ることができたんじゃないでしょうか。
子供にとって大人はとてつもなく大きな存在でしたよね。
でも大人になった自分はそんなに大きな存在だという自覚はあるでしょうか。
子供の頃に思ったこと、感じたこと、自分はどのくらい忘れてしまったんだろうか・・・・。
大人って・・・・、親ってなんなんだろう・・・・。
ちょっと真剣に考えてしまうような一冊だったな。
それから母親という存在。
前にも書いたことがありましたが、息子にとって母親は母親であってけして女であってはいけない存在だったんじゃないかな。
そんな感情が、物語の主人公を通してひしひしと伝わって来ました。
著者の道尾氏は私と同じ歳なんですが、なんだかそんなこともあってか共感する部分が多いんですよね。
派手さはありませんが、心にゆっくり沁みてくるけどちょっと気味が悪く感じる、奇妙な一冊でした。