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弁護士・元ロースクール教授宮武嶺の社会派リベラルブログです。

「専守防衛」とは?田中角栄首相の「防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、わが国土とその周辺で防衛を行うこと」という答弁について、岸田首相が「海外派兵をしないということだ」と言い出した!

2023年03月28日 | ダメよダメダメ岸ダメ政権

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 信じられないことですが、本日2023年3月28日、来年度予算案が参院本会議で可決され成立する予定です。

 反撃能力=敵基地攻撃能力=先制攻撃能力を具備するという岸田政権の安保3文書に則り、トマホークなど長距離ミサイルの購入などの予算を含み、今の防衛予算5兆4千億円を来年度は6兆8千億円に急増する、という大軍拡予算案です。

 そもそも、日本国憲法9条は戦争放棄と武力の不保持を明記しており、政府は「必要最小限度の専守防衛」ならば憲法9条に違反しないのだと言ってきました。

 なぜ、相手国の基地などを攻撃する先制攻撃能力が「専守防衛」=専ら防衛する、に当たるのか、岸田政権からは全く説明が尽くされていません。

 

憲法違反の反撃能力=敵基地攻撃能力=先制攻撃能力具備のための今年度予算案が衆院を通過。牛歩戦術を取って徹底抗戦し「この愚か者めが!」と叫んだれいわ新選組の大石あきこ共同代表たちこそが正しい。

 

 

 さて、2023年1月31日の衆院予算委で、日本共産党の志位和夫委員長は1972年10月の衆院本会議での田中角栄首相(当時)の答弁を取り上げました。

 田中角栄首相は当時、

「専守防衛というのは防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及び周辺において防衛を行うということ」

と述べているのです。

 専守防衛という言葉からしても当たり前の真っ当な答弁ですよね。

 これについて、志位氏は相手の領域内を攻撃する反撃能力=敵基地攻撃能力の保有は

「田中首相の答弁と明らかに矛盾する」

と追及しました。

末尾のしんぶん赤旗などを見ても明らかなように、共産党のこの分野における理論と経験の蓄積は他の政党の追随を許さない。

共産党は内紛に明け暮れることなく、日本の平和主義を守るために集中して獅子奮迅の活躍をしてほしい。

日本共産党の選挙公約は、羊頭狗肉の岸田政権「新しい資本主義=成長も分配も」より1万倍素晴らしい。(1)新自由主義からの転換(2)気候危機の打開(3)ジェンダー平等の日本(4)憲法9条に基づく平和外交

 

 

 これに対し、岸田首相は田中首相の答弁について

「武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣する、いわゆる海外派兵は、一般的に憲法上許されないことを述べたものだ」

と専守防衛の説明を変えてしまったんですよ!

 田中角栄氏は専守防衛とは

「相手の基地を攻撃することなく」

 と言ってるのに、それは海外派兵をしないという意味だとか、どこをどう読んだら出てくるんですか!

 

 

 岸田政権がよりどころとしているのは、田中答弁より10数年も前の1956年2月の衆院内閣委員会で当時の船田中・防衛庁長官が代読した鳩山一郎首相の答弁で、そこでは確かに

 「(ミサイルなどによる)攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」

と述べられています。

 しかし、この答弁について1959年3月の衆院内閣委で当時の伊能繁次郎・防衛庁長官は、

「国連の援助もなし、日米安全保障条約もないというような、他にまったく援助の手段がない場合とは憲法上の解釈の設例としての話」

「このような事態は今日では現実の問題として起こりがたい。平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは憲法の趣旨ではない」

と説明しています。

 

 

 以上の答弁を見ると、日本政府のこれまでの見解でも、少なくとも今も昔も日米安保条約があるのですから、日本が敵基地攻撃能力を持つ以外の「他に手段がある」ことになり、敵基地を攻撃するミサイルなどの手段を持つことは、法理的にも自衛の範囲に含まれず、憲法違反で不可能ということになります。

 それを岸田首相はいきなり、海外派兵をしなければ専守防衛だと言い出したのです。

 相手国に人間さえ行かなければ、専守防衛。

 それなら、北朝鮮が日本に弾道ミサイルを撃ち込んでも、北朝鮮の兵士が来なければ北朝鮮にとって専守防衛になりうるということになります。

 岸田政権の「反撃能力」具備とそのための防衛予算増額がいかに危険かが良くわかろうというものです。

第1回首脳会談を行う田中角栄首相(左)と周恩来中国首相(肩書はいずれも当時)=1972年9月、中国・北京

同月29日、日中国交正常化が果たされた。

安倍→菅→岸田。。。戦争を知らない世代の政治家。

岸田首相が国会代表質問に対してはぐらかし。明らかに、反撃能力=敵基地攻撃能力=先制攻撃能力の保有・具備は憲法違反であり、その行使は憲法違反・国際法違反だ。

 

 

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今国会での一大争点は先制攻撃能力の具備と大軍拡だとわかっていたのに、うちのブログも取り上げ方が足らないうちに、あっという間に予算成立。

あとは、「反撃能力」具備のための自衛隊法改正などの論戦で、もっと憲法論議を期待するしかありません。

別に田中角栄氏が素晴らしい政治家だったとは全く思いませんが、岸田首相とそのはぐらかし答弁を見ると、日本の政治家の劣化もここまで来たかと思いますね。

しかし、今国会でも諦めないで。

衆議院の優越がある予算と違って、法律については衆参両院で可決しないと成立しないのですから、二院制の長所を十分生かしたいです。

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 岸田政権は敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を安全保障政策の大転換と認めながら、憲法に基づく基本方針「専守防衛」は堅持すると主張している。過去に「相手国の基地を攻撃しないこと」という専守防衛の明確な政府見解が出ているが、岸田政権は「『海外派兵』は許されないということだ」との解釈を持ち出した。歴代政権が「憲法上許されない」と禁じてきた集団的自衛権の行使を容認した安全保障関連法の施行から、29日で7年。専守防衛の変質が続いていることに対し、野党や識者から懸念や批判の声が上がる。(川田篤志、金杉貴雄)

◆専守防衛の変質が止まらない

 「専守防衛」の具体的な説明には、1972年の田中角栄首相(当時)の国会答弁がある。田中氏は「防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、わが国土とその周辺で防衛を行うこと」と明言した。
 共産党の志位和夫委員長は今年1月の国会審議で「専守防衛の考え方は敵基地攻撃と両立しない」と矛盾を追及した。すると岸田文雄首相は田中氏の答弁について「武力行使の目的で武装した部隊を他国へ派遣する『海外派兵』は一般的に憲法上許されないことを述べたものだ」と説明。自衛隊を海外派兵する場合は「相手の基地を攻撃すること」に該当するが、相手の攻撃を防ぐために長射程ミサイルを用いるのは「専守防衛の範囲内」と主張した。

◆菅義偉内閣当時の岸信夫防衛相が

27日、参院予算委で答弁する岸田首相(朝倉豊撮影)

27日、参院予算委で答弁する岸田首相(朝倉豊撮影)

 岸田政権の見解は、70年代の政権の積み上げと継承を否定することにつながる。田中氏の答弁に先立つ1970年、佐藤栄作内閣の中曽根康弘防衛庁長官(当時)が専守防衛について「本土ならびに本土周辺に限る。攻撃的兵器は使わない」などと説明。三木武夫内閣当時の75年に刊行された「行政百科大辞典」でも、田中氏の答弁とほぼ同じ内容が記載されている。
 21世紀に入っても、この解釈は引き継がれた。2004年度に防衛研究所がまとめた専守防衛に関する研究で「田中氏の答弁は、防衛上必要であっても敵基地攻撃を実施することを否定している」と認定している。
 一方、今国会での首相答弁と同じ見解は、2020年11月に菅義偉内閣の岸信夫防衛相(当時)が示していた。この時期は、安倍晋三氏が敵基地攻撃能力の保有検討を求める談話を発表して首相を退任した後で、保有を見据えて説明を準備した可能性がある。

◆元内閣法制局長官「論理的に無理がある」

 政府の説明の変化を追及した立憲民主党の小西洋之参院議員は「歴史の歪曲わいきょくだ」と非難。志位氏も「時の政府が責任を持って答弁したものを投げ捨てるなら、立憲主義が成り立たなくなる」と批判した。
 阪田雅裕元内閣法制局長官は本紙の取材に、田中氏の答弁について「憲法9条の下の『必要最小限度の実力行使』を担保するものだった」と指摘。岸田政権の見解に関しては「上陸して攻撃するのとミサイルで攻撃するのと何が違うのか。牽強けんきょう付会も甚だしい。論理的に無理がある」と酷評した。

 

 

2023年2月6日(月)

敵基地攻撃能力の危険 志位委員長質問が明らかにしたもの(上)

先制攻撃前提の米と融合

 「専守防衛」から米国とともに先制攻撃へ―。日本共産党の志位和夫委員長は1月31日の衆院予算委員会で、戦後の安全保障政策の大転換をもたらす「安保3文書」の核心=「敵基地攻撃能力」保有の根本問題をただしました。そのポイントを振り返ります。


写真

(写真)IAMDについて質問する志位和夫委員長=1月31日、衆院予算委

 最大の問題は、岸田政権が保有を宣言した敵基地攻撃能力(反撃能力)が、憲法違反であるだけではなく、日米が「融合」する形で運用され、米軍の先制攻撃への参加の危険があることです。

 志位氏は、1月13日の日米共同声明や同11日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)共同発表で、日本の「反撃能力の効果的な運用」のため、日米間の協力を深化・強化することを明記していると指摘。さらに、2プラス2共同発表は「日米同盟の抑止力・対処力」の強化の冒頭に、「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)をあげているとして、その危険性を告発しました。

インフラまで攻撃対象広く

 IAMDは米軍が地球規模で空域を支配するため、「ミサイル防衛」などの防御と、相手国のミサイル基地攻撃などを一体的に駆使する「攻守一体」のシステムです。米インド太平洋軍は2014年、ハワイの司令部に「太平洋IAMDセンター」を設置するなど具体化を加速。念頭にあるのは中国との覇権争いです。

 政府は今回の安保3文書で、IAMD導入を初めて表明しました。日本のIAMDも「防空」「ミサイル防衛」と一体で、敵基地攻撃能力の保有・行使を明記しており、米軍と同じ構造です。

 米軍のIAMDの最大の問題は、国際法違反の先制攻撃が前提になっていることです。志位氏は、IAMDの基本原則を示した米統合参謀本部のドクトリン(教義)「対航空・ミサイル脅威」(17年4月)を明らかにしました。この文書には「攻撃」部分(攻勢対航空)に関して二つの原則が示されています。

 第一は、「ミサイルサイト、飛行場、指揮統制機能、インフラストラクチャー」を攻撃対象としていることです。軍事拠点にとどまらず、「指揮統制機能」=政府機関や省庁、「インフラ」=鉄道や道路、港湾、空港などをあげています。

 第二は、「敵の飛行機やミサイルを離陸・発射の前と後の双方において破壊、または無力化する」「先制的にも対処的にもなる」などとし、先制攻撃を明示していることです。これが米軍の基本原則なのです。

米軍の原則を首相も「承知」

 「米軍がこうした原則を持っていることをご存じか」。志位氏の追及に岸田文雄首相は「承知している」と述べ、先制攻撃を含んでいることを認めました。

 重大なのは、米軍は先制攻撃を前提としたIAMDを強化するために、同盟国の参加を求めていることです。

統合防空ミサイル防衛(IAMD) 切れ目なく

 IAMDへの同盟国の参加について、米統合参謀本部ドクトリン(教義)は「最大限の戦闘能力を発揮するため、米軍と同盟国の能力を統合」する方針を明記。北大西洋条約機構(NATO)軍では、既に統合司令部の下でIAMDを運用する態勢が確立しています。

 首相は「米国のIAMDに統合される、参加することはない。日本は独自に行う」と明確に否定しました。しかし、首相自身が、1月13日のバイデン米大統領との会談で、日本の敵基地攻撃能力(反撃能力)に関して米国との協力の強化を明記している以上、「独自に行う」ことはありえません。

一緒に訓練し、一緒に作戦へ

 首相の答弁に対して、志位氏は、米空軍が発行している機関誌『航空宇宙作戦レビュー』の2022年夏号に掲載された、米インド太平洋軍の「IAMD構想2028」を明らかにして反論。そこでは、こう述べられています。

 ▽インド太平洋軍の広大な管轄で「統合防空ミサイル防衛能力」を高めることは、米国単独では不可能であり、同盟国や友好国が絶対に重要である。

 ▽同盟国との協力のあり方は「サイド・バイ・サイド―隣に並んでの統合」でなく、「シームレス―切れ目のない融合」が必要だ。

 志位氏は、その意味を、次のように解明しました。

 ▽従来の米国と同盟国との協力は「サイド・バイ・サイドの統合」だった。第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦では、それぞれの同盟国が、それぞれに上陸する海岸を担当した。イラク戦争、アフガニスタン戦争の際にも、多国籍軍は各国の責任地域に分かれてたたかった。

 ▽しかし、IAMDでは、すべてのプレーヤー・コーチが、同じプレーブックを持ち、一緒に訓練し、一緒に作戦を実行し、敵からは米軍と同盟国が一つのチームとして見られる。

 志位氏は「これが米軍の方針だ。自衛隊だけは、独立した指揮系統に従って行動することはあり得ない」と述べ、こう迫りました。

 「アメリカが、この方針に基づいて先制攻撃の戦争に乗り出した時に、自衛隊も一緒に戦争することになる。つまり、憲法違反であるだけでなく、国連憲章と国際法に違反する無法な戦争に乗り出すことになる」

能力の保有が参加する資格

 首相はそれでも、参加を否定し続けます。志位氏は質疑終了後の記者会見で重ねて指摘しました。

 「米軍は『シームレスな融合』が必要だと言っている。『ミサイル防衛』と敵基地攻撃を一体にやるのだから、瞬時の軍事的な対応が必要だ。おのおのバラバラにやっていたら、軍事作戦として成り立たない」

 実は、政府は18年の「防衛計画の大綱」改定時、既にIAMD導入を検討していました。しかし、当時は敵基地攻撃能力の保有まで踏み込めなかったため、断念しています。今回、岸田政権が安保3文書を強行したことで、“晴れて”導入を表明したのです。

 志位氏は記者会見で、こう述べました。

 「米軍のIAMDに参加しようと思うと、これまでの自衛隊では参加できない。敵基地攻撃能力を持つことが『エントリー=参加資格』となっている。敵基地攻撃能力を持って参加し、『融合』する形で軍事活動をやっていく。ここに核心がある」 (つづく)

図

 

 

2023年2月7日(火)しんぶん赤旗

敵基地攻撃能力の危険 志位委員長質問が明らかにしたもの(中)

「脅威でない」首相説明不能

 「平和国家として、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を堅持するとの基本方針は今後も変わらない」。安保3文書の最上位文書である「国家安全保障戦略」はこう述べ、敵基地攻撃能力(反撃能力)についても「専守防衛の考え方を変更するものではない」としています。本当にそうなのでしょうか。

3000キロ射程や極超音速兵器

 日本共産党の志位和夫委員長は1月31日の衆院予算委員会で、政府が狙う軍事費の2倍化=「国内総生産(GDP)比2%」を達成すれば、世界第3位の軍事大国になると指摘しました。

 さらに、政府が米国製の長距離巡航ミサイル・トマホークや12式地対艦誘導弾の長射程化などといった大量の長射程ミサイルと、それらを発射する戦闘機、イージス艦、潜水艦の大増強を狙っていることをあげ、射程は最大で3000キロにまで達すると指摘。「『他国に脅威を与える』ことはないと、どうして言えるのか」と追及したのに対し、岸田文雄首相はまともに答弁できませんでした。

 志位氏は、敵基地攻撃兵器のなかでも重要な位置づけを与えられている「極超音速兵器」を取り上げました。同兵器は(1)低高度をスクラムジェットエンジンで飛行する「極超音速誘導弾」(2)高高度を上下動しながら滑空する「極超音速滑空弾」―の2種類あり、日本では防衛装備庁が開発を進めています。

 極超音速兵器は音速の5~20倍で飛行し、軌道も自在に変えられます。現在のミサイル防衛網では迎撃不可能とされ、まさに「脅威」そのものです。

 志位氏は、海上自衛隊幹部学校がホームページに掲載したコラムで、中国やロシアによる極超音速兵器の開発は、日本にとって「脅威」だと述べていることを紹介。さらに、国家安保戦略も、日本の周辺国が極超音速兵器を保有していることに言及し、「質量ともに(周辺国の)ミサイル戦力が著しく増強」「わが国へのミサイル攻撃が現実の脅威に」なっているとして、極超音速兵器を含む「反撃能力」保有を正当化しています。

歓迎するのは同盟国ばかり

 「中ロが持つことが『脅威』で、日本が保有することが『脅威』にならないとどうしていえるのか」。志位氏の追及は、まさに急所を突いたものでした。これに対する首相の答弁は、驚くべきものでした。

 「わが国の防衛力強化について、いくつかの国は否定的コメントを発表しているが、私が訪問した欧州、北米やG7(主要7カ国)各国は歓迎している」

 首相がここであげたのは米国を中心とした軍事ブロックです。その中で「歓迎」されれば、中国や北朝鮮が反発して緊張が高まろうとかまわないという、驚くべき論理です。

 結局、首相は敵基地攻撃能力の保有が他国への「脅威」にならないという理由をまともに説明できなかったといえます。

抑止の本質 昔も今も恐怖

 一方、首相は「抑止力・対処力を強化することは、わが国に対して不当な武力攻撃をする国々の行動を抑止・対処する上で重要だ」と述べ、敵基地攻撃能力の保有を「抑止力・対処力」であるとして正当化しました。

 抑止力とは何か。志位氏は、防衛大学校が公開している論文『日本の防衛政策と抑止』を紹介し、「抑止の要件の一つは敵対国に対する威嚇」「抑止の本質は、昔も今も恐怖である」としていることを引用。この論文はさらに、「抑止」は「日本の専守防衛の考え方と相容(い)れない面がある」と述べています。

 この考えに沿えば、首相が敵基地攻撃能力の保有で「抑止力・対処力」を強めると言いながら、「専守防衛に徹する」と述べることは、成り立たないことになります。

 志位氏は「相手国に脅威を与える敵基地攻撃能力保有で『抑止力』を強めながら、『他国に脅威を与えるような軍事大国にならない』というのは、根本的に矛盾している」「専守防衛に徹し」とうたっている安保3文書の実態は「『専守防衛』を完全に投げ捨てるものであることは明らかだ」と迫りました。

 (つづく)

 

 

2023年2月8日(水)しんぶん赤旗

敵基地攻撃能力の危険 志位委員長質問が明らかにしたもの(下)

憲法解釈と専守防衛を覆す

 「敵基地攻撃能力の保有は憲法違反」。これが、歴代政権が維持してきた憲法解釈です。さまざまな議論を経て、こうした見解を確立したのが、1959年3月19日の衆院内閣委員会での伊能繁次郎防衛庁長官(当時、以下同)の答弁です。日本共産党の志位和夫委員長は1月31日の衆院予算委員会で同答弁を引用して、岸田文雄首相の見解をただしました。

攻撃的兵器―伊能答弁巡り

 伊能答弁のポイントは、主に次の点です。

 ▽他に全然方法がない場合、(敵基地攻撃は)法理上、自衛の範囲に含まれており、可能である。

 ▽しかし、このような事態は現実には起こりがたいので、平生から他国に対する攻撃的な兵器を保有することは憲法の趣旨とするところではない。

 つまり、敵基地攻撃は「法理上」可能だが、そのための兵器を持つことは憲法違反―というものです。岸田政権による敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有と、この見解は明確に矛盾しています。

 「(伊能答弁で示した)憲法解釈を変更したか否か。端的にお答えいただきたい」。志位氏がただしたのに対し、岸田首相は「結論から言うと変更していない」と述べました。

 ここで持ち出したのが、「他に全然方法がない」という要件の曲解です。首相は周辺国のミサイル戦力の増強などをあげ、「安全保障環境は大きく変化した。米軍の打撃力に完全に依存するのではなく、自ら守る努力が不可欠になっている」と説明し、敵基地攻撃能力の保有を正当化したのです。

 しかし、この説明は成り立ちません。志位氏は99年8月3日の野呂田芳成防衛庁長官の答弁(衆院安保委員会)を紹介。ここでは、59年の伊能答弁で述べた「他に全然方法がない」場合とは、「国連の援助もなく日米安保条約もない」場合であり、こうした事態は「現実の問題としては起こりがたいことから、他に全然手段がないという仮定の事態を想定して、平素からわが国が他国に攻撃的な脅威を与えるような兵器を保有することは適当ではないとした答弁は現在でも当てはまる」として、伊能答弁を再確認しています。

 そもそも、岸田首相の説明は、米軍の打撃力の“不足分”を日本が補うということにすぎず、「手段」である「国連」も「日米安保体制」も存在しています。「他に全然方法がない」という説明としては成り立ちません。

専守防衛は―田中答弁巡り

 敵基地攻撃能力の保有と憲法をめぐる、もう一つの重要な問題は日本の安全保障政策の根幹である「専守防衛」との関係です。

 安保3文書の最上位文書である国家安全保障戦略は、「反撃能力」(敵基地攻撃能力)を保有するとする一方、「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならない」との「基本方針は今も変わらない」と述べています。

 この点に関して、志位氏は72年10月31日の衆院本会議での田中角栄首相の答弁を紹介。ここでは、「専守防衛ないし専守防御とは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行う」ことだと明確に述べています。志位氏は、「『専守防衛』と敵基地攻撃は両立しないことは、この答弁でも明らかだ」と追及しました。

 岸田首相はここでも、過去の政府見解の曲解に乗り出しました。

 田中首相答弁のうち「相手の基地を攻撃することなく」という部分について、「武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣する、いわゆる海外派兵は一般的に憲法上許されないとしたことを述べたものだと認識している」と述べたのです。これはどう考えても成り立たない理屈です。志位氏は、「全く説明になっていない」と厳しく批判しました。

 59年の伊能答弁、72年の田中答弁、99年の野呂田答弁――過去の政府見解との関係すらまともに説明できない岸田首相。志位氏は質疑後の記者会見で、「立憲主義の破壊だ」と批判しました。

 阪田雅裕元内閣法制局長官は「『専守防衛』は、そう言いさえすれば憲法九条を守れるという魔法の言葉では決してない。いうまでもなく問われるべきなのはその中身である」(『世界』2月号)と指摘しています。

 岸田政権の欺瞞(ぎまん)ぶりを徹底追及することが求められます。

 (おわり)

1959年3月19日 伊能繁次郎防衛庁長官答弁

「誘導弾等による攻撃を防御するのに他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれており、また可能である」「しかしこのような事態は今日においては現実の問題として起こりがたいのであり、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っていることは、憲法の趣旨とするところではない。かようにこの二つの観念は別個の問題で、決して矛盾するものではない」

1972年10月31日 田中角栄首相答弁

「専守防衛ないし専守防御とは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行うということであり、これはわが国防衛の基本的な方針だ」

 

 

志位和夫氏のHPより

2023年3月23日(木)

「志位委員長と学ぶ」民青の学習会から

日本国憲法があるもとで、敵基地攻撃能力を持つことができるのか?


 日本民主青年同盟(民青)が主催した「この国を『戦争国家』にしていいのか!? 全国青年・学生学習会」(8日)で、日本共産党の志位和夫委員長が敵基地攻撃能力と憲法との関係について語った部分を紹介します。


写真

(写真)全国青年・学生学習会で質問に答える志位和夫委員長=8日、党本部

 中山歩美民青副委員長 そもそも憲法9条があるもとで、どうして敵基地攻撃能力を持つことができるんでしょうか。持つことはできないということではなかったのでしょうか。

敵基地攻撃能力保有は憲法違反――憲法解釈を変えながら「変えない」とウソをつく

 志位和夫委員長 ここから先は、法理論の話に入っていくので、ややこしい面もあると思うんですけども、とても大事なことなので、聞いてほしいんです。次のパネルを出してください(パネル)。これは、私が国会で使ったものなのですが、敵基地攻撃能力保有と日本国憲法との関係について、さまざまな議論を経て、1959年3月19日に、当時の伊能繁次郎防衛庁長官が行った答弁です。

 「誘導弾等による攻撃を防御するのに他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくということは法理的には自衛の範囲に含まれており、また可能である……

 しかしこのような事態は今日においては現実の問題として起こりがたいのであり、こういう仮定の事態を想定して、その危険があるからといって平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない」

パネル

 つまり、敵基地攻撃は、「他に全然手段がない」場合には「法理的には可能」だが、そういう事態は現実には起こりがたいのであり、「平生から他国を攻撃するような兵器」を持つことは「憲法の趣旨とするところではない」、すなわち憲法違反であると言っている。“敵基地攻撃能力の保有は憲法違反”だと明確に言い切っているのが、この答弁なのです。

 国会で、私は、この答弁を引用して、岸田首相に「敵地攻撃能力の保有は憲法違反という憲法解釈を変更したんですか」と聞きました。そうしますと岸田首相は、「変更しておりません」って言うんです。

 中山 え!?

 志位 変更していますよね、どう考えても。「憲法の趣旨とするところではない」と書いてある。ところが、「変更じゃない」と言い張るのです。そして「安全保障環境が変わりました」と言うんです。

 そこで私が、さらに一問聞いたのは、これまでの政府答弁にもあるように、敵基地攻撃が法理的に許されるのは「他に全然手段がない場合」というただし書きがついているではないか、「他に手段がある場合には敵基地攻撃能力の保有は憲法上できない」というのが政府答弁だったではないか。そして政府が、「他に全然手段がない場合」としてきたのは、国連の援助もなく、日米安保条約もないという場合だった。私たちは、日米安保条約が日本を守っているとは考えていませんけれども、少なくとも政府は、日米安保条約があるから「他に全然手段がない」ということは起こらない、だから平生から敵基地攻撃能力を持つことは憲法違反だといってきたではないか。伊能防衛庁長官の答弁と、今度の「安保3文書」の整合性を説明してくださいと聞いたんです。

 これに対して岸田首相はこう答弁しました。「日米同盟だけで完全に抑止できるのか。わが国自身もさらなる努力が必要なのではないか」

 これは聞いたことへの答弁になっていません。整合性の説明になっていない。伊能長官の答弁は、「他に全然手段がない場合」でないと敵基地攻撃能力を持つことは憲法違反というものです。ところが、岸田首相が言ったのは、“日米同盟という他の手段はあるが、それだけでは足らないから敵基地攻撃能力を持つ”ということです。これではまったく理屈になりません。

 中山 話がまったく違いますよね。

 志位 「他に全然手段がない場合」を「他に手段はあるが足らない場合」にすり替えている。しかも、「足らない」というのもまったく論証抜きです。このように伊能答弁との整合性の説明ができなかったというのが、国会の論戦の結論なんです。

 明らかに憲法解釈の変更をやったわけです。憲法のもとでは「持てない」と言ってきたものを「持てる」と言っている。憲法解釈の変更なのです。ところが「変更じゃありません」と言い張る。これが今の政府の対応なのです。国会論戦で説明ができなくなっても言い張る。何が何でも言い張る。「憲法解釈を変えました」と言ったら大騒ぎになるから言わない。こういう汚いやり方で、いま進められようとしているのです。

 中山 堂々とウソをついているっていうことですよね。

 志位 そういうことです。変えているのに「変えていません」という。

 中山 ちょっと卑怯(ひきょう)ですね。

 志位 ちょっとどころかすごく卑怯です。しかも憲法という根本の問題で、こんなウソついていいのか。

 中山 ちょっとひどすぎます。

 志位 ひどすぎることが、いまやられようとしているんです。

「専守防衛」についても、過去の政府答弁との整合性の説明がつかない

 中山 もう一つ、志位さんは、「専守防衛」についても、過去の政府答弁との整合性を追及していましたね。

 志位 1972年10月31日に、当時の田中角栄首相が行った国会答弁を引用し、いま政府がやろうとしていることとの整合性をただしました。次のパネルをご覧ください(パネル)。田中首相の答弁です。

 「専守防衛ないし専守防御というのは、防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土及びその周辺において防衛を行うことであり、これはわが国防衛の基本方針だ」

 非常にわかりやすい答弁です。「専守防衛」というのは、日本を守るという必要からも相手の基地を攻撃することはしないということだと、はっきり言っている。私は、この答弁を引用して、「『専守防衛』と敵基地攻撃は両立しないことは明らかじゃないですか」と聞いた。そうしましたら岸田首相は、この質問に全然答えられなくて、全く違う話をしました。「田中答弁は、海外派兵を禁止した答弁なのです」と言うんです。

 中山 え? そんなことどこに書いてあるんですか。

 志位 田中答弁のどこにも書いてないでしょ。岸田首相は、「海外派兵」――「武力行使を目的にして、武装した部隊を、他国の領土・領空・領海に派兵する」――これを禁止したものなのだと強弁するわけですが、「海外派兵」などということは田中答弁のどこにも書いてありません。これはあまりにひどすぎる答弁です。田中答弁に全く書いていないことを勝手につくり上げて、それを否定したのが田中答弁なんです、という捏造(ねつぞう)をやったのです。歴史の捏造をやったというほかありません。

 この論争のポイントは、田中答弁では、「専守防衛」とはこうだという定義をしているわけです。「防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく」というのが「専守防衛」なのだと定義している。この定義にてらせば、相手の基地を攻撃するというのが敵基地攻撃ですから、これは「専守防衛」ではないということになりますね。ここでも整合性が説明できなかった。これが今の政府の現状なのです。

 「専守防衛」というのは、政府の論理では、憲法9条に基づいて組み立てられている議論ですから、「専守防衛」の定義との整合性が説明できないということは、憲法違反ということになります。

憲法解釈を「変える」と言って変えた安倍政権、「変えない」と言って変える岸田政権

 中山 以前、安倍政権のときに集団的自衛権について行使容認の閣議決定、そして安保法制が強行されました。そのとき強行自体は私も許せないと思ったんですが、「憲法解釈を変えた」とはっきり言っていたと思うんですよ。それと比べてもいま岸田首相がやっていることが許されるのかなと思います。

 志位 そこは大事なポイントですね。

 安倍政権は、2014年に集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行し、それにもとづいて15年には安保法制を強行しました。この時は、それまでの政府の一貫した憲法解釈――「憲法9条のもとでは集団的自衛権の行使はできない」を、百八十度変えることを天下に宣言してことが進められました。

 集団的自衛権とはどういうことかと言いますと、日本が攻められていないのに、アメリカが海外で戦争を開始した場合に、自衛隊もその戦争に参戦するということです。そんなことは、憲法9条のもとではできない、憲法9条のもとで許されているのは個別的自衛権だけだということが、それまでの一貫した政府の答弁でした。

 それを2014年7月の閣議決定で、安倍内閣が「できます」と変えてしまった。安倍政権というのは閣議決定で何でも決めてしまう政権でした。安倍首相の夫人が「私人か、公人か」ということまで閣議決定で決めるなど、何もかも閣議決定で決めたひどい政権だったのですが、2014年7月には、閣議決定で憲法解釈を変えたと言ったわけです。この解釈変更、それに続く安保法制に対して、国民的な反対運動が広がりました。

 ところが今回は、さきほどお話ししたように、実際には、憲法解釈の大きな変更をやっているのに、「従来の憲法解釈を変えていない」とウソをついている。私は、安倍政権がやったことは許し難いと思います。しかし、彼は、憲法解釈を「変える」と言って変えたわけです。今度は「変えない」と言って変えようとしている。その意味では、こちらの方がさらに悪質ではないかと思います。

 これが、いまやられていることなのです。安倍政権の時には「変える」って言って変えたから、国民的な反対運動が起こった。今度は「変えない」と言ってこっそり変える。こういうやり方は、絶対にあいまいにしないで許さないという立場で頑張りぬかないと、日本は本当に危険な状況に落ち込んでしまいます。

 これは立憲主義が根底から脅かされているということです。立憲主義というのは、憲法によって権力を制約する、勝手なことをさせないということです。ところが岸田政権がやっているように、憲法解釈を根底から変えながら「変えない」とウソをつくことが堂々とまかり通ってしまったら、立憲主義は根本から壊されてしまうという大問題でもあるということなんです。

写真

(写真)全国青年・学生学習会で講師として登壇する志位和夫委員長(右)=8日、党本部

集団的自衛権行使としての敵基地攻撃――武力行使が際限なく拡大する

 中山 本当に日本の政治の根本に関わる問題ですね。いま話に出ていた集団的自衛権と、いま進められている敵基地攻撃能力保有の関係について整理してほしいと思います。

 志位 いま進められている敵基地攻撃能力保有というのは、個別的自衛権しか認められていなかった安保法制の前の話ではありません。安保法制によって集団的自衛権行使を認めてしまった、その土台のうえで敵基地攻撃能力を持とうとしている。ここに新たな特別な危険があります。

 実際の問題としても、「安保3文書」でもたらされる一番の現実的危険というのは、私は、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うことにあると考えています。さきほどお話しした「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)への参加はまさにそうです。あれは個別的自衛権の話ではありません。米軍と「融合」するような形で一体化した自衛隊が、米軍の指揮下で、米軍とともに他国への攻撃を行う。先制攻撃の戦争の危険もある。これがIAMDです。集団的自衛権の行使として敵基地攻撃が行われる。これが一番の現実的危険なのです。

 さらにかみくだいて言いますと、集団的自衛権ですから、日本がどこからも武力攻撃を受けていないのに、「存立危機事態」――日本の存立が危なくなる事態だと政府が認定しさえすれば、自衛隊は米軍と一体でたたかうことになる。そのときに今度は敵基地攻撃能力を持っているわけです。敵基地攻撃能力を使って、相手国の領土に攻め込むことになる。そうすると、相手国からすると日本による事実上の先制攻撃になります。さきほどいったように報復攻撃がやってくる。ですから、「日本を守る」のではなくて、日本を戦場にするというのが、集団的自衛権の行使としての敵基地攻撃なのです。

 そしてもう一つ、ここには憲法上の大変大きな問題があります。先日、山添拓議員が参議院の予算委員会で明らかにしたことですが、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行った場合は、自衛隊の武力の行使が際限なく拡大してしまうことになるという問題です。

 個別的自衛権というのは、日本が侵略を受けた場合に、それを排除するということです。個別的自衛権の場合には、政府が「武力行使の要件」としている、自衛隊の武力行使は「必要最小限度の実力行使」に限られるということをどう定義するかは、ある意味では明瞭です。つまり、日本を侵略している他国の軍隊を、日本の領土、領海、領空の外に排除する、そのための「必要最小限度の実力行使」ということになります。そのように定義することができます。

 ところが集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行ったらどうなるでしょうか。山添議員が、そのときに「必要最小限度の実力行使」をどうやって定義するのかと聞いた。そうしましたら、岸田首相は答えられなくなって、「個別具体的に判断する」としか言えませんでした。つまり集団的自衛権の行使として、自衛隊が武力の行使をはじめるときに、それが「必要最小限度の実力行使」にとどまるという保障がどこにあるのかを言えなかった。つまり自衛隊の武力行使は無制限になるということなのです。

 自衛隊の武力行使の目的も、個別的自衛権の場合には、日本に対する武力攻撃を排除して、日本の主権を守るということになります。ところが、集団的自衛権の場合は、自衛隊の武力行使の目的は、「アメリカに対する武力攻撃を排除」することになる。そのことは首相も答弁で認めました。「アメリカに対する武力攻撃を排除」するということは、米軍が勝つまで(少なくとも負けないように)自衛隊は武力の行使を続けるということになります。

 そうすると仮に米軍が軍事作戦を拡大したら、それにどこまでもついていきますということになります。米軍が勝つまで、自衛隊が米軍と「融合」する形で一体化し、戦争をどこまでも続けることになる。武力の行使が際限なく拡大してしまうのが、集団的自衛権のもとでの敵基地攻撃なのです。無制限の武力の行使の拡大などということが、憲法9条と絶対に両立しないことは、誰が考えても明らかです。こうして憲法違反がいよいよ明瞭になったというのが、論戦の到達点です。

 中山 答えられないというのが本当に恐ろしいですね。

 志位 そうです。政府は、集団的自衛権行使の場合でも、自衛隊の武力の行使は、「必要最小限度の実力行使」にとどまるということを建前としているわけですが、「必要最小限度」とは何かについて定義ができないのです。

 中山 定義できないということは、無制限に武力の行使をやるということですね。

 志位 そうです。

こんな憲法違反がまかり通れば、法治国家、立憲国家でなくなる

 志位 ここまでをまとめますと、まず1959年の伊能防衛庁長官答弁――敵基地攻撃能力の保有は「憲法の趣旨とするところではない」――との整合性を説明できない。つぎに1972年の田中首相答弁――「防衛上の必要からも相手の基地を攻撃することなく」という「専守防衛」の定義との整合性も説明できない。国会で明瞭にのべられた二つの重大な答弁を踏みにじっているわけです。しかも集団的自衛権行使として敵基地攻撃を行った場合、自衛隊の武力の行使は無制限に拡大していく。まさに二重、三重に、憲法違反と言わなければなりません。

 この憲法違反という問題は、ちょっとややこしいところもあるけれども、いま言った中心点はしっかりつかんで、こんな憲法違反が白昼堂々とまかり通るような国になったら、本当に日本は法治国家でなくなるし、立憲国家でもなくなってしまう。そういう問題として、この危険性を徹底的に明らかにしていく必要があると思っています。

 中山 政府が明言しない間に、こんなことが進んでいたのかと本当に恐怖を覚えました。

 

 

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ミサイルではなくシェルターを (ゴメンテイター)
2023-03-28 18:23:22
ミサイルを持って何ができるのでしょう。

撃ってきたら撃ち返す?
敵は撃ち返されたらイヤだから撃ってこなくなり、抑止力になる?
これは一見「なるほど」と思わせるかもしれません。でも、おかしいですよね。敵が日本にミサイルを撃ち込んだ時、アメリカは知らん顔なんでしょうか。日米安保は? 集団的自衛権の行使は?
こう考えれば、ミサイルを持つということは、日米安保は役立たずで、アメリカは同盟国ではない、ということになります。そして日米安保は抑止力にはならない、と。

第一、ミサイルで反撃するようになれば全面戦争です。だから岸田首相は26日の防衛大学の卒業式で「今日のウクライナは明日の東アジアかも知れない」と訓示で述べたのですね。岸田首相は東アジアのゼレンスキーになろうとしているのでしょうか。それともプーチン?

国がやるべきことは国民の命を守ること。そして生活を安定させることでしょう。

そうであれば、ミサイル購入の予算をシェルター設置の費用に組み替えるべきです。ミサイルは東京などの地下街のある所にだけ着弾するわけではありません。住民がミサイル攻撃から身を守れるシェルターの設置こそ、国民を守ることになります。

各地にある自衛隊基地や空港といった敵の攻撃対象になるであろう施設の周辺に、住民が逃げ込めるシェルターが必要なのです。(原発立地には核シェルターでしょうね)

自衛隊員募集のポスターには「国家を守る公務員」とされているようですが、守るべきは国家ではなく国民の命です。岸田首相の地位でも統一教会の財産でもないのです。
返信する
【 中国では憲法の上に共産党があるが、日本では憲法の上に国民の命と健康がある! 】 (三角四角)
2023-03-29 02:11:50
 『 そもそも、日本国憲法9条は戦争放棄と武力の不保持を明記しており、 』

 そもそも、憲法はアメリカが日本にこんな国になって欲しいと理想の国家像を形にしたのです。

 しかし、憲法9条は、自衛権も認めない様にも見えます。
 そうだとすると、憲法9条は、日本は独立国家では無いと宣言しているのです。
 日本国民は自立出来ない日本に誇りを持てますか?

 敵国が攻めて来たら、アメリカに護って貰う。
 それは、独立国家では無いですよね?

 アメリカに護って貰わなければ、日本は滅亡して仕舞うのに、アメリカのすることに一々批判する日本人は恩知らずだと思います。
 人に世話になりながら、その人の悪口を言う人って最低の人間ですよね?

 私もアメリカが好きでは在りませんが、アメリカの世話になっている内は、アメリカを批判するのは後ろめたいです。
 アメリカを心置きなく、批判する為には、憲法9条を削除して、日本を日本国民の手で護れる様にするべきです!

 憲法9条の解釈が変わるのは、現実が変わって来たからです。

 中国が核兵器とミサイルを増やし、北朝鮮まで核兵器とミサイルを増強しています。
 日本が何の対策も採らなければ、中国と北朝鮮は日本は戦う意思なしと判断して、日本侵略計画を立てます。
 日本はウクライナの様になるのです。

 もう一度言います。
 憲法9条は、日本人が作ったものではありません。
 アメリカが作って、日本に守らせているのです。

 何か、勘違いしている日本人が多い様ですが、憲法が一番大切ではありません。
 一番大切なのは、日本人の命と健康です。
 敵国が、日本人の命と健康を危うくする挙に出たら、憲法9条は無視して戦って、日本人の命と健康を護り抜くべきです!
返信する
画像の (時々拝見)
2023-03-29 19:20:33
田中角栄氏の言葉(戦争を知っている世代が…)は、氏の自筆でしょうか?自筆なら国会や憲政記念館の前など、石やチタンに刻んでも良いのでは?と思いますが。あ、もちろん自民党本部前にも。
功罪いろいろ言われる方ですが、思い出すことと言えば、秘書の早坂氏が一時期、共産党員でもあったこと、新聞社に入った後、労働組合を設立したことです。
角栄内閣では、教員手当を中心として教育予算をどーんと増やしたことも有名?で、個人的には日本人のノーベル賞受賞等に多大な貢献をしたと思ってます。時代の違いも考えると、武道?になけなしの教育予算をつぎ込んで、さらに犠牲者まで出した安倍内閣、絶対的野蛮教育(ABE)内閣とでも言いましょうか。
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