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鍵穴ラビュリントス

狭く深く(?)オタク
内容は日々の戯言
イギリス、日本、リヒテンシュタイン、大好きです
プラトニックlove好き

ケイトの20

2016-01-17 10:28:27 | オリジナル小説
 クリスが庭に戻ってくると、見慣れない顔の騎士がそこにいて、何やら険悪な雰囲気を察知したクリスはジルに言いつけに行きました。
「不審者が庭に。ガーティ子爵とケイトが危ないです」
ジルはそれを聞くと、てきぱきと下っ端のメイドたちにニーナ嬢とロラ嬢を2階に上げさせ、ヨウツベ夫人もどの階段も封鎖させました。
「ジル」
ヨウツベ夫人が命令を出しました。
「見てきなさい、剣はここに。さあ」

 一方、ショーンはもちろん護身用の剣を身につけていましたが、相手アーサーが襲ってくる気配がないのを見て、様子を窺(うかが)っていました。
「アーサー? あ、たしか、王女の護衛騎士の一人だったか」
「覚えていてくれて光栄だよ。ベラリナ王女はきみよりも年上だ。王も早く結婚させたいと願っている。きみさえオッケーしてくれれば、ガーティ家は安泰。きみのお父上もそのほうが嬉しいのではないのかな?」
「父は父、僕は僕だ。僕は父の言うことはきかない。早くベラリナ王女に諦めさせてもらえないだろうか。僕の将来の妻はこの彼女だ」
「ふーん……。そういえば、ケイトって呼んでいたかな? ケイト、彼のことは諦めろ。彼はいずれ、王族になる身だ」
「――いや」
ケイトの声はおそろしいほど震えていました。ショーンはケイトの手をぎゅっと握りしめました。
「へえ。可愛らしいお嬢さんだね。ベラリナ王女は、本当は隣国の王子と婚約されていたが、婚約は先週破棄された。このショーン・ガーティの登場によって、ベラリナ王女の気持ちが変わってしまったのだよ」
「ケイト!」
「……? ジル」
 と、途端、アーサーは惚けた顔になりました。
「くせ者! どこの遣(つか)いだ!」
アーサーは形勢不利とみたのか、樹に飛び上がりました。
「美しい女性(ひと)。今度からは門から参りますのでお許しください」
「……え?」
ショーンがケイトの身の安全を考えているあいだにも、アーサーは口でぶつぶつ言っていました。実は、ジルのことを何回も歯噛みしてつぶやいていたのです。
 アーサーはどこからかとり出した大きな真っ赤な薔薇の花束をジルに放りました。
「ジルのことが好きなの?」
ケイトが尋ねると、アーサーはぽんと煙玉を投げ、樹の上からいなくなりました。
ケイトがジルを見ると、
「あのひとは……?」
と、ジルもまた赤くなっているではありませんか!
「ジル……」
ケイトの言葉に、ジルは、はっとして、
「ケイト、ガーティ子爵さま、お怪我は?!」
しかし、それはやはり、どこか上の空でした。



――――
ケイトの話も20まできました。。。