クモ恐怖症の人には蜘蛛が大きく見えていることが判明(イスラエル研究)
特定のものに対して、尋常ならざる恐怖を感じてしまう恐怖症だが、その中でも一番割合の多いのがクモ恐怖症(アラクノフォビア)である。
最新の研究によれば、クモ恐怖症の人たちの目には、蜘蛛が実際のサイズよりも大きく見えているそうだ。一部の人には身も毛もよだつ研究であるが、実は恐怖症の治療に役立つのだという。
「重度であれ、軽度であれ、クモ恐怖症の人にとって蜘蛛は不快極まりない生き物ですが、重度のクモ恐怖症の人に関していえば、その大きさを過大評価していることが判明しました」と自身もクモ恐怖症であるイスラエル、ネゲヴ・ベン=グリオン大学脳認知科学学部のタリ・レイボビッチ氏はコメントする。
研究チームによれば、この研究の発端となったのは実体験なのだそうだ。ある日、大学院生が1匹の蜘蛛を見つけた。するとクモ恐怖症のレイボビッチ氏は、その”大きな”蜘蛛を外に出してと学生に頼んだ。そのとき発見した学生には蜘蛛が小さなものに思えたため、その要求に違和感を感じたのだという。
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そこで研究チームはある実験を考案し、クモ恐怖症であることが認知に影響を与えているかどうかを確認することにした。なお蜘蛛に対する恐怖心が大きいであろうことが理由で、実験の被験者となったのは女性のみである。
まず女子学生80名にアンケートに回答してもらい、クモ恐怖症の程度を評価した。その後、上位20%(蜘蛛が非常に怖いと回答した12名)と下位20%(蜘蛛は怖くないと回答した13名)を対象に、コンピューター画面で両端にハエと子羊の写真が配置されたスケールを表示した。画面にはその後、いく種類かの鳥、蝶、蜘蛛の写真が表示され、被験者にはその大きさに応じてスケールの適当な場所に配置してもらった。また各被験者は、表示された写真が好きか、不快かも回答するよう指示された。
その結果、被験者全員が蜘蛛の写真を不快だと回答した。しかし、蜘蛛嫌いグループは、蝶に比べて、蜘蛛のサイズを過大評価していることが明らかとなった。
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この効果が蜘蛛に特有のものなのか、他の動物にも当てはまるものなのかは不明である。そこで64名の女子学生を対象に同じような実験が実施された。ここでは蜘蛛の写真に加えて、スズメバチ、甲虫、蝶の写真が使用された。
すると蜘蛛嫌いグループでは、蜘蛛嫌いではないグループに比べて、スズメバチをより不快と評価したものの、意外にも大きさを過大評価することはなかった。
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この結果は、それ自体による不快さは、大きさの評価における偏りの原因ではない可能性を示唆するという。さらに重要なことは、感情が蜘蛛の大きさを認識する際に影響している可能性だと研究チームは説明する。
「恐怖が大きさを誤認させるのか、それとも大きさを誤認するがゆえに恐怖を感じるのか? 様々な疑問が浮かんできます」とレイボビッチ氏。こうした疑問を解き明かすことが、将来的に様々な恐怖症の治療法開発の基礎につながるかもしれないそうだ。
via:.livescience
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