クワトロ郎

人生の彩りをアレコレ描いたり、歌ったり、知恵しぼったり、
牛乳しぼったり、  ん?  てな具合で
オヤジギャグ三昧

読書感想文:Adam Fawer:Improbable

2015-10-31 00:09:17 | 読書感想文

Adam Fawer 2005年の作。文春文庫より「数学的にありえない」アダム・ファウアー著。サスペンス精神医学スリラー、エンディング取り様によってはSF。

精神の活動が通常の人よりかなり活発な人は、はた目には異常に見えることがある。通常の人のシンプルな良悪二元論的見方では、とても把握しきれないほど、全方位にその精神がおよび、我々には理解できないことが多い。

特定の分野(記憶力、暗算力、システム構築力など)で並外れた能力を発揮するが、対人関係をうまく築けないアスペルガー症候群などが良い例である。

我々の身の回りには、”変な人”はいたりする。脱税にも前頭葉を使ってしまった、茂木健一郎とかの”脳”本は一頃、ベストセラーとなった。その後、”脳トレ”にはほとんど根拠が無い記事も出た。

要は、我々が”精神と呼んでいるもの”の素性は、まだ分からないのだ。分かっている範囲で事象を論評すると、「そんな夢物語」とか、「それはリアリティーに欠ける」とかなってしまう。

物理、化学、医学、宇宙、などの科学技術で現時点で分かっていることは、現時点ではそれがいまのところ一番説明がしやすい、ということにすぎない。それで説明がつかないことは(UFOとかも含め)、科学的でないとか、でっち上げだとか、空想に過ぎないとか、言われる。ところが、科学の本質は、まだ分かっていないことを分かることである。どこまで行けば、”最後の真実”に行き着くのかは分からない。今分かっている説明で満足し、それだけに基づき論評する人は、実は”科学的ではない”のである。楽をしているのである。”科学者”は、先へ先へ進んでいくのである。楽どころか、非常につらいのである。何も無い所に、道をつけて行くのである。
この論点に立つと、この本のエンディングは、空想でもなく、安易なSF化でもないということが分かるであろう。

この本は、”異常な計算力”をもった、数学者が、”未来の起こりうる事象”をすべて、事前に計算して、シミュレーションして、最善の結果が得られるシナリオを決めて、それを実行することで、難局を乗り切っていく。この、”能力”そのものが、権威筋に狙われて危機に落ちいるのだ。

この”異常な計算力”には、もっと裏があるのだが、それは読んでのお楽しみ。

読書は、まさに精神活動なのだから、囚われず、自由に、ありたいものだ。(書評を色々見ていると、あまりに、自分の狭量の判断で、良悪つけておしまい、が多い。”つまらない”とか言う人の理由を見ると、”ただ好き嫌い”だけみたいだ。時には、別に判断しなくても良いのでは。)