クワトロ郎

人生の彩りをアレコレ描いたり、歌ったり、知恵しぼったり、
牛乳しぼったり、  ん?  てな具合で
オヤジギャグ三昧

読書感想文:Hosseini : The Kite Runner

2015-04-05 00:44:37 | 読書感想文

Khaled Hosseini Bloomsbury Publishing PLC 2007年12月17日

アフガニスタン出身のKhaled Hosseiniの2003年の作。邦訳は早川書房より「君のためなら千回でも」。同名の映画が2007年 Dreamworksより。Kite Runnerとは、凧上げをする人のこと。アフガニスタンでは凧揚げ合戦がポピュラーで、ぶつけ合い、最後まで残った者が栄誉をえる。主人公達も子供の頃これに夢中になった。

時代は、アフガン王国末期から、革命を経て、ソ連軍が侵攻、その後の長い混乱期。

裕福な家庭の男の子アミールは、召使一家の子供ハッサンと兄弟のように仲良しで、遊ぶのはいつも一緒。ある日、凧揚げ合戦でアミールが勝ち、落ちてゆく凧をハッサンが探しに行き、あろうことか、年上の不良グループにつかまり、レイプされてしまう。追いついたアミールはその光景に愕然として、見なかったことにして逃げ帰ってしまう。これがトラウマとなり、アミールは、それでもけなげなハッサンを遠ざけ、自分へのプレゼントを盗んだと濡れ衣を着せたため、召使一家はそれを恥じ、職を辞し故郷に帰ってしまう。

その後、アミールは父とともに米国に亡命し、父の死後、著名な作家となる。ある日、父の友人からハッサンの消息を知り、裏切りの償いをするためにアフガンにもどる。すでにハッサンは死んでおり、彼にそっくりな子供が、人身売買で買われ、かつてハッサンをレイプした男の慰み物になっていた、、、、

子供には背負いきれない事実、答えの無い真実、それは大人になっても変わらない。ただ、人生を重ねた分だけ、臆病を超えて行動する覚悟がある。幸福であって、幸福でない。お金はあるが、無いものの空疎さは大きい。一歩踏み出すしかない。踏み出したい。

文字通り命の危険を冒してハッサンの子供を救い出し、官僚主義の壁を破り、養子として迎える。月日は経っても心の傷は癒えず、心はまだ閉じたままだが、ある日凧揚げに連れて行くと、瞳に輝きが一瞬だけもどった。ハッサンに顔向けが出来る日がいつか来るような気がした。

今日本では、”イスラム”という名前に嫌悪感を抱く人が多いだろう。過激派のニュースで、イメージが出来ている。ただ、イスラムとかキリストとか、ユダヤとか、仏教とか、ラベルを取り払って、個人個人とつきあうと、まったくと言っていい程、自分と変わらない。痛いものは痛い、うれしい事はうれしい、楽しい事は楽しい、哀しい事は哀しい。

直接知り合うチャンスがないと、伝聞情報だけとなり、現実と異なるイメージが出来る。インスタント情報に満ちあふれるインターネットや、テレビ、マスコミは、畢竟、ガセネタあるいは、誤解のかたまり、と思った方がよい。

本は、世界の大きさを教えてくれる。そして、良い物語は、世界中どこにでも転がっている。本を読もう。ISのニュースの意味は、ニュースだけじゃわからない。