1967年
これで西鉄には二試合連続の完封、八月二十七日の同じ西鉄戦から数えて二十六イニング無失点だ。七月中旬に右ヒジを痛め、夏場で十日間ばかり休場したブランクも、涼しくなってから一気に取り戻し、すばらしいダッシュで新人王にスパートしている。「大学時代からクセになっている春秋のリーグ戦型がまだ残っているせいかな。大学時代もそうだったが、秋になると勝ち星がふえるんですよ」と笑っていた。試合前、その好調のきっかけをこんなふうに説明した。「外角に落ちる球とスライダーのように流れるシュートが決まりだしたからでしょう。八月の中旬になんとなしにおぼえたんですよ」高知商時代はカーブでならした高橋が、得意の内角にくい込むシュートをおぼえたのも、やはり偶然だったという。両サイドに投げわけられるようになってすっかり自信がついたらしい。登板する前、金山コーチから「あまりたべるなよ」と注意されたが「いや、だいじょうぶですよ」とドライカレーをたらげてゆうゆうとマウンドにあがった。14勝で新人王の最低条件といわれる15勝にあとひとつとなった試合後は「もう確実になった?いや、とてもとても」とけんそんした。「一回裏、白の右翼フライを二塁打にしてくれた相手の青野さんに感謝しなくちゃ。それと三回一死一、三塁でファイン・プレーをした三塁佐野さんにも助けられて勝ったようなものですよ」高橋は勝ったとき、必ずといっていいほどまずバックをほめる。この人柄が報道陣にも好感をもたれ、ますます新人王当確の声に結びついているようだ。大下という同じチームのなかにライバルもいるし、それだけに神経を使っている。最近、自分にまた注文をつけた。それは最低18勝すること。「もし、もらうとするなら、仲のいい大下も納得するような成績を残してからにしたい」ライバルも納得させたいというところがいかにも高橋らしい。最近は髪をのばすため床屋にいっていない。大学時代からのガール・フレンドとことしの暮れ、結婚することが内定したためで、式の日取りも十二月中旬に決めているという。髪をのばしたのは結婚式にきれいに七三にわけたいため。「ひそかにねらう」という言葉を高橋はいやがるが、新人王のタイトルを未来のワイフにプレゼントすることを考えていないといったら、それはウソになるだろう。
これで西鉄には二試合連続の完封、八月二十七日の同じ西鉄戦から数えて二十六イニング無失点だ。七月中旬に右ヒジを痛め、夏場で十日間ばかり休場したブランクも、涼しくなってから一気に取り戻し、すばらしいダッシュで新人王にスパートしている。「大学時代からクセになっている春秋のリーグ戦型がまだ残っているせいかな。大学時代もそうだったが、秋になると勝ち星がふえるんですよ」と笑っていた。試合前、その好調のきっかけをこんなふうに説明した。「外角に落ちる球とスライダーのように流れるシュートが決まりだしたからでしょう。八月の中旬になんとなしにおぼえたんですよ」高知商時代はカーブでならした高橋が、得意の内角にくい込むシュートをおぼえたのも、やはり偶然だったという。両サイドに投げわけられるようになってすっかり自信がついたらしい。登板する前、金山コーチから「あまりたべるなよ」と注意されたが「いや、だいじょうぶですよ」とドライカレーをたらげてゆうゆうとマウンドにあがった。14勝で新人王の最低条件といわれる15勝にあとひとつとなった試合後は「もう確実になった?いや、とてもとても」とけんそんした。「一回裏、白の右翼フライを二塁打にしてくれた相手の青野さんに感謝しなくちゃ。それと三回一死一、三塁でファイン・プレーをした三塁佐野さんにも助けられて勝ったようなものですよ」高橋は勝ったとき、必ずといっていいほどまずバックをほめる。この人柄が報道陣にも好感をもたれ、ますます新人王当確の声に結びついているようだ。大下という同じチームのなかにライバルもいるし、それだけに神経を使っている。最近、自分にまた注文をつけた。それは最低18勝すること。「もし、もらうとするなら、仲のいい大下も納得するような成績を残してからにしたい」ライバルも納得させたいというところがいかにも高橋らしい。最近は髪をのばすため床屋にいっていない。大学時代からのガール・フレンドとことしの暮れ、結婚することが内定したためで、式の日取りも十二月中旬に決めているという。髪をのばしたのは結婚式にきれいに七三にわけたいため。「ひそかにねらう」という言葉を高橋はいやがるが、新人王のタイトルを未来のワイフにプレゼントすることを考えていないといったら、それはウソになるだろう。