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プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

石川緑

2016-11-12 15:28:15 | 日記
1962年

石川(緑)はひとりでうつむいて歩いていた。その肩をつぎつぎにたたいていったのは中日の選手だった。「ミドリ、ナイス・ピッチング」去年までの同僚のお祝いだ。はじめは「フフフ・・・」とふくみ笑いをしていたが、しまいにはめんどうくさそうな声でいった。「やめろよ、オマエら敵同士なんだぜ。そんなにほめちゃいかん、いかん」ロッカーに落ちつくとやはり中日の話からはじめた。「中日にこれで3勝か。中日打線をよく知っているというけど、それはぼくの方が損なんや。フリー・バッティングで投げたぼくの球をみんな知りつくしているんだからな。でもピッチングはかえていない。オレ、ズボラだからな。阪神にきてかわったといえばよう走るようになったことぐらいかな」そして思い出したように一回いきなり中に打たれた場面を説明した。「第一球だからね。まさか打ってくるとは思わなかったな。なにげなく投げたんや。いい球やったな。しかし、あいつ(中)はいつも初球から打っていたな」だが七回一死までその一安打だけに押えた。「シュートがよかったのと低目低目ばかり攻めたのがきいた。ニュークはあの低目をよう打たんね」小山、村山、伊奈につづいてこの日入団が決定したばかりのバッキーまで握手する。藤本監督は最後にきてニヤッと笑った。「渡辺の予定だったんだが、カゼ気味だというので試合直前に代えたんだ」ニヤニヤしていた藤本監督が真剣な顔でまくしたてはじめたのはそれから十分後。「一部には藤本監督は小山、村山の試合以外は捨てているとか、ふたり以外で勝つともうけものという考えがあるなんていっているが・・・」といったとたんだ。「いったいだれがそういうことをいいはじめたんだ。第一、そんなことお客さんに失礼でしょうが。私はいつも五日前に先発をきめている。きょうも渡辺がカゼときいたとたん、頭の中の数字をくったんだ。対中日戦の成績は、小山、村山、渡辺。そのつぎがミドリなんだ。スコアラーの記録を私が一番よくみてるんだぜ。ヤマ感で試合を捨てるようなことは絶対いたしません。ただ小山、村山の出ないときは総合戦力が落ちるから、ときに奇想天外な手でマイナスされた戦力をカバーしなければならない。表面的にそんなことだけみて私が捨てると思われては大きな迷惑だ」そばでフロからあがった石川(緑)がからだをふきながらだまってきいていた。五十七歳。白髪をかきあげながら藤本監督はまるで二十代の若者のような熱っぽい口調だった。

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