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プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

前田益穂

2016-11-13 12:58:30 | 日記
1963年

中日のダッグアウトはごったがえしていた。インタビューぎらいの杉浦監督も腕組みをしてアゴをぐいと突き出し、質問を受けて立っている。そんななかで前田だけはバットとグローブを片手にもって逃げじたく。「いいでしょう、一本打ったくらいで・・・」腕を引っぱられ、肩をおさえられた前田はしかたないという表情で向き直った。「まあね。高目のカーブでした。内角へきたから思い切って打ったというだけです」初球をねらったの?ヤマをかけたの?という質問にもそっけない。言葉に勢いがなく、からだもだるそうだった。だがこのからだのだるさが前田にとってはよかったという。「どうもからだの調子のいいときはダメなんだな。上体に力がはいりすぎてしまう。だから夏場になってバテ出すといい当たりが出るんですよ。きょう?ええちょっと・・・」はじめて笑って、やっと言葉にも調子が出てきた。「左にはだいたい強いんですよ。伊藤からもよく打っている。それに二人ストレートで歩いたあとだから、必ず投げ込んでくると思ってたよ」はじめははぐらかしていたのに、こんどは自分からしゃべり出す。足木マネジャーの「早くバスに乗って・・・」という言葉も無視した。「いままではバットを立てて構えていたんだけど、ボールから目がはなれるので、ちょっとねかすようにしてみたんだ。それがいいのか悪いのかわからんけど・・・」第2号ホームラン。だが四月十五日の国鉄戦につづいて二本目の決勝ホーマーだ。杉浦監督は勝負強さにおいては、この前田を一番に推している。しかし自分でもまだものたりないという。「もっとコンスタントに打たなくちゃ。いいときに大きいのが一発出ているだけだものね」前田がバスに乗り込むと、雨が激しく降っていた。それをみながら「ああよかった。中止にならなくて・・。これは巨人さんの涙雨かな」

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