1964年
阪神の対巨人戦用投手として採用されたバンサイド投手を初めて見たのは、去る二月二十八日西京極球場で阪神対阪急のオープン戦の日だった。一見してこれが大リーガーかと思えるほどの弱弱しさを感じたが、ハーフスピードで投げる球には何か秘められたものがあると直感した。球は素直でない。投球練習でも、ただワインドアップからばかりで投げない。セット・ポジションをとり、打者を想定してのピッチング。さすが考えていると感心もした。軽い投球練習でも考えての投球に徹していると見た。バンサイドの投球練習をみていた阪急西本監督にバンサイドをどう思うかと聞くと「ひよわい感じだが、やはりただのネズミじゃあない。考えて投げる投手だ。いいですよ」といっていたのが思い出される。バンサイド投手のフォームは決してきれいなものではない。昨年のワールドシリーズで快投したドジャースのコーファックス投手のような華麗さはない。左腕と上体はスムーズにいっていないし、投球のリズムというものからはやや外れているようにも見える。そのバンサイドが対巨人第一戦に登場したのでバックネット裏の第二列で彼の投球を注目した。バンサイドは1㍍90近い長身、長い左腕からの投球は打者にとっては間近に感じたろう。一回は彼もやや堅くなり、併殺でピンチを切抜けてからの彼は彼の持味を十分生かしたが、もう少し、スピード(直球)があればとも思われた。昨年前半オリオールズ、後半セネタースに移って0勝2敗、大リーグ生活で百九十六試合に出て19勝36敗の成績だが、おそらく彼は大リーグでも技巧派投手であったろう。速球があればおそらく大リーグ生活をまだつづけていたろう。しかし日本の球界には彼の変化球はまだ十分通用すると見た。やや上体よりも常に半コマおくれて出て来るような長い左腕から低目に球を集めようと努力していた。彼のよさは柔軟な上体と強いリストをうまく活用し、重心を低く持って来るように注意していたように思う。カーブも大きいのと小さいもの。これにスライダーをうまくミックスしていた。王はこの二種類のカーブを外角に落とされて打てなかった。試合後「自分は引張ることばかり頭にあって裏目と出てしまった」と頭をかいていた。内角に落ちる球もよく、時折りナックルも投げた。四球ほどわからぬ球があった。このうち三球は打者は見送っていたが、代打藤尾の三振の球は手先に来てボール圏外に云ったかに見えた時、藤尾は空振り。そのはずみでバットを投げ出してしまった。隣で見ていた巨人の内堀氏(もと巨人捕手現スカウト)も頭をひねって「一体あの球種は何だろう」と不思議顔。実はそれがスクリューボールだった。とにかくバンサイドは低目に変化球を集めようとしていたし、低目の変化で勝負する投手と見た。打者の攻め方も日本の投手とちがうように思う。対巨人戦用といわれるバンサイドではあるが、好調時のバンサイドにはセ・リーグの好打者も手を焼くのではないか。今後の彼の健闘を注目したい。
阪神の対巨人戦用投手として採用されたバンサイド投手を初めて見たのは、去る二月二十八日西京極球場で阪神対阪急のオープン戦の日だった。一見してこれが大リーガーかと思えるほどの弱弱しさを感じたが、ハーフスピードで投げる球には何か秘められたものがあると直感した。球は素直でない。投球練習でも、ただワインドアップからばかりで投げない。セット・ポジションをとり、打者を想定してのピッチング。さすが考えていると感心もした。軽い投球練習でも考えての投球に徹していると見た。バンサイドの投球練習をみていた阪急西本監督にバンサイドをどう思うかと聞くと「ひよわい感じだが、やはりただのネズミじゃあない。考えて投げる投手だ。いいですよ」といっていたのが思い出される。バンサイド投手のフォームは決してきれいなものではない。昨年のワールドシリーズで快投したドジャースのコーファックス投手のような華麗さはない。左腕と上体はスムーズにいっていないし、投球のリズムというものからはやや外れているようにも見える。そのバンサイドが対巨人第一戦に登場したのでバックネット裏の第二列で彼の投球を注目した。バンサイドは1㍍90近い長身、長い左腕からの投球は打者にとっては間近に感じたろう。一回は彼もやや堅くなり、併殺でピンチを切抜けてからの彼は彼の持味を十分生かしたが、もう少し、スピード(直球)があればとも思われた。昨年前半オリオールズ、後半セネタースに移って0勝2敗、大リーグ生活で百九十六試合に出て19勝36敗の成績だが、おそらく彼は大リーグでも技巧派投手であったろう。速球があればおそらく大リーグ生活をまだつづけていたろう。しかし日本の球界には彼の変化球はまだ十分通用すると見た。やや上体よりも常に半コマおくれて出て来るような長い左腕から低目に球を集めようと努力していた。彼のよさは柔軟な上体と強いリストをうまく活用し、重心を低く持って来るように注意していたように思う。カーブも大きいのと小さいもの。これにスライダーをうまくミックスしていた。王はこの二種類のカーブを外角に落とされて打てなかった。試合後「自分は引張ることばかり頭にあって裏目と出てしまった」と頭をかいていた。内角に落ちる球もよく、時折りナックルも投げた。四球ほどわからぬ球があった。このうち三球は打者は見送っていたが、代打藤尾の三振の球は手先に来てボール圏外に云ったかに見えた時、藤尾は空振り。そのはずみでバットを投げ出してしまった。隣で見ていた巨人の内堀氏(もと巨人捕手現スカウト)も頭をひねって「一体あの球種は何だろう」と不思議顔。実はそれがスクリューボールだった。とにかくバンサイドは低目に変化球を集めようとしていたし、低目の変化で勝負する投手と見た。打者の攻め方も日本の投手とちがうように思う。対巨人戦用といわれるバンサイドではあるが、好調時のバンサイドにはセ・リーグの好打者も手を焼くのではないか。今後の彼の健闘を注目したい。
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