多分駄文のおじさん日記

我輩は駄文を書くおじさんである。旅、音楽、MLB、株式投資、etc., 日々想いつくままに思いを巡らすのである。

精神的支柱たる人

2005-06-14 00:31:40 | Weblog
現在、会社の業務は年間の中でも最も忙しい時期。
その中で、今週の忙しさはピークとなる。昨年も経験したこの時期の極端な忙しさには覚悟が必要。早朝自宅を出て行くときには、 「今週は決戦だ!」と思わず叫びたくなる気分であった。

さて、会社に着き、メールの整理をし、朝の業務の準備も程なく整え、9時を迎えた。
仕事量は極端に多いが、先週から米国本社に依頼した仕事も順調に出来上がっており、思ったよりもストレスも感じずに時間が過ぎていく。これは、幸先良い、と思った矢先であった。

最近、あまり連絡のなかった米国本社の重鎮A氏からのメールが入っていた。
この会社では珍しい15年のキャリアを持つ大ベテランの人格者のA氏だ。
この時間帯、米国東海岸はまだ日曜の夜9時チョッと前というところ。我が社では、この曜日この時間帯でも業務のメールが結構発信されており、そう珍しいことではないのだが、このA氏の件名が'Thank you'とある。悪い予感がした。

やはり、この会社を辞める、という内容であった。
近頃あまりメールも来なくなり、聊かおかしな気配は感じていたが、悪い予感はズバリ的中してしまった。実は、このA氏、今の会社に就職をした際、我輩を数ある候補者の中から選んでくれた恩人なのだ。単にそうした恩だけではなく、会社に入ってからも直接のボスとして、日米の距離はあったものの日々親しく付き合わせてもらった。業務の知識はピカイチで、親日家でもあり、取引先の機関投資家の方々からも大きな敬愛の対象となっていた。

このA氏、今の金融界に来る前は、米国の幾つかの有名誌に経済記事等を投稿するフリーのジャーナリストの経験もあり、表現力や洞察力の豊かさは並外れたレベルであった。何かを尋ねると、単に答えを言うだけではなく、その意味するところの周辺隅々まで丁寧に教えてくれる。1を訊くと10返ってくる、という感じのまさに我輩にとってもProfessorであった。
また、元ジャーナリストらしく、スポーツや旅の話題なども機知に富んだ話を聞かせてもらうことが出来た。
これまで20数年のサラリーマン生活を営んできて、日本人アメリカ人を問わず、R氏ほど心より敬愛し、所謂相性(Chemistry)が良かったパートナーを見たことはない。彼と巡り会えたことは、自分の社会人の経験の中でも強く記憶すべきことであった。

最近、社内の風向きが変わり、トップの人間が変わり、そのトップが嘗ての子飼いをどんどん社内に引き連れてきた結果、副社長の立場に居たA氏の立場も次第に不遇なものになってきたことは聞いていたが、このような知らせを聞き、やはり残念でしょうがない。願わくば、会社を辞められても、こちらからお付き合いを続けていただきたい御仁だが、どうなることやら。

本日の忙しい時間の中、彼に何と言葉をかけて良いか逡巡しているうちに、長い会社での一日を終えた。彼へのメールは本日は結局、出さなかった。彼にはあまり陳腐な言葉で別れを伝えるのも気が進まなかったからだ。
疲れた体で帰りの電車に乗り、彼のことをしみじみと振り返るにあたり、「精神的支柱」という言葉が頭に浮かぶ。その「精神的支柱」がすっぽりと無くなった時、改めて彼の存在の大きさを感じ、寂しさを感じた。 日々、色々なドラマが起きるものだ。

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1 コメント

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Unknown (シギー)
2005-06-15 14:37:36
アメリカの企業に突如として起こる人事の事例でしょうが記事を読むだけで管理人さんのショックが分かります。平穏な日々というのはなかなか

私達の辿ってきた業界では難しいのでしょうか。

記事の内容の重さにコメントしぬくいですが

心から敬愛できる方に出会えてよかったですね。
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