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南北朝(日本)時代と漫画家・車田正美先生の作品を瞑想する部屋。

【大河ドラマ】『天地人』-前田利家、直江兼続に言の葉を指南-(第35回『家康の陰謀』)

2009年09月03日 23時09分53秒 | テレビ番組

慶長3年(1598)年8月18日。

(秀吉)「・・・茶をくれぬか」(第35回『家康の陰謀』、以下同)
(三成)「は」

震える両手で茶碗を支え、やっと口をつけた重篤の豊臣秀吉(笹野高史)。

(秀吉)「旨いのう・・・もう一杯くれぬか」
(三成)「・・・は」

ここで、聡明な石田三成(小栗旬)はなにかを感じたようです。
残された体力を振り絞って、秀吉は2杯目を味わう。

(秀吉)「・・・旨い。旨いのう・・・もう一杯」
(三成)「・・・は」

最小の動作で、見事な点前で3杯目の茶を献じる三成。
臨済宗の祖、栄西(1141-1215)が宗から持ち帰った茶は「仙薬」でしたが、秀吉は薬効で甦ったかのようにしゃんとして茶碗を回し、これを飲みました。

(秀吉)「そなた・・・まこと、気が利くのう。どうじゃ、わしに仕えぬか」

すでに意識が混濁していたのかもしれない、それとも思い出したのかもしれない、なんとも想像力をそそる秀吉でした。

(三成)「ありがたきお言葉っ・・・わが命を捧げて、秀吉様にご奉公仕ります」

さまざまな想いが涙とともに込み上げてきたのでしょう。ずっと自分に目をかけてくれたこと、この人に仕えてよかった、とか。
でも、きっと感じたと思うんですよ。
これが最後だ。お別れなのだ、と。
大河ドラマ『秀吉』(1996年)で佐吉を演じた俳優だからこそ為せた、長い時間を共有した主従の別れでしたねえ。ついにタオルが出動しました。
豊臣家を一代で興した太閤殿下は、腹心の家臣の点てた茶を末期の水としてあの世へ去りました。「三献茶」のエピソードは聞いたことがある、という程度。でも、秀吉の遺言に殉じた三成の心に納得です。

ここから、今回のメインイベント。

(景勝)「お言葉ながら、さようなお叱りは道理に合わぬものと存じまする」(第33回『五人の兼続』、以下同)
(家康)「これは上杉殿・・・だしぬけになにを申される」
(景勝)「治部少は太閤殿下の家臣。主の責めを家臣に求めるはご見当違いもはなはだしゅうござろう」
(家康)「つまり、なにか? 景勝殿は、此度の件は太閤殿下のご意思であると」
(景勝)「話をすり替えられまするな。治部少を責めるばかりは姑息なことと申したまでじゃ」

上杉景勝(北村一輝)が徳川家康(松方弘樹)にヒットさせたジャブは、言葉が真(まこと)ではない、ということかと。
景勝には、心即言の直江兼続(妻夫木聡)が仕えています。兼続は少なくとも、心にもないことは云いません。だから景勝は彼と、彼のもたらす情報を重用できるのです。
北高全祝(加藤武)が問うた「真の言葉」。予想外の人が予想外の方法でその使い方を示してくれました。

(兼続)「上杉家執政、直江山城守、申し上げまする。内府さまは、お言葉ながら仰せの意味がよくわかりませぬ。天下を操る奸臣とは、不穏な大名とは、どこのどなたでございましょうか。今この場で、はき、と仰せられぬならば、お言葉、おとり消しくださりませ」(第35回『家康の陰謀』、以下同)

(家康)「言の葉は、ひとたび口より出づればとり返しのつかぬもの。とり消しなど無駄なこと」

家康のなにがしたいのかよくわからない売り言葉を、よくぞ買った、とは思います。が、兼続はここまで。
斬り返したのは大老・前田利家(宇津井健)でした。
ひっちゃかめっちゃかになりそうな内政を憂慮した兼続が利家を見舞い、そこを当の古狸が“襲撃”。次の間に控える兼続を見て、なんでおまえがここにいる!という顔をしましたが、それはお互いさまっす。
ここでの兼続は良かった。事を見届けようとする静謐と胆力に溢れていました。
死に具合を量りにきたらしい家康を、死にそうなのに、さらに死にそうな演技をする利家が、

(利家)「内府殿。まこと、その言葉に、嘘、偽りはござらぬな?」
(家康)「天地神明に固く固く誓って、
世を乱すつもりなどさらさらござらぬ。大納言殿の病が癒えるまで、この家康が秀頼さまをお守りいたします。どうか、ご安心の上、ご養生くだされ」
(利家)「貴殿の命・・・ここで奪うこともできる!」

おお、「槍の又左」。
布団の下からシャキーンと閃いた懐刀を頚動脈に当て、

(利家)「偽りなき言葉で誓えましょうや」
(家康)「お誓い・・・申すぅ」
(利家)「利長、聞いたか」
(利長)「は!」
(利家)「直江山城、聞かれたな」
(兼続)「・・・確かに!」
(利家)「証人がおれば安心じゃ。この利家、貴殿の言葉を信じますぞ」

まぎれもなく、ひとたび口より出づればとり返しのつかぬ、を捉えた一計です。誓いを反故にすれば家康は、淀(深田恭子)にアピールした三成、上杉の悪は讒言、奸臣、不穏な大名はわたしです、と認めることになる。ちょっと楽しみになってきました。関ヶ原合戦が。

慶長4(1599)年閏3月3日。前田利家、死去。
先人の遺産を、兼続は生かせるか。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
わーいなぎらさまこんばんは☆ (きつね)
2009-09-04 21:35:07
わーいなぎらさまこんばんは☆

ご覧になられましたのね。
あの混濁秀吉の場面、私もウルッときました。
(今年の大河で初めてかも;)
他の場面(利家サマとか)も含めて、第35話は楽しめる場面があって嬉しかったです。

んにしても、ナイフさまが小物で泣けてくる。。
ラスボスなんですし、もっと大物に描いて欲しいのですが。
(朝日姫も、エライ出され方してましたよね;)
ショッカーの幹部候補生くらいにしか見えないです。トホホ

聞くところによれば、子ども店長が近々兼続の子ども役で登場するとか?
前田慶次郎が出ない寂しさを埋め合わせてホシイナと思っております。。
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きつね様 (なぎら)
2009-09-05 01:31:02
きつね様

こんばんは☆ 最近、2話まとめて観てるんですよー。

>混濁秀吉
そのままぶっ倒れて三っちゃんに支えられ、はっ・・・と過去から現在へ戻ってきたような表情でしたね。『天地人』の数少ない「役に為れる」役者、お見事でした。私見ですが、「役を演じる」役者はまだまだだと思います。
朝日姫はどうやら一発芸ですね。

>ナイフさまが小物で泣けてくる
陰で謀るから「陰謀」というのですが、あれは「陽妨」ですね(-_-;)ノッ ショッカー日本支部の・・・はっ。
あのコブは怪人(改造人間)の証ですか!
関ヶ原はそれで東軍が・・・?
リアルでそういう雰囲気です。

>子ども店長
うーん・・・むしろ、○○年後に別の時代劇で「直江兼続」役、というのはいかがでしょうか。
でも、今しか見られない愛らしさを子役で存分に、という気持ちは視聴者にもあるでしょう。
見守りたいと思います(^_^)。
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