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南北朝(日本)時代と漫画家・車田正美先生の作品を瞑想する部屋。

【大河ドラマ】『天地人』-現代に問う、国替の危機、故郷の喪失-(第34回『さらば、越後』)

2009年08月31日 21時52分38秒 | テレビ番組

NHK大河ドラマは「その年」を映す鏡だと思っています。なので、俳優や製作スタッフが込めた情報とは別の次元で、『天地人』が世に出た理由(わけ)はある、はず。
なにしろなぎらは、どうも皆さまには評判の悪い『武蔵 MUSASHI』(2003年)ですら感激して最後まで観たヘンタイです。その帯域はチューニングできません、と音を上げてたまるか、とがんばった。
上杉景勝(北村一輝)の歩む道をたどれは、まさに現代が視えてくる。それが『天地人』。
え、主役は直江兼続さん?
うーん・・・カレー粉を振りかけると、なんでもカレー味になっちゃうからねえ・・・。

(景勝)「頭を下げてでも、守らねばならぬものがある」(第30回『女たちの上洛』、以下同)
(利休)「その一方、頭を下げれば守れぬものもございます」

華道、香道、茶道。
だらだらと歩けば、道はX*Y軸方向に漫然と伸びるだけですが、極めればZ軸方向に立つ。そこ(X*Y*Z)に込められる情報の質量は膨大です。道は「立てる」ものであることに注目したい。

(利休)「70年の生涯をかけて磨き上げたわが茶の湯は、これで天下人すら及ばぬものとなる・・・実にめでたい日じゃ」
(お涼)「父上・・・」
(利休)「わしは茶の湯の中に生きる。
いつまでも、おまえの傍におる」

そして千利休(神山繁)の茶の道は立った。後世に遺された。
生きて伝わるものがあり、死して伝わるものもある。両極(生と死)の手段で大事を守る対称性は魚津城合戦でも浮き彫りにされました。
景勝も義を立てることに腐心しており、それは朱に交われども赤くならない「刀」を後世に遺したいからでしょう。
遺すところは越後。越後で遺産を形にしたい。大事な故郷です。
ところが、なんという青天の霹靂。
慶長3(1598)年。死期の迫った太閤殿下より会津への国替の命が。
地が奪われてしまった。

(景勝)「どの道、乱世になるのであれば越後の民こそ、わしは守りたい」(第34回『さらば、越後』)

ここまで愛される故郷を、『天地人』はもっと描写するべきでした。
見たかったですよ、放映前から。行ってみたい、暮らしてみたい、それどころか越後人になりたい、と思わせてくれるような「越後」を。越後の言葉も聞きたかった。豪雪で寒いとか、米や酒が旨いとか、そういうことではなくて。

(政頼)「あの頃は、世を正すのだという誇りに満ち、皆、胸を張って山を越えたものでございます」(第23回『愛の兜』)

↑のせりふと、上杉の精鋭が越えるOPの国境の山々、謙信尾根を感じたくて、

国道291号 清水峠(新潟側)
国道291号 清水峠(新潟側)<リベンジ編>

を読んでやっと上越国境を擬似体験しましたさ。信濃川のおかげで通学、通勤できたこともわかりました。大河ドラマより154KV鉄道省信濃川送電線(←PDF ファイルです)に「越後」を感じるのもどうかと思いますけど・・・。
越後がどんな国だったのかほとんどわからないまま上杉が移封されてしまい、残念至極です。どうしてくれる。「※写真はイメージです。」ですませおって。

もとい。
で、置き換えてみたわけです。「越後」を「日本」に。
日本から○○へ国替せよ、と拒めない筋から拒めない状況で命じられたら、日本人は上杉景勝になるのか、泉沢久秀(東幹久)になるのか、ええと、そうだ、仙桃院(高島礼子)になるのか、どうなんだ、と。
それとも徹底抗戦、最後の一兵になるまで戦って死にますか。吉江宗信(山本圭)や安部政吉(葛山信吾)のように。
越後に残る仙桃院は「母=地」。
人と荷駄の長い列、遠くで見送る母としばし見つめ合った後に、別れの礼をする「子=人」。

日本に生きているから日本人なのか。
日本人の生きるところが日本なのか。

唸りましたよ。
近い未来、日本人≠日本国籍の取得者、という時代が来るかもしれません。グローバリゼーションの功罪として、日本人だからこそ通じる心、感覚、習慣、情緒、個性・・・そういったものが失われ、現代が現代でなくなった時は、日本人の交替だってあり得る。もしかしたら歴史上、過去にそういうことが何度かあったのかもしれない。

昔、われわれは越後(日本)に住んでいた越後人(日本人)でした。
嘘つけ、聞いたことがないぞ、そんなこと。歴史を捏造するんじゃない。

こんなこと、「後」日本人に決めつけられたら悲しいでしょうが。刺すかもよ。
だから、史実は大事なんです。過去は大事なんです。
粛々と越後を去る上杉景勝。母から離れても「父=天」が見ている、いつでも謙信公が傍にいる、その想いで道を歩いて行ったのでしょう。漢です。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なぎらさま、こんばんは☆ (きつね)
2009-09-02 22:26:37
なぎらさま、こんばんは☆

うんうん、「越後を守りたい」という言葉はあっても、これまであまり描写されていなかったですよね。
(見たいのはソコじゃない、とこれまで何度思ったことか;)

殿は回を追うごとに崇高になってるように思えます。
最近はヒゲのせいか謙信公にも似てきましたねv
(主人公のヒゲは、見ないようにしていますが.)

第35回はもうご覧になられましたか?
なかなか○○なお話だったと思いました!
(ネタバレ回避のため伏字↑)
またよろしければご感想をお聞かせくださいませ☆
返信する
きつね様 (なぎら)
2009-09-02 23:32:10
きつね様

こんばんは☆

負けたらどんな目に遭うのかわからない戦国時代、「越後を守りたい」のに、なぜか“ローカル”を感じないんですよね、このドラマ。
撮影に入る前に、上杉(長尾)家の深いところに根ざす「越後人の気質」をコンセンサスとしなかったのでしょうか。それ無くして「上杉の義」も「愛」もないような気がしますが。

>殿は回を追うごとに崇高に
そうなんですよ(^^〃)。
利休に「愚直」とか云われてましたけど、苦悩を脇に置かず、ひとつひとつ片づけながら上杉謙信@阿部寛に近づいてきましたね。似てきました。手堅い人は好きです。

>第35回
観ました! ○○で○○でしたね(なんのこっちゃ)。
ラブ兼ピー続には、真(まこと)の「情」と真の「言葉」をよくよく噛み締めていただきたい。
これから感想を書きます。
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