オヤジ純情派

　年のころ５５、６歳を過ぎた日本人オヤジ殿。頭は完全スキンヘッド。スキンヘッドといえばここマニラでも大流行、髪の毛んない方には好都合のはげ隠しファッション。
毎日このマラテで見かける。出没する時間は日中はよく分からないが、うつむき加減でよくラスパルマスホテル隣のセブンイレブンにミネラルウオーターを買いに来る。オヤジ殿、かなり大きめのとてもカラフルなデッキーズロビンソンバージョンを羽織、半ズボンにスリッパ。よく見かける限り毎日同じようなＴシャツを着ているようにも。金の卵時代に生まれたオヤジ殿。とにかく礼儀が正しいようだ。セブンイレブンでドアを開けられれば一礼。ミネラルウオーターを１本買い必ずサンミゲルビールの缶を１本。ポケットから１００ペソだけ。店内に座ってビールを飲み干し、ミネラルを買って帰っていく。近所のマンションかホテルに滞在しているのかもしれない。
　近辺のブガウ・乞食、セブンイレブンのガードも顔見知りのようだ。とにかくうつむきながら歩くのが好きなようだ。そのオヤジ殿何時も独りで歩いていたのだが、いつの間にかオネーチャンと一緒。オネーチャンは必ずオヤジ殿とお手て繋いでセブンイレブンへ。ガードが思わず「シャチョウ、バゴン　チックス　カ」オヤジ殿全くのチンプンカンプン。店内の客は笑っている。店内の状態をオヤジ殿察したのだろうが、何を言われているのかチンプンカンプンでキョロキョロ。
レジ近くにいたジャパユキ殿が通訳した。
オヤジ殿頭の先から足まで、真っ赤になり顔はまるで茹蛸。穴があったら入りたいくらいの表情。その表情を見たオネーチャン、何を勘違いしたかほっぺにチュー。オヤジ殿更に赤面。見捨てたものではない日本のオヤジ殿。一緒のオネーチャンも簡単な日本語を喋る程度。
オヤジ殿一生懸命に自分の意思を伝えたいのだろうが、オネーチャンの行動は全く正反対に動くようだ。傍から見ていて口を挟みたくなるほどオヤジ殿大苦戦している。
　一生懸命オヤジ殿話をしている。すべて日本語で。「ハイ」とだけ返事するオネーチャン。どうやらこのセブンイレブンで食べ物を買いたいようだ。一生懸命「ハングリーハングリーハングリー」と繰り返しているオヤジ殿。「ハイ」と答えるオネーチャン。最近のフィリピンのセブンイレブンにはランチボックスが並び始めてきた。種類こそ７、８種類であるが朝食用ばかりではなく、ランチ用も販売されてきた。肉まん、ホットドック、フィリピン名物様々な種類のおかずが入ったパンデサール等があるが、オヤジ殿ライスボックスを買った。チキンカツ弁当。オネーチャンはカップラーメン。フィリピンのセブンイレブンでは、店内で買ったものを食べる椅子テーブルが置いてあり、オヤジ殿はそのテーブルでおもむろにライスボックスを食べ始めた。一口口に入れたオヤジ殿、目を白黒して「何だこれ生だよ」電子レンジで暖めないと、全く食えたものではないのがフィリピンセブンイレブンの弁当。容器には電子レンジで暖めてからお召し上がりくださいと書いてあるのだが。どうやらオネーチャンは自分のカップラーメンを食べることに集中。オヤジ殿がこのような状態になっているにもかかわらず、お湯を注いだラーメンの蓋をしきりに開けたりふさいだり。待ちきれないようなのか箸を入れて舐めたりと超多忙中。オヤジ殿、オネーチャンへ暖め方をジェスチャーで示すが、オネーチャン全く理解できずに笑顔だけ。オヤジ殿顔が蛸顔になってきた。言葉が通じない歯がゆさ。全くその場を予知できないオネーチャン。レジ近くにいたガード様子を見ていて笑顔でそのランチボックスを電子レンジで温めてくれた。オヤジ殿ニコニコ顔で「あんたホントウニヤサシイね」温まったものを嬉しそうに頬ばり、食べ終えたさい「女房と別れなければよかった。何だこの女への役にもたたねーやないか」・・・・・・・・・・・・・・・・ブツブツと店から出て行った。