ポリーニ「ショパン 夜想曲集」


 ポリーニはピアニストにとって肝心のベートーヴェンのピアノソナタがダメなのでほとんど敬遠してきました。どのディスクも話題盤となるのでたまに試聴はしましたが細部の響きに拘りすぎて全体の構成の悪い変な音楽に私には聞こえました。

 ただ、最近録音したドビュッシーの前奏曲集やショパンのバラード集はポリーニの冴えたタッチのピアノが音楽の世界を隅々までクリアに表出していて初めてこの曲の本質を聴いたような新鮮な驚きがありました。ポリーニのピアノの音は本当に美しい。私にはポリーニ再発見、再評価でした。

 この夜想曲集も素晴らしい響き、音楽です。ピアノの音が磨き上げられてキラキラと光っています。スローテンポ、ミディアムテンポの音楽を雰囲気たっぷりに再現するのはポリーニが初めてではありませんが、激しい楽想の盛り上げ方、クリアな強音も含めた各曲の演奏、描き分けは天才だけがなし得る芸当です。毎日のように聴き惚れています。
 それと演奏内容には関係ないですが、最近のポリーニ盤はジャケットがとても素敵です。よいディスクであることを想像させるいい雰囲気の写真が使われています。

 夜想曲集はショパンの中では特に愛聴してきた音楽です。特にフランソワとピリス。この2枚があればもう十分で、これ以上のものは必要ないと思ってきましたが、新時代の名盤が生まれました。


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