7月2日から5日まで第21回東京国際ブックフェアが東京ビッグサイト西館で開催された。今年も見学したので簡略な感想を書いておく。
まず電子出版の展示から。
昨年の目玉は3Dだったが、今年はそういうものはなかった。しいてあげると4Kだ。パナソニックなどメーカーのほか徳島県のブースでも、「阿波踊り」の映像を流していた。3840×2160とハイビジョンの4倍の画素数で、たしかに高精細でリアルな画像だった。価格がどんどん下がれば普及するかもしれない。ハードメーカーにとっては、ディスプレイだけでなくカメラも編集機器もすべて4K用でないと使えないので、増収効果が大きい。
楽天Koboの今年の目玉は、アクアファダスという自分で電子書籍を無料で作成し、売ることができる(売上が上がってはじめて課金される)というシステムである。しかしいったいどのくらいそんな需要があるのだろうか。また無料とはいってもいろんなライセンス料を取られるというウワサを聞いた。
阿波踊りの4K画像
大日本印刷のブースで目玉を聞くと、ドットDNPという建物が地下鉄市ヶ谷駅近くに完成しhontoカフェという電子書籍体験コーナーがあるという話だった。一方、昨年3Dプリンターを出展していた凸版印刷は、「専門書の制作支援システム」が目玉ということで、よくわからなかった。バーチャルフィッティングという電子版着せ替えごっこのような展示があり、面白いことは面白いが、まあオモチャのようなものだった。
そんなことで、今年は電子出版はいまひとつだった。強いて言うなら、ボイジャーのブースで開催された福井健策弁護士のスピーチは聞かせる内容だった。たまたま通りかかり部分的に聞いただけだが、TPPの著作権への影響、たとえば「著作権法の非親告罪化」や「法定損害賠償」は日本の出版業界へのインパクトが大きそうだった。
出版梓会の展示
それにひきかえ紙の本のほうは、ちょっと復権してきた印象があった。
たとえば国書刊行会は昨年と同じく充実したタイトルが並んでいた。たとえば「映画の奈落」(伊藤彰彦 2592円)、「マーラー全歌詞対訳集」(須永恆雄 1944円)。
たまたまその隣が創元社だったが、こちらもなかなか充実していた。たとえば「米朝落語全集」(全8巻 各巻4860円+税)、「武器の歴史大図鑑」(リチャード・ホームズ編 12960円)、「死の帝国」(ポール・クドゥナリス 4536円)、「ことばと知に基づいた臨床実践――ラカン派精神分析の展望」(河野一紀 3456円)、「大正期怪異妖怪記事資料集成」(湯本豪一 48,600円)、「フィルムは生きている」(手?治虫 3456円)など。
ミネルヴァ書房も相変わらず良書が多い。たとえば「本屋さんのすべてがわかる」4冊シリーズ、「シリーズ・松居直の世界」、「池上彰の現代史授業」(8月から刊行予定 8巻)など意欲的である。
出版梓会は、有斐閣、幻戯書房からNTT出版、日外アソシエーツまで28社の出版社の共同出展でタイトルは「生きる力、本の力2014」だった。
毎年、楽しみにしている書物復権10社の会(みすず書房、岩波書店、東京大学出版会など)も充実していた。
トンデモタイトル本の幸福の科学出版は、この1年嫌韓・嫌中本が流行しているせいだろうが「中国と習近平に未来はあるか」「天に誓って『南京大虐殺』はあったのか――『ザ・レイプ・オブ・南京』著者 アイリス・チャンの霊言』」「朴槿惠韓国大統領 なぜ、私は「反日」なのか」などを並べていた。『南京大虐殺』は国際展示場の駅前でキャンペーンまで行っていた。
バンプレストという会社が、かなり大きなスペースをとっていた。展示していたのは、はずれクジなしの「一番くじ」という商品だった。てっきり書籍にクジをつけるのかと思ったらそうではなく、キャラクターグッズにクジをつけるという話だった。グッズの価格は500円から800円くらいである。客寄せが目的かと思う。そういえば講談社のブースでは恐竜の動く模型が人気を集めていた。頭をたたくと怒り、のどの下をなでると喜び鼻をなぜるとクシャミするという単純なものだったが、怒ったときの反応は迫力があった。客を驚かせるにはよいが、それだけである。
講談社の動く恐竜
最後に第48回装幀コンクールに触れておく。
「ギャートルズ1,2,3」(園山俊二 パルコ)と「ファッションフードあります」(畑中三応子 紀伊國屋書店)はどちらも祖父江慎、佐藤亜沙美の装幀。ギャートルズはザラ紙と白いアート紙の束(つか)が交互に出てくる。白のページには、蛍光インキのピンクとグリーンが使われていて効果的だった。「やがて秋茄子へと到る」(堂園昌彦 港の人 装丁:関宙明)と「京の和菓子帖」(日菓 青幻舎 装幀:須山悠里)はやさしい感じの装幀だった。最も感動したのは「高岡重蔵 活版習作集」(烏有書林 装幀:上田宙)だった。内容は著者が欧文組版をした作品集である。著者は1921(大正10)年生まれなので、昨年の刊行時点で82歳、それなのに「習作集」と名付ける奥ゆかしさ。
「ギャートルズ1,2,3」が東京都知事賞、「京の和菓子帖」が日本書籍出版協会理事長賞、その他は日本印刷産業連合会会長賞である。
応援演説する山内和彦氏。右は、切れてしまって申し訳ないが川野候補
☆ブックフェアとはなんの関係もないが、たまたま時期が同じころだったということで、選挙の話をひとつ。杉並区で区長選と区議補選が6月29日に実施された。わたくしはすぐろ奈緒さんの後任の川野たかあき氏をほんの少しだけ応援した。
区議選なので期間は1週間しかないが、フィナーレは荻窪駅南口だった。驚いたことに山内和彦氏が応援演説を行った。山内氏は「自民党で選挙と議員をやりました 」(角川SSC新書)の著者で、想田和弘監督のドキュメンタリー「選挙」「選挙2」の主人公である。この日も長男・悠くんといっしょだった。話を聞くと、川野候補とは宇都宮都知事選で知り合ったとのこと。いまは川崎ではなく江戸川区民なのだそうだ。
結果は残念ながら落選だった。投票率は28.7%という低さだった。
1 当選 はなし 俊郎 29,048
2 当選 つかはら 彩子 20,834
3 当選 上保 まさたけ 17,791
4 松尾 ゆり 13,050
5 太田 哲二 12,430
6 川野 たかあき 8,052
7 田代 さとし 6,232
以下4人
まず電子出版の展示から。
昨年の目玉は3Dだったが、今年はそういうものはなかった。しいてあげると4Kだ。パナソニックなどメーカーのほか徳島県のブースでも、「阿波踊り」の映像を流していた。3840×2160とハイビジョンの4倍の画素数で、たしかに高精細でリアルな画像だった。価格がどんどん下がれば普及するかもしれない。ハードメーカーにとっては、ディスプレイだけでなくカメラも編集機器もすべて4K用でないと使えないので、増収効果が大きい。
楽天Koboの今年の目玉は、アクアファダスという自分で電子書籍を無料で作成し、売ることができる(売上が上がってはじめて課金される)というシステムである。しかしいったいどのくらいそんな需要があるのだろうか。また無料とはいってもいろんなライセンス料を取られるというウワサを聞いた。
阿波踊りの4K画像
大日本印刷のブースで目玉を聞くと、ドットDNPという建物が地下鉄市ヶ谷駅近くに完成しhontoカフェという電子書籍体験コーナーがあるという話だった。一方、昨年3Dプリンターを出展していた凸版印刷は、「専門書の制作支援システム」が目玉ということで、よくわからなかった。バーチャルフィッティングという電子版着せ替えごっこのような展示があり、面白いことは面白いが、まあオモチャのようなものだった。
そんなことで、今年は電子出版はいまひとつだった。強いて言うなら、ボイジャーのブースで開催された福井健策弁護士のスピーチは聞かせる内容だった。たまたま通りかかり部分的に聞いただけだが、TPPの著作権への影響、たとえば「著作権法の非親告罪化」や「法定損害賠償」は日本の出版業界へのインパクトが大きそうだった。
出版梓会の展示
それにひきかえ紙の本のほうは、ちょっと復権してきた印象があった。
たとえば国書刊行会は昨年と同じく充実したタイトルが並んでいた。たとえば「映画の奈落」(伊藤彰彦 2592円)、「マーラー全歌詞対訳集」(須永恆雄 1944円)。
たまたまその隣が創元社だったが、こちらもなかなか充実していた。たとえば「米朝落語全集」(全8巻 各巻4860円+税)、「武器の歴史大図鑑」(リチャード・ホームズ編 12960円)、「死の帝国」(ポール・クドゥナリス 4536円)、「ことばと知に基づいた臨床実践――ラカン派精神分析の展望」(河野一紀 3456円)、「大正期怪異妖怪記事資料集成」(湯本豪一 48,600円)、「フィルムは生きている」(手?治虫 3456円)など。
ミネルヴァ書房も相変わらず良書が多い。たとえば「本屋さんのすべてがわかる」4冊シリーズ、「シリーズ・松居直の世界」、「池上彰の現代史授業」(8月から刊行予定 8巻)など意欲的である。
出版梓会は、有斐閣、幻戯書房からNTT出版、日外アソシエーツまで28社の出版社の共同出展でタイトルは「生きる力、本の力2014」だった。
毎年、楽しみにしている書物復権10社の会(みすず書房、岩波書店、東京大学出版会など)も充実していた。
トンデモタイトル本の幸福の科学出版は、この1年嫌韓・嫌中本が流行しているせいだろうが「中国と習近平に未来はあるか」「天に誓って『南京大虐殺』はあったのか――『ザ・レイプ・オブ・南京』著者 アイリス・チャンの霊言』」「朴槿惠韓国大統領 なぜ、私は「反日」なのか」などを並べていた。『南京大虐殺』は国際展示場の駅前でキャンペーンまで行っていた。
バンプレストという会社が、かなり大きなスペースをとっていた。展示していたのは、はずれクジなしの「一番くじ」という商品だった。てっきり書籍にクジをつけるのかと思ったらそうではなく、キャラクターグッズにクジをつけるという話だった。グッズの価格は500円から800円くらいである。客寄せが目的かと思う。そういえば講談社のブースでは恐竜の動く模型が人気を集めていた。頭をたたくと怒り、のどの下をなでると喜び鼻をなぜるとクシャミするという単純なものだったが、怒ったときの反応は迫力があった。客を驚かせるにはよいが、それだけである。
講談社の動く恐竜
最後に第48回装幀コンクールに触れておく。
「ギャートルズ1,2,3」(園山俊二 パルコ)と「ファッションフードあります」(畑中三応子 紀伊國屋書店)はどちらも祖父江慎、佐藤亜沙美の装幀。ギャートルズはザラ紙と白いアート紙の束(つか)が交互に出てくる。白のページには、蛍光インキのピンクとグリーンが使われていて効果的だった。「やがて秋茄子へと到る」(堂園昌彦 港の人 装丁:関宙明)と「京の和菓子帖」(日菓 青幻舎 装幀:須山悠里)はやさしい感じの装幀だった。最も感動したのは「高岡重蔵 活版習作集」(烏有書林 装幀:上田宙)だった。内容は著者が欧文組版をした作品集である。著者は1921(大正10)年生まれなので、昨年の刊行時点で82歳、それなのに「習作集」と名付ける奥ゆかしさ。
「ギャートルズ1,2,3」が東京都知事賞、「京の和菓子帖」が日本書籍出版協会理事長賞、その他は日本印刷産業連合会会長賞である。
応援演説する山内和彦氏。右は、切れてしまって申し訳ないが川野候補
☆ブックフェアとはなんの関係もないが、たまたま時期が同じころだったということで、選挙の話をひとつ。杉並区で区長選と区議補選が6月29日に実施された。わたくしはすぐろ奈緒さんの後任の川野たかあき氏をほんの少しだけ応援した。
区議選なので期間は1週間しかないが、フィナーレは荻窪駅南口だった。驚いたことに山内和彦氏が応援演説を行った。山内氏は「自民党で選挙と議員をやりました 」(角川SSC新書)の著者で、想田和弘監督のドキュメンタリー「選挙」「選挙2」の主人公である。この日も長男・悠くんといっしょだった。話を聞くと、川野候補とは宇都宮都知事選で知り合ったとのこと。いまは川崎ではなく江戸川区民なのだそうだ。
結果は残念ながら落選だった。投票率は28.7%という低さだった。
1 当選 はなし 俊郎 29,048
2 当選 つかはら 彩子 20,834
3 当選 上保 まさたけ 17,791
4 松尾 ゆり 13,050
5 太田 哲二 12,430
6 川野 たかあき 8,052
7 田代 さとし 6,232
以下4人