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パリ原則とやらを読んでみた1

2005-05-15 23:22:59 | 人権擁護法案
国内機構の地位に関する原則(パリ原則) 《外務省HP》

パリ原則英文版《国連人権高等弁務官事務所HP》

人権擁護法案の元となったのがこのパリ原則です。わたしが平均的日本人の常識でこの条文を読んでみたいとおもいます。趣旨はサヨクと議論するための準備です。
サヨクと議論するときの注意点は、細かい議論に誘導されないようにすることです。条文の細かい解釈に付き合わされては大事ですから。ちょうど「いわゆる南京事件」や「いわゆる従軍慰安婦」についても同様です。
以下、今回の人権擁護法案に即してざっくり考えてみます

【権限及び責務】
1  国内機構には,人権を促進し,擁護する権限が付与されるものとする。
2  国内機構には,できるだけ広範な任務が与えられるものとし,その任務は,機構の構成及び権限の範囲を定める憲法又は法律に明確に規定されるものとする。


※「国内機構」とは「人権委員会」のことです(以下、条文中の「国内機構」は「人権委員会」と読み替えます)。「人権委員会」の任務は「人権擁護法」に「できるだけ広範」かつ「明確に規定されるものとする」のだそうです。
※「できるだけ広範」かつ「明確に規定され」なければならないという条項が置かれたのは、「国内機構」の権限がその国の政権によって制限されないようにするためです。つまり「人権委員会」の権限が政府等によって不当に制約されないために、予めその職責を広範かつ明確に規定しろというのです。どうも今回の人権擁護法の議論とはかけ離れた印象を受けるのはわたしだけではないはずです。
※一方、サヨクは「できるだけ広範な任務が与えられるものと」するのだから、今回の人権擁護法案ではまだ物足りないと言っています(人権フォーラム21のHP)。つまり、一旦この法案を通した暁には権限拡大に動くということです。
※注意が必要なのは「人権侵害」の定義です。私人間における人権侵害についてはどこまで国家権力が介入すべきかについては、現在でも定まった考え方があるわけではありません。パリ宣言が「国内機構」の職責の中心を、「議会・政府等に対する法令等の改善勧告」としているのはそのためです。

【続き】
3  国内機構は,特に,次の責務を有するものとする。
(a)  政府,議会及び権限を有する他のすべての機関に対し,人権の促進及び擁護に関するすべての事項について,関係当局の要請に応じ,又は,上位機関に照会せずに問題を審理する権限の行使を通じて,助言を与えるという立場から,意見,勧告,提案及び報告を提出すること。国内機構は,これらの公表を決定することができる。これらの意見,勧告,提案及び報告は,国内機構のあらゆる特権と同様に,以下の分野に関連するものとする。
  (i)  人権擁護の維持及び拡張を目的とするすべての法規定又は行政規定並びに司法機関に関する規定。この関係で,国内機構は,法案や提案と同様に,現行の法律や行政規定を審査し,これらの規定を人権の基本原則に確実に適合させるために適当と考える勧告を行うものとする。必要な場合には,国内機構は,新しい法律の採択,現行の法律の改正及び行政施策の採用又は修正を勧告するものとする。
  (ii)  自ら取り上げることを決めたあらゆる人権侵害の情況。
  (iii)  人権一般に係る国内の情況及びより具体的な問題に関する報告書の作成。
  (iv)  国内で人権が侵害されている地域の情況について政府の注意を促し, そのような情況を終結させるためにイニシアティヴをとるよう要請し,必要な場合には政府の立場や対応について意見を表明すること。

※3(a)本文は重要な条文です。パリ宣言の想定する「人権委員会」の基本的性格がここに現れているからです。そのまま読むと翻訳調で分かりにくいので条文の骨格だけを示すと、「政府,議会及び権限を有する他のすべての機関に対し,………意見,勧告,提案及び報告を提出すること」が「人権委員会」の主要な職責ということとなります。つまり、パリ原則の想定する「人権委員会」の主要任務は、政府、議会等の国家機関に対して意見するということです。これは、多数者の支配する民主主義プロセスで生まれた法令等が少数者の人権を侵害する場合、それを改善するよう議会・政府等に勧告するということで、まことに結構なことです。このことは3(a)()で人権委員会の職責の具体例として冒頭に掲げられていることからも明らかです。
※もちろん、3の柱書は「特に、次の責務を有するものとする」としており、「特に」とありますから、政府等に意見する権限は必須であれど、それ以外の任務を持たせること自体は構わないということになります。しかし、その基本的性格を変更することはパリ原則の趣旨を逸脱することになるはずです。
※3(a)()ないし()は、一見サヨクの言うように、人権委員会が積極的に私人間の人権侵害に介入することを認めるかのごとき条項です。しかしこれはあくまで「人権委員会が議会・政府へ勧告する内容」の記載ですから、条項を独立して読むのは間違いです。人権委員会が私人間の人権侵害を調査できるとしても、その権限はあくまで議会や政府への勧告のためになされるものだということを忘れてはいけません。人権だから拡大解釈していいということにはならないのです。(続く)

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