ぴてのひとりごと

法務や福岡ソフトバンクホークスの話題など、徒然なるままに書き込んでいるブログです。

みずほ証券の誤発注問題

2005-12-18 23:55:26 | 法務
 みずほ証券の誤発注問題に関連して、個人で3億円とか20億円とか利益をあげた方もいらっしゃるようです。EDINETを見ると確かに個人の名前で大量保有報告書を提出されている方がいらっしゃいますね。しかし、結局現金での決済となったのに、株式を取得したと言えるのでしょうか?

 さて、この事案については、有名ブログで取引の有効性に関する議論が行われています(ふぉーりん・あとにーの憂鬱ビジネス法務の部屋)。つまり、今回のみずほ証券の誤発注に起因する取引については、民法第95条(錯誤無効)に規定により無効ではないか、というものです。
 私としては、悩ましいところですが、有効説をとりたいと思います。なぜなら、取引所を通じた取引は相手方を選ぶことができない匿名性ゆえに、決済の確実性を最大限確保すべきと考えるからです。取引所を通じた取引が相手方の主観的事情により決済されないとすれば、やはり取引所を通じた取引の信頼性の問題が出てくるのではないかと思います。
 確かに、今回の取引は事後的に見れば異常な取引であることは疑いないわけですが、必ずしもすべての投資家が板をみて売買しているとは限らず、異常を認識せずに取引した人の存在も否定はできないと思います(デイトレーダーでそんな人はほとんどいないでしょうが、デイトレーダーだけが市場で取引しているわけでもないでしょう。)。また、誤発注自体はこれまでも発生したきたことであり、なにが無効とすべきもので、なにが無効とならないのか明確な区別は難しいのではにかと思います。

 ただし、いくつかのブログを拝見する限り、取引所を通じた取引についても民法第95条の適用は排除されていないようです。今回の事案でみずほ証券の意思表示に要素の錯誤があったのは間違いありませんから、取引無効という主張にも十分な理由があると個人的には考えます。しかし、決済の確実性を重視する立場から、やはり市場参加者には高度な注意義務が課せられており、みずほ証券の重過失が認定されてもやむを得ないかと思います。
(といっておきながら、個人的には、価格と数量を間違えて入力するということは十分にありうることであり、これをもって重過失というのも酷なような気がします。)

 本事案は、限界事例に近いものであり、結論的にはどちらでも十分な理由があると思います。利益を返還する証券会社にとっても、無効としてもらった方がやりやすいという事情もあるようですし(こちら)。

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