ぴてのひとりごと

法務や福岡ソフトバンクホークスの話題など、徒然なるままに書き込んでいるブログです。

日本技術開発による新株予約権発行

2005-07-31 01:01:27 | 法務

 夢真HDにTOBをかけられている日本技術開発が新株予約権の発行を決議しました(こちら)。6月末の期末基準日を既に経過しているので(日本技術開発の決算日は6月末日)、TOBによる夢真HDの議決権増加を気にせず既存株主の委任状争奪戦に集中できるというわけなのですね。
 そこで、日本技術開発の株主構成を昨年の有報で調べたところ、個人が持株比率の約60%を占めているのですね。しかも、大株主の状況を見る限り、オーナー株主みたいな人はいなさそうです(有報では、上位10人に個人株主はいない。半報では、1人個人が上位10位に入ってきている。)。筆頭株主は、ビービーエイチ フォー フィデリティー ロープライス ストック ファンド。

 委任状争奪戦も相当激しいものになりそうですね。日本技術開発は長期にわたり業績が低迷しており、2005年4月28日の公表資料によると(こちら)、今期の通期業績見込みも当期純利益が310百万円の赤字(一株当たり純利益△44円13銭)です。この状況で、夢真HDの公開買付価格を(将来的に)上回らないまでも、大きく下回らないことを説明しないといけないわけですから大変だと思います。更に、棄権はほぼ反対と同じ効果を持ってしまいますから持株比率で60%を占める個人株主に積極的に議決権行使をお願いしないといけないことになりますね。

その他気づいた点をいくつか。

  • 株主総会で新株予約権発行自体も付議すると書かれていますが、どのような形で付議するのでしょうか。多分、定款変更だと思いますが・・・。
  • 夢真HDによる新株予約権譲渡を承認することにより、夢真HDの経済的利益に配慮する、というスキームは良く考えたなと思いました。
  • 逆に新株予約権を行使できない者として、夢真または夢真関係者に協力するものとして、当社取締役会が認めて者、が掲げられていますが、これは株主の予測可能性という観点からは評価が難しいところです。

会社法(備忘メモその2)

2005-07-28 22:42:38 | 法務
 とりあえず、株式、株券関係のつぶやきです。
  • 株券を発行する旨を定款で定めなければ、株式会社は原則株券不発行ということになるが(第214条)、現在の株券発行会社に関する経過規定はどこにあるのだろう?施行令に書かれるのかな。上場会社が一斉に株券電子化するのは2009年のはずだから、必ず経過規定はあるはずなんだけど、どこのあるのか分からない。いずれにせよ、来年の総会では「株券を発行する」旨の定款変更は必要なんだろうねえ・・・。 (整備法第76条第4項に経過規定があるようです。2005年8月9日追記)
  • 株券電子化制度(株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律)と株券不発行制度との関係が良く分からない。
  • 名義書換代理人の名称が「株主名簿管理人」に変った(第123条)。これも形式のみだけど、来年の総会で定款変更が必要だね・・・。
  • 「一問一答 新・会社法」P301では、譲渡制限株式の譲受人からの承認請求が名義書換に一本化された、と書いてある。しかし、第134条ただし書き、第137条を見ると依然として「譲渡等承認請求」と名義書換請求が併存しているように読めるのだが・・・。

株式買取請求権

2005-07-23 22:40:31 | 法務
 立法担当官の書いた会社法の解説書「一問一答 新・会社法」(こちら)、アマゾンではすでに売切れのようです。

 この「一問一答 新・会社法」のP222に次のような記述があります。
 現行法では、株式買取請求権行使後の請求の取下げについては特に制限がなく、近時、一部に株式買取請求権の濫用、たとえば、とりあえず株式買取請求権を行使し、その後の株価の動向等を見ながら、市場で売却した方が裁判所が決定する価格より有利と判断した場合には、請求を取り下げて市場で売却するなど、投機的に株式買取請求権を行使するような事案が認められるとの指摘がされている。
 そこで、会社法では、株式買取請求権行使後の請求の取下げについては、当該株式会社の同意を要するものとしている。
 個人的な感想に過ぎませんが、確かに株式買取請求権をうまく使おうという動きは見られるような気はします。投資家サイドから見れば、少なくとも適時開示直前の株価での買取りは保証されているわけですから、一種のプットオプションが無償で交付されたことと変らないわけで、これを使わない手はないということでしょうね。

 個人的にもうひとつ考えているのは、株式買取請求権行使に際してはボリュームディスカウントを考慮されないということに投資家サイドが着目しているのではないかということです。つまり、市場では売り切れないand/or市場で売ると値崩れを起こしてしまうほどの量であっても、なんらディスカウントを考慮せずに確定価格で売却できる可能性があります。

会社法(備忘メモその1)

2005-07-21 22:35:53 | 法務
 会社法も無事成立し、立法担当官の解説書も出版されました。書店では「会社法フェア」というのもやっているようです。文書株式担当者を始めとする法務担当者は当然無関心ではいられないわけで、私も遅まきながら解説書と法文の読み込みを始めました。規則類もいろいろ変えなきゃいけなそうですね。定款、取締役会規則、株式取扱規則、・・・。

 以下は、半分個人的な備忘メモです。用語の定義編から。

子会社
議決権比率だけではなく、実質支配基準も採用することが明確になりました。詳細は、法務省令のようです(2条3号)。

公開会社
非譲渡制限会社のこと(2条5号)。上場会社のことではない。もっとも、上場会社でない公開会社というのは実際にはグリーンシート銘柄くらいなものでしょうけど。

委員会設置会社
「等」が外れたようですけど、なぜでしょう?(2条12号)

事業報告
営業報告が事業報告と名前が変った(435条2項)。これによって、営業報告書も事業報告書と名前が変るのでしょうね。多くの会社では、任意の株主通信を「事業報告書」と称していたと思うのですが、これからはどのように言えばいいのでしょうか?

計算書類
貸借対照表、損益計算書及び株主持分変動計算書(法務省令で追加予定)をいい(435条2項)、事業報告が計算書類に含まれないこととされた。また、事業報告が会計監査人の監査対象外となった(436条2項)。

とりあえず、目に付いた部分をメモしました。

会社は誰のものか

2005-07-19 12:33:08 | 経営、経済
 昨日本屋をのぞいてみると、岩井克人先生(こちら)の新刊、「会社はだれのものか」(こちら)が発売になっていました。

 岩井先生は以前から株主主権論は誤りであることを会社のヒトとモノの二面性から強く主張されておられます。今回の著作は、その延長線上に立ち、昨今の敵対的買収の動きも踏まえて、金融の役割、CSRについてまで触れ、最後に「会社は社会のものである。」と結論づけています。非常に参考になる一冊ですので、是非ご一読をお勧めします。

 裁判所は「会社価値=株主価値」を当然の前提として個々の判断を出しているようですが、その前提自体が必ずしも絶対ではないのだ、ということをもう一度考え直してみる必要があるのかもしれません。