ぴてのひとりごと

法務や福岡ソフトバンクホークスの話題など、徒然なるままに書き込んでいるブログです。

相続問題

2007-05-27 22:58:43 | 法務
 また、久しぶりのエントリーになってしまいました。
 決算短信と事業報告が終わってホッとしていたのもつかの間、招集通知の発送と想定問答集で忙殺されてしまっています。

 さて、株主さんにとっては、総会よりも興味があるのが配当。この配当でときどき問題になるのが相続です。
 個人株主の方に対する配当が(訴訟での争いになるほど)多額になることはあまりないのですが、相続問題でこじれている場合は、当事者にとって金額の多寡はあまり関係ないので厄介です。
 相続問題については当事者でない第三者としては、紛争に巻き込まれないためにも可能であれば供託したいのですが、供託原因がないので供託もできません(最判昭29.4.28では金銭債権は法律上当然に分割されて、共同相続人が相続分に応じて承継するとしている。そのため、当事者間で実際に争いがあるにもかかわらず、債権者不確知にならない=供託できない。)。

 配当は金額がそれほど大きくないのでまだいいのですが、これが在職中に他界された方の退職金をめぐる紛争になったりすると大変です。

 相続問題は、紛争に直接関係のない第三債務者にかなりの負荷をかけますので、民法(又は民事執行法)を改正して、債権者の相続発生も権利供託の原因にしてもらえないかなあと個人的には思っています。

非上場会社株式の売買

2007-03-19 00:31:10 | 法務
 少し前の話ではありますが、日興コーディアルの上場維持を東証が決定しました。詳細をよく知らないのですが、結果においては妥当ではないかと思います。

 私の個人的な意見では、現在の日本の状況を考えれば、上場廃止という決定自体が株主や市場に与える影響の大きさを考慮すれば、ライブドアの場合であっても上場廃止をすべきでなかったと思います。

 上場廃止をされてしまうと個人株主にとって株式を売却をする手段を事実上失ってしまう現在の制度の妥当性に疑問を持っています。米国のピンクシートのように、非上場株式でも売りたい人と買いたい人が勝手に売買できるような場があった方がよいのではないでしょうか。グリーンシートがその役割を果たすべきだと思うのですが、なにか法律上の制限があるのでしょうか。

 いずれにしても、非上場株式を取引できる場というのは、重要だと思っています。

役員等の責任の不真正連帯債務性

2007-02-25 23:06:10 | 法務
 全株懇の定時会員総会報告書に東大の江頭教授の「役員等の責任の不真正連帯債務性」という講演録が掲載されていました。この問題は、弥永教授が会計監査人の責任限定契約を締結していないと、仮に社外取締役と責任限定契約を締結していても会計監査人から求償権の行使を受けてしまうことになり、結局社外取締役が責任限定の効果を得られないのではないかという形で指摘していたのではないかと思います(不真正連帯債務における免除の相対効)(ビジネス法務の部屋のこちらの記事をご参照)。

 弥永教授の問題提起に対しては、江頭教授は立法趣旨から考えて責任限定契約には絶対的効力があると説明されています。具体的には、取締役の責任については①損害填補機能、②抑止機能とがあり、役員等の責任の制度が②抑止機能を主たる制度目的であると考えると、必ずしも会社の損害を全額回復させる必要はなく、不真正連帯債務の免除に絶対効を認めても、制度趣旨を損なうことにはならないとの主張です。

 確かに、社外取締役の責任限定契約に絶対効を認めないと、あらかじめ社外取締役の責任を限定しておいた制度趣旨が没却されることになりますので、江頭説が妥当なような気がしますが、判例はどう解釈するのでしょうか。興味がありますね。

株券電子化と外国人個人株主

2007-02-19 00:53:20 | 法務
 2009年1月(予定)をもって株券の一斉電子化移行が行われ株券が無効となるわけですが、ひとつ疑問に思っているのは外国人の個人株主の取扱いです。

 外国で現物株を上場している場合はもちろんですが、発行会社が海外上場していなくても株主が株券を海外に持ち出すことはありうるわけで、このような場合にどのように処理されるのか多少気になっています。まあ、そんなに対象となる人の数も多くないでしょうから大きな問題にはならないのでしょうけれども、そもそも海外居住者がほふり参加者である日本の証券会社に口座を開設することができるのかという点も含め、意外と難しい問題なのではないかと思っています。

サッポロHDへの買収提案

2007-02-16 23:59:16 | 法務
 スティール・パートナーズがサッポロHDに買収提案を行いました(こちら)(こちら)。これには正直驚きました。スティール・パートナーズは買収防衛策の廃止について株主提案を行っており、まず外堀を埋めてから次の手を打つのかと思っていたら、いきなり本丸を攻めてきたわけですね(スティール・パートナーズの提案は友好的買収の提案なので「攻める」という表現が適切かどうかは分かりませんが。)。

 ちなみに、スティール・パートナーズの株主提案に対しては、サッポロHD側から買収防衛策について株主総会に付議する形で応えました(こちら)昨今の買収防衛策に関する流れからみればやはり総会付議が無難と思われますので、株主提案を突っぱねるのではなく、それを受けて会社が自ら総会に付議したのは妥当で合理的な選択だったのではないかと思います。

サッポロHD:買収防衛策に対する株主提案

2007-02-02 00:34:19 | 法務
 サッポロHDの定時株主総会に向けて、スティールパートナーズが買収防衛策に関する株主提案をしたとのことです(こちら)。

 二つの議題が提案されているのですが、そのうちのひとつとして、「議題1 「当社株券等への大規模買付行為への対応方針」の廃止の件」なるものが提案されています。これは、取締役会決議で導入された買収防衛策を株主総会決議で廃止しようとするものですが、事務方としてはそもそも適法な株主提案として取り扱うべきか否か悩ましいところです。

 本来、公開会社の株主総会は、法令又は定款で定められた事項のみを決議するものなのですが、多くの会社が任意に株主総会で買収防衛策の承認を求めていますし、法務省、経済産業省の指針もそれを容認している(少なくとも積極的に否定はしていない)ようなので、取扱いに悩むところです。

 どのように処理されるのか、興味ぶかいですね。ISSはどんな意見表明をするんでしょうかね。

裁判所の閉庁日

2007-01-22 00:23:34 | 法務
 裁判員制度の導入にあたり、サラリーマン等の勤労者への負担がクローズアップされているようです。特に、裁判員は原則として拒否できない仕組みになっているので、その分影響が大きいようです。確かに、幹部や中堅の従業員が何日も連続で会社を欠勤せざるを得ないような状況は困るでしょう。1日で評議が終わればいいですが、何日も続くようだと本人にも会社にも負担が大きいと思います。

 個人的に気になるのは裁判所が平日にしか開廷しない点です。拒否権なく裁判員になることを義務付けるのであれば、忙しい人にもできる限り負荷がかからないように、土日に開廷するというのもひとつの選択肢だと思うのですが、どうでしょうか。

株券電子化

2007-01-16 22:13:50 | 法務
 今日、会社の帰りに本屋に立ち寄ったところ「株券電子化のしくみと対応策」(こちら)という本を発見したので思わず買ってしまいました。非常に丁寧で分かりやすくていい本だと思います。

 株式担当として常々感じるのは、弁護士さんを含めて「ほふり」の制度が意外と知られていないということです。したがって、株券電子化についてもあまり知られていないのではないかと恐れています。今まで株券電子化について丁寧に説明している書籍はあまり見たことがなかったのですが、これからこういう本がもっと出てくることを期待しましょう。

 この株券電子化で一番トラブルとなる可能性を秘めている人は、通常株式取引をやらない人だと思います。特に、親から株式を相続したけれども、株券だけ持っていて名義書換(及び住所変更)をしていない人というのは問題となる可能性があります。株式担当としてはせめて名義書換だけでもしておいていただきたいのですが、こういう方については発行会社としても連絡の取りようがないので困ってしまいます。

 2009年1月に予定されている株券電子化一斉移行まであと2年しかありません。頭の痛い問題ですね。

会社法の基本を問う

2006-12-19 23:23:00 | 法務
 元商法の立法担当官で早稲田大学の稲葉威雄教授が会社法批判の書籍を出版されています。その名も「会社法の基本を問う」。会社法の立案方針、つまり立法論としてかなり熾烈な批判をなさっています。

 序文では、「今回の会社法立法は、あえていえば日本の最近の精神的退廃の状況を表しているという思いもする。」とまで書かれており、こんなにきつい表現の法律関係の書物というのはなかなかないのではないでしょうか。「企業会計」6月号の稲葉教授と元会社法立法担当官の郡谷さんの対談と合わせて読むとなかなか興味深いです。

創業家出身会長の解任

2006-11-21 23:03:10 | 法務
 SIIで知られるセイコーインスツル株式会社の取締役会は、創業家出身の会長兼社長代行を解任したそうです(こちら)。
 セイコーインスツル株式会社は非上場会社のため、この会長兼社長代行を始めとした創業家がどれくらい株式を保有しているのか分かりませんが、非上場であることから推測するとおそらくは創業家が株式の過半を持っていたのではないでしょうか。役付取締役や代表取締役を取締役会において多数決で解任することは会社法上可能ですが、取締役の選任は株主総会において株主の多数決で行われるわけですから、本当に思い切ったことをしたものです。SIIのリリースでは、解任理由として「独断的な経営手法によって合理的な経営執行を怠」ったとまで言っているので、内部では相当な軋轢があったのでしょうね。