ぴてのひとりごと

法務や福岡ソフトバンクホークスの話題など、徒然なるままに書き込んでいるブログです。

イーホームズの行為の評価

2005-11-27 13:00:10 | 法務
 現在、建築物の構造計算書偽造問題が非常に話題となっています。この問題は、建築基準法に基く指定確認検査機関である(株)イーホームズの情報提供により発覚したものです(こちら)。報道等によると、イーホームズの内部監査の過程で発見されたとのことです。

 このようなイーホームズの行為は高く評価されるべきだと考えますが、そのような論調はあまりなく、イーホームズの責任を問う声ばかりが聞こえます。イーホームズの行為により、人命に影響が出るという重大な結果が発生する前に問題が発覚したのであり、これ以上問題となる建築物が増えることを防ぐことができたのです。イーホームズの検査に問題があったかどうかについては、これからの事実関係の調査を待たなければなりませんが、少なくともこのような適切な行為をとったことに対する正しく評価されなければなりません。

 「ビジネス法務の部屋」で山口弁護士も書かれていらっしゃいますが、イーホームズの行為は社会に見える形で肯定的に評価されるべきです。もし、イーホームズが確認検査機関としての指定を取り消されたり、多額の賠償請求により倒産するなどの重大な結果になった場合、社会に重大な悪影響を及ぼすことは必然です。正直に公表しても、隠していたことが発覚しても、その結果同じだとすれば、自然と隠す方向に走るのが普通でしょう。もし、今回のケースにおいてイーホームズが事実を隠していたらもっと重大な結果になっていたことは明白です。

 そもそも今回の事件はイーホームズの内部監査によって発見されたものであると言われており、内部監査の結果に基いて執行部が適切な対処をとったわけであり、その範囲において内部統制は有効に作用していたのです。そもそも内部統制とは

『「効果的・効率的な業務活動」、「財務会計報告の信頼性」、「コンプライアンス」という異なる目的の達成に関して「合理的な保証」を提供することを意図しており、事業体に属する人々(取締役、企業経営者、従業員の全員)が実施しなければならないプロセスである。』と定義されています。
(赤字強調はぴてが付加。Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission,「Internal Control ― Integrated Framework」, 1992 年9 月、経済産業省 企業行動の開示・評価に関する研究会「コーポレートガバナンス及びリスク管理・内部統制に関する開示・評価の枠組について」2005年8月)


 つまり、内部統制とはあくまで「合理的な保証」を得ることが目的なのであって、仮に有効に機能していたとしても不正が完全にないことを保証するものではありません。ましてや、今回の事件はイーホームズの故意による不正行為ではなく、せいぜい過失にとどまるものと考えられ、しかも重大な結果に至ることを内部監査によって防いだのですから、この行為は賞賛に値するものです。
 Harvard Law SchoolのProf. J.Mark Ramseyerが以前公演でおっしゃられていましたが、「犯罪の最適発生頻度はゼロではない」のです。完全に不正も過誤も発生しない会社は存在せず、その発生を抑えるための合理的な努力というのはなにかという観点から問題を考えるべきではないでしょうか。
 
 以上の点を十分に考慮して、イーホームズの行為が正当に評価されることを強く望みます。