ぴてのひとりごと

法務や福岡ソフトバンクホークスの話題など、徒然なるままに書き込んでいるブログです。

剰余金払戻規制の目的とは?

2005-11-23 01:05:26 | 法務
 商事法務の1746号、1747号に法務省民事局付の郡谷検事、岩崎検事による「会社法における債権者保護」という論文が掲載されています。
 その中で剰余金の払戻規制の意義について論ぜられています。「債権者が弁済を受けることができる権利の保護」という観点では払戻規制は限定的な意味でしか債権者の保護は図られていない。むしろ、債権者と株主との利害調整として存在意義がある。という趣旨の主張がなされています。
 この主張は非常に説得力があると思います。従来から私もなぜ(現行商法の)配当規制に債権者保護(=債権者が弁済を受ける権利の保護)の機能があるのか不思議に思っていました。
 債権者保護は、会社が債権の支払いを停止したとき、つまり支払停止、支払不能に陥ったときに問題となります。しかし、配当規制は、継続企業の前提に基いて作成された計算書類を基礎としています。債権者保護が問題となるのは継続企業の前提が崩れたときであるにもかかわらず、配当規制は継続企業の前提に基いて作成された計算書類を基礎としているのです。通常、清算価値は、継続企業としての価値よりもはるかに低いですから、配当規制は債権者保護に対し極めて限定的な効果しか持たないと解するべきでしょう。つまり、計算書類上配当可能利益があったとしても、資本相当額が清算価値ベースで会社に残っていないケースも多いのではないでしょうか。
 それよりも、債権者と株主の利害が衝突する会社財産の払戻しに強行法的に規制を加えることにより、会社及び債権者の払う(不毛な)モニタリングコストの低減を図ったというこの論文の主張の方がはるかに現実に適合していると思います。