ぴてのひとりごと

法務や福岡ソフトバンクホークスの話題など、徒然なるままに書き込んでいるブログです。

平成電電匿名組合

2005-11-15 22:55:00 | 法務
 民事再生法の適用を申請した平成電電に関連した匿名組合契約が問題になっているようです。別会社である平成電電システムと平成電電設備が一般投資家からの出資を匿名組合契約で受け入れたうえで、平成電電に対し設備をリースしていたところ、平成電電の民事再生法申請に伴い、出資金を返還できなくなったというのが事実関係のようです。

 匿名組合については出資者の有限責任と税務上のパススルーという程度の知識しかないのですが、匿名組合を利用して不特定多数からの出資を受け入れていたというのには驚きました。詳細な事実関係がよく分からないので詳しい論評は避けたいのですが、いくつか疑問点を提示しておきます。

1.営業者である平成電電システム等の善管注意義務は?
 そもそも匿名組合の営業者が善管注意義務を負うのか条文上明確ではありませんが、匿名組合は組合の特則であると理解すれば、矛盾しない範囲で組合の規定が適用されると考えられ、営業者が善管注意義務を負うことになりそうです(民法第671条、同法第644条)。
 以上の前提の下で考えたとき、営業者は十分な善管注意義務を果たしたのでしょうか。平成電電から財務状態等について適切な情報提供を受けていたのか、平成電電の財務リスクについてどう評価していたのか興味があるところです。
 もっとも営業者である平成電電システムの善管注意義務違反が認められたとしても同社に財産が残っているとは思えず、あまり出資者の救済になりませんが。

2.平成電電の責任は?
 平成電電と平成電電システム等は別法人であり、しかも資本関係もないようですので、原則として平成電電が本件匿名組合契約に基いて出資者に責任を負うことはなさそうです。しかし、「平成電電」の名称が付いており、しかも報道によると平成電電のロゴを使って匿名組合の広告をしていたとのこと。おまけに平成電電の施設内で平成電電の従業員が匿名組合の説明をしていたという報道もあります(SPA!2005年11月22日号)。この場合、商法第23条(の類推適用)に基く名板貸人の責任を負う可能性はないでしょうか。
 もっとも、匿名組合契約の中で営業者は平成電電と異なる別法人であることを明確にしているでしょうから、仮に出資者が営業の主体を誤認していたとしても、重大な過失があると認定される可能性があり、商法第23条に基いて平成電電の責任を追及するのは難しそうですね。