フラワーガーデン

ようやく再会したハルナとトオル。
2人の下す決断は?

淡雪通信vol.21(F2開店)

2006年03月27日 22時26分15秒 | 最終章 エターナル
最終回が近づくにつれ、こんなにも沢山の人に読んで頂けるなんて……もう泣きそう。
本当に、感謝しています。
実は今日、「フラワーガーデン2」(http://plaza.rakuten.co.jp/flowergarden2/)を楽天広場に立ち上げました。
トオル君の出生の秘密が明らかになります。
アリシア、ジョージ、キンケイド、トオル君の両親が出てきます。
第一部の伏線を拾い捲る予定です。
良かったらお越し下さい\(≧▽≦)/


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ハルナの幸せ

2006年03月27日 01時16分53秒 | 最終章 エターナル
パパの仲裁のお蔭で、カズトとトオル君の2人は無事医務室送りとなっていた。

当のパパは「おー!痛……!」と言いながら、私が差し出した濡れタオルを左頬に当てていた。

仲裁に入ったパパが視界に飛び込むなり、トオル君の拳は寸前でピタッと止ったけど、カズトの方は勢い止らず、パパの左頬を強打してしまっていた。

「カズトのヤツ!どさくさに紛れて、僕のこと3度も『お父さん!』と呼びやがった!!!!」
「パパ、それ怒りどころが違うから……(ってゆーか、殴られた事を怒ろうよ……)」

私のツッコミを無視して、パパは私をじっと見つめた。

「しかし、あれだね……。トオル君だっけ?彼のあの技はどこで習ったんだろうね。空手とも柔道とも違っていた……。あれは確実に相手の急所を捕え、人を殺傷する事を目的とした技だった……。背筋が凍ったよ。彼が手加減しなければ、カズトはあの世送りだったかもしれないね……」

私は、まるで舞うようにカズトの拳をすり抜けるトオル君のしなやかな動きを思い出していた。

美しいと思った……

でも、今、パパの話を聞いて、彼はどうしてそんな技を身に付けなくてはならなかったんだろう……そう思うと悲しくなった。

私が、彼のことを考え、物思いに浸っていると、パパが徐に口を開いた。
「君はあの少年と付き合っていたのか?」
突然のパパの質問に一瞬戸惑ったけど、私は静かに頷いた。
「だけど、君のお腹の子の父親はカズト……。僕はその意味をどう取ったらいいのかな?」

パパは私の表情を読み取ろうとするかのように、じっと私の顔を見つめた。
私はパパの目線から逃れるように唇を固く結ぶと、俯いた。

「僕は神様でもなければ、裁判官でもない。だから、誰がどう悪いのか裁くつもりも無い……。だけど、君の父親として、心から君の幸せを願っているんだよ」
パパの優しい言葉に涙が溢れそうになった。

「……君は、あの少年を愛しているんだね?」
「あ……。私……」
「『世間体』とか、『こうしなくちゃならない』とかではなくて、きちんと自分の心を見つめるんだ。……結婚を侮っちゃいけないよ」

パパは私の頭を優しく撫で、少し開いた扉の向こう側に向かって大声で話し掛けた。
「そう言う訳で、式場関係者と招待客には、僕と和明から上手く話をしておくから、後は君達3人でよく話し合いなさい!」
扉がギィーっと開くと、タオルを左頬に当てたトオル君とカズトが入ってきた。

パパとカズトとトオル君の3人は、お互いタオルを左頬に当てながら一瞬目線を合わせると気まずそぉ~な顔をした。

「もう一度殴り合いをしたら、君達に娘はやらんぞ!」

パパは睨みながら2人の頭を小突くと、式場へと足早に走っていった。



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略奪

2006年03月26日 07時22分03秒 | 最終章 エターナル
トオル君は、温かくてその大きな両手に私の手を包んだまま、目を瞑り、額にあてた。
まるでお祈りでもしているかのように……

「君を……愛している」

トオル君の想いを振り払おうと、強く首を振り、懸命に手を引くのに……
それでも、彼の揺ぎ無い瞳の前に、私の心が捕まってしまう。

「ハルナ……、もう嘘はつかないで。今、君が本当のことを言わなかったら、僕たちは一生、お互いの心を求めて彷徨うんだ。……そんな運命を、君は黙って受け入れるつもりか!?」
「出て行けよ!コソドロ!!」

突然、扉が大きく開いたかと思うと、烈火の如く怒りを露わにしたカズトが部屋へ飛び込んで来た。
トオル君の襟を掴み持ち上げたかと思うと、次の瞬間、彼の頬に拳を振り上げた。

「トオル君!!」

壁に打ちつけられたトオル君の唇から血が流れ落ちていた。

「大した心臓だな!?オレ達の結婚式に来るなんてな!だが、お前を呼んだ覚えはねぇぞ!!」

トオル君は切れた唇から、流れ落ちる血を袖で拭いながら立ち上がった。

「みっともねぇことすんなよな!」
「……みっともなくてもいいさ。今、伝えなければ、ハルナを一生失ってしまうんだ」
「ヒトの女を気安く呼び捨てにしてんじゃねぇよ!!」

カズトの放った拳が再度トオル君の頬を打ち、彼はガラガラとパイプ椅子をなぎ倒しながらその場に倒れこんでしまった。
それでもトオル君は、カズトを睨みつけながら、ユラユラと立ち上がった。

「トオル君……!カズト、止めて!!」


いつの間にか、控え室には、式場のスタッフや、数人の招待客が入って来ていた。
「何だ?」
「どうしたんだ?一体……」
「おい!誰か警備員を呼んで来いよ!!」

騒然とした控え室は、たちまち新たな見物客を呼び込んでしまっていた。
三度、カズトの放った拳に、私は悲鳴を上げ、目を瞑った。

「殴られっぱなしじゃ、割に合わないな……」

そう言うと、トオル君はカズトの拳をヒラリと交わし、驚いて振り向くカズトの顔面に右ストレートを放った。
カズトは強く床に打ち付けられ、切れた口の中から出た血をぺっと吐き出した。
「このやろぉ!!!」
掴み掛かろうとするカズトの手を掴んだかと思うと、トオル君はその手を捩じ上げ、くるんとカズトの体を宙に浮かせ、床に打ちつけた。

「止めて!二人とも!!トオル君!!カズト!!」
泣きながら叫ぶ私の声は、ざわざわと集まった野次馬の声に掻き消された。

「ごめんね!ハルナ!!」
いつの間にかトモが泣きながら背後から私を抱き締めていた。

「私……、私、トオル君から、電話を貰ってたの……。
『片岡と話がしたいから住所を教えてくれ』って……。
でも、私、『もう遅いよ。諦めた方がいいよ』って教えなかったんだよ。
そしたら、トオル君、『じゃ、仕方ないね』って笑って、『本意じゃないけど、結婚式場まで略奪に行くしかないか……』って言ってて……。
でも、まさか本当になるとは思ってなくて……」

動揺するトモを抱き締めながら、私は顔を上げた。

そして、次の瞬間、ぞくっとした。
カズトの拳を紙一重で交わし、赤子の手を捻るかのようにカズトを扱うトオル君の姿に慄然とした。
私は、トオル君のその訓練された無駄の無い動きに鳥肌が立ち、震えた。

「止めさせなければ……」
パパの声が背後でしたかと思うと、素早く二人の間に割って入り、「ここまでだ!」と叫び、2人の拳をその腕で受け止めていた。



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引き寄せる手

2006年03月25日 00時04分34秒 | 最終章 エターナル
夜景が自慢のホテルでの披露宴が始まった。
招待客は東京の夜景を堪能しつつ、ホテル自慢の料理に舌鼓を打ち、会話に花を咲かせていた。
そうした中、司会進行も滞りなく進み、披露宴は終始和やかな雰囲気に包まれていた。

「ご夫婦で……」
「ご新婦様には……」
「お若い二人が……」
「夫として、妻として……」

祝福のスピーチを聞く度に、私はカズトの妻になるのだと言う責任の重さを強く意識し始めていた。
次第に冷たい汗が体を伝い、音と言う音が遠のいて行く。

タイミング良く、花嫁のお色直しを告げる司会の言葉にほっとし、介添さんに付き添われて席を立った。
「少し、横になって来いよ」
ヒソヒソ声で、体を気遣ってくれるカズトの優しさにそっと笑顔を返した。

あの日の電話以来、ずっと何かを言いたそうにしていたトモの横を会釈しながら通り過ぎ、足早に控え室を目指した。

控え室に入るなり、お色直しのドレスを着ている私の顔を見ながら、介添さんが心配そうに声を掛けてきた。

「まぁ……。大丈夫ですか?お顔が真っ青ですよ」
「……大丈夫です。でも……、5分だけ、横になってもいいですか?」

私はコルセットを緩め、ハイヒールを脱ぐと、予め持ち込まれていたベッドに横になった。
「妻……かぁ」
今日は、精神的にちょっと不安定かもしれない。
「妻」と言う司会や参列者さんからの言葉に、心が動揺する。

じんわりと滲む涙を慌てて拭いていると、突然、控え室に流れているクラシック音楽が耳に入ってきて、私は飛び起きた。

「美しく青きドナウ……」
堪らず涙が溢れ出た。

「トオル君……トオル君……」
小さな声で呟き泣いていると、目の前にすっと白いハンカチが差し出された。
まさか人がいたなんて……。
聞かれただろうか……。

ドキドキしながらも、「有り難うございます」とお礼を言い、何とかこの場をやり過ごそうと、ハンカチに手を伸ばした瞬間、その手は私の手を強く握り締めた。

「泣き虫で嘘つきな花嫁さん……。このワルツに想い出でもあるの?」

その聞き覚えのある声に驚き、顔を上げた。

「ト、トオル君!どうしてここに……」
息が止り、言葉が喉の奥に引っ掛かる。
「アメリカに帰るって……」

トオル君は、片膝をつき、私の手を取ると真剣な眼差しで手の甲にキスをした。
「君を取り戻しに来た」
トオル君の言葉に驚き、強く首を振ると、私は手を引こうと力を込めた。
だけど、彼はより強い力で私の手を握り締め、決して離してはくれなかった。

私は、泣きながらトオル君の指をひとつひとつ離し、解こうとした。
「だ、だめだよ。トオル君……。私と、トオル君は、きっと結ばれない運命だったんだよ」

トオル君は、迷いの無い強い瞳で私を見つめると、両手で私の手を包み込んでしまっていた。
「僕は、そう言う運命と死に物狂いで戦うつもりだ。僕はもう絶対に君を諦めない。
君が『YES』と言うまで、何度でも言うよ。
……僕と結婚して欲しい」




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受難の花婿

2006年03月24日 10時49分35秒 | 最終章 エターナル
髪を結い、生まれて初めての化粧をし、生まれて初めてのウェディングドレスに袖を通した。

ただでさえ慣れない雰囲気にそわそわしているのに、招待客のざわざわとした声が控え室にも届き、より一層私を落ち着かなくさせる。

「まぁ!まぁ~!!なんてお若くてお美しい花嫁様なんでしょう!!」
着付けとメイクをして下さったスタッフの人達から、一斉に感嘆と溜息が漏れる。

「あ、有り難うございます……」

履き慣れないハイヒールで、ドレスの裾を踏まないように気を付けて歩く。
ホテルの中を移動しながら、恥かしくて心なしか俯き加減になってしまう。

「まぁ~、綺麗ね~!」
「お人形さんみたい!」
「若い頃の私みたいだわ~」

お約束の賛辞を受けながら、何とかホテル内にある教会の入り口に辿り付くと、パパが目を潤ませて立っていた。

「綺麗だよ、ハルナ……。くそっ!和明のヤツ!!」
「パパ……、それカズトのお父さんの名前だよ?!」
「あ!そうだった……。カズトのヤツ!!」

パパは、私が腕をそっと掴むと、ぶわっと涙を浮かべ、また「くそっ!!」と呟き、目頭をハンカチで抑えた。

教会への扉が開き、ロボット歩きのパパの歩に慌ててツーステップで合わせる。

歩みを止めると、試着の時、「燕尾服なんて、七五三以来だ」と笑っていたカズトが、背筋を伸ばして微笑んで立っていた。

二人は一礼すると、パパは私の手をカズトに渡した。

外国人の神父さんのたどたどしい日本語による、厳粛な式が始まった。
賛美歌に、誓いの言葉に、誓いのキス……
パパの「ちくしょう!」と小さく呟いたつもりの声が教会にこだまし、参列者の泣き笑いを誘っていた。




結婚式の朝、私とカズトは実家に一旦戻り、お互いの親に挨拶しようと車を走らせた。
カズトと私は、「じゃぁ、後で」と目配せすると、隣同士のお互いの玄関の戸を開けた。

家では、パパもママもすっかり支度を済ませていた。
パパは、私の顔を見ると、「また、綺麗になったんじゃないか?」と笑った。

私達はリビングのソファーに腰を下ろし、最後の時間をゆったりと過ごした。
パパは、コーヒーをテーブルに置き、家族の写真に目を細めながら、穏やかな口調で話し始めた。

「若くして結婚した僕達の元には、なかなかコウノトリが現われなくてね。
『もう、赤ちゃんは授からないだろう』と落胆した頃に、ママは君を身篭ったんだ。
その君は16年前の今日、2,000gにも満たない未熟児で産まれて、無事育つだろうかと毎晩不安な気持ちで寝顔を覗き込んでいたんだよ……。それを!それを!!16年しか育てていないのに和明に取られるとは!!」
「パッ!パパ!!それ、カズトのお父さんの名前だから……」
「そうだったな。はは……」
私の突っ込みに、パパは力なく笑った。

出掛ける前に、パパとママに今まで育ててもらったお礼を言おうと、言葉を切り出すと、ママは微笑み、パパは「言うな!」と号泣した。

その時のパパの淋しい横顔が、今も淋しさに項垂れていた。

挙式を無事に終え、披露宴が始まる前の控え室でパパとカズトは、楽しそうに笑いながら話していた。

「でも、お隣同士ですし、すぐにいつでも会えますよ。お父さん」
「……まだ、入籍していないんだから、お父さんは早いだろう!」
拗ねたパパの言葉に、ママと私は「パパ!!」とユニゾって反論した。

パパは私達をチロンと睨みつけると襟を正した。
少し拗ねながらもパパはコホンとひとつ咳をし、カズトに頭を下げた。

「娘を頼むよ」
「いや……そんな、こちらこそ……お父さん」
「だから、お父さんは早いと言ってるだろう!!」
「あ!パパ!!」
「あなたっっっっ!!!」

頭を下げるカズトのミゾオチに、パパは思わずボクシング部で鍛えた拳をお見舞いしてしまっていた。



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