乃琶の独り言

ピアノを勉強している管理人(現在術後療養中)が、日々で想うこと、練習やレッスン、聴いた曲の感想などを徒然に書いています。

全快きな粉ロールケーキ~彼女の笑顔

2005年06月02日 21時31分29秒 | 日々・暮らし




3月に頭の腫瘍を切除する手術を受けた彼女。
その彼女が、今日我が家に遊びに来ました。

長い冬も終わり、雪も溶けて、春が来て、今日の札幌は今年初の夏日となり、彼女の体力も気力も回復して、
遊びに来られるようになった、と言うわけです。

この彼女、今だから言うのですが、私が中学高校とピアノを習っていたときに
当時のお教室まで一緒に通い、お互い励まし合っていたSです。
Sは、私が二度目に通った中学に転校していったときに、いじめに遭った私に
最初に優しく接してくれた人でもあり、まさに古い古い、掛け替えのない友人です。

Sは、手術前に会ったときと全く変わりない様子でした。ぁ、髪は伸びていました。
美容室へ行けなかったから、と言っていましたけど、
手術で切開した左の額には手術の痕跡は全くと言っていいほど目立たず、
「ここもちゃんと髪が生えてきてすっかり元通りになったのよね」とSはホッとした表情で話してくれました。

腫瘍は悪いものではなかったと言うことです。
予兆としては頭痛などの痛みはなく、何という名前だったかは忘れてしまったのですが、
ものの輪郭が虹色にぼやけて見え、それが目を閉じても明るい光線が見えたままであるという、
いわゆる視覚異常で、「これは頭の中が絶対におかしい」とSは思ったのだそうです。
目を閉じても真っ暗にならない怖さ、それは想像を超えたものだったそうで、
「目を閉じたら真っ暗になるから、人は安心して眠れるって初めてわかったわ」とも
言っていました。

手術のことのみならず、色々な話に花が咲いて、お昼に。
デザートとして出したのが写真の「きな粉のロールケーキ」(月森紀子さんのレシピを参考)です。
以前、みおじゃむさんに、Sが全快したら、「ぜひマクロビスィーツをご馳走してあげてください」と言われていましたが、本当にその通りになりました。(^o^)
「わぁ!すごく美味しい!お菓子上手だよねえ」と大喜びしてくれました。
そんなSの顔を見て、私もああ、良かったなあとしみじみしてしまいました。

さて、何と言っても我が家に来たSの楽しみは
グランドピアノを弾くこと。(Sの家にあるのは電子ピアノ)
手術前も後も、なかなかピアノに触る気が起きず、触らないと弾けなくなっているだろう・・・という不安もあってますますピアノから遠ざかっていたそうですが、
最近やっと気持ちも少し軽くなったのか、ピアノを弾きたいという気持ちが強くなり、
いざ弾いてみると、手が痛いのだそうです。

実はS、ラフマニノフの楽興の時4番を弾こうと
(我が家にある門下生コンサートで、他の生徒さん等が弾かれている映像を見て「かっこいい!」とこの曲を気に入ったのです)
ほとんど独学状態でやっているのですが、
弾くと手が痛くなるから、別の曲にしようかと思っていたとのこと。
で、手が痛くなるのは、練習不足で今までピアノを弾いていなかったからだと思いこんでいたので
「そうじゃないと思うよ、ちょっと弾いてみて」と言ったら、
もう最初から手とかガッチガチに力はいりまくりで・・・。^_^;
おまけに音と言う音のどれもこれも全部力んで弾くので、メリハリもないし、第一うるさいだけ・・・。

傍らで、今の私がわかること、こうした方がいいと思うことを、それとなく二言三言、言っていったら、
「え?これでいいの?これで音出てるの?」と最初はとまどった様子でしたが、
「ホントだ!すごい!楽!」と、徐々にSも自分の出している音の綺麗さに気がついて、
表情が明るくなっていきました。
「もう一度やってみるね」ともう一度弾きだし、
「最初からこんなに楽に弾けたの初めて」と言い、さらに
「二回も続けて弾けるのも初めて。いつも最初だけで痛くなってこの曲はダメだと思っていた」と・・・。

ああ、私も昔のままの弾き方だったらこうなっていたんだなあと、思いました。
私が長いブランク後に
手も痛くならず、昔よりも難しい曲を、昔よりも高いレヴェルで弾けるようになっているのは
まさに今のレッスンのおかげです。
きちんと弾き方を習い、音楽的なことをちゃんと勉強させていただいているので今の自分があるのだと・・・。
Sの姿を見ていたら、自分が受けているレッスンがいかにすごくありがたく、価値があるのかということを、改めて思い知りました。

Sが帰る時に、
「この曲大好きだから、やっぱりちゃんと綺麗に弾きたいから、今日のことちゃんと自分でも思いだしてゆっくりやってみるね」と言ってくれたのは
私もとても嬉しかったです。

「また、ケーキ作ったころに来るから」と、冗談交じりの笑顔で帰っていったS。
うんうん、またお菓子焼いて待ってるからね、ずっと元気でいてね、またピアノ弾こうね、と
私、声にならなくて・・・。
ああ、本当に良かったです。