商業施設での石材の使用は、施設の高級感を必要とする場合が多いように思います。
遺跡や墓石のような取り扱いとは違い、衛生的 かつ 常に美しくなければなりません。
日々のメンテナンスには限界があり、汚染劣化予防することに意義があります。
石材はお掃除できない素材と言えます。。。
石材の劣化破損の要因を単純に区分することは困難であるものの、
その一次要因を 物理的作用、化学的作用、生物的作用 に分類できます。
これらの作用はいずれも相関的なものであり、幾つかの作用が一連のプロセスを有する場合が多いようです。
また、甚大な影響を与えている人為的な破壊原因についても、悪循環からの事例が多いように思います。
①物理的劣化
石材が劣化するという現象は最終的には物理的な作用によるものであると考えることがでます。
単独で作用する物理的現象について取り上げると...
・地盤の変位に伴う不同沈下や基壇の変位
日本には四季があり、南北に長い国土を有しています。
梅雨・降雪と夏季の極端な地盤条件の変化に伴い微細な地盤の変位が蓄積されます。
建物全体の荷重が不均一であることに加え、降雨により地耐力が変化すること、また地下水位の変動に伴う地表面の浮沈挙動などにより基礎に生じた変位は、水平・垂直方向への不規則な変位を伴い、建物上方ではより大きな亀裂や目地開きを生じ、部材の崩落に繋がる場合もあります。
・ 熱膨張と収縮
昼夜の厳しい温度変化、降雨・降雪による急激な冷却による構成鉱物の収縮などが繰り返されることによる疲労破壊が劣化原因とされています。
・乾湿の繰り返しや流水による鉱物の溶解流出や摩耗
石材が湿潤と乾燥を繰り返すことにより、構成鉱物中の粘土質分や水溶性物質が流出し、細片化、粒状化することが推測されています。
また、石材の細孔内に封じ込められた水分の膨張と収縮の繰り返しが作用していること、石材表面に堆積した埃や砂粒を伴って雨水が集中的に流下することによる石材表面の摩耗なども石材劣化の原因と考えられます。
・.微振動による変位
地域性や季節によれば、強風が観測されることもあり、挙動観測から強風による常時微動の増幅が部材の変位に影響していることも推測されています。
②化学的劣化
化学的劣化は岩石中の化学成分と空気、雨水、浸透水との化学的反応により鉱物の変質、分解などが引き起こされたものと考えます。
・塩類風化
塩類風化は化学的劣化における原因としてその最たるものです。
塩類風化のメカニズムとしては、結晶化による塩の熱膨張、水和作用によって生じる応力、溶液から結晶化するときの応力の三種類が考えられます。
塩の供給源については未だ明らかではないものの、岩石を構成する鉱物自体に元来含まれている塩類、土壌中の塩化物、藻類や地衣類といった石材表面の付着生物の代謝物として生じた塩化物が雨水により流出したもの、鳥類の排泄物に含まれた燐酸や硫酸、既往修復時に使用されたセメント中の化合物の水和反応物などが推測されます。
・炭酸カルシウムと酸性雨
構成している鉱物は耐酸性に乏しい炭酸質であることから、強い酸性の雨水が降雨した場合には、これらが溶解し、砂粒の接合が弱まり脱落するという劣化の過程が推測されます。
心配される中国の工業化や工場廃棄物の影響は、北風の吹く乾期に集中することが予想されます。
③生物的劣化
・植物の成長による機械的破壊
草刈り、藻や苔類の除去などの日常管理が大きく起因しますが、植物の浸食は大きな危険性を呈しています。
建物周辺樹木や植栽・花壇は、独特の外観を創り出しており、これが建物に対して深い風土的印象を与えていることは否めません。
このような自然との対立的共生を保ちながら、延命化するという相容れない仕事をどのように評価し実現するのか、大変困難な問題でしょう。
・石材表層への付着生物による劣化
地衣類や藻類といった石材表層への付着物は、微少ではあるかもしれないが部分的に劣化の一要因として働いていることが推測されています。
すなわち、水分の保持による石材の脆弱化、水分や有機物を保持することにより石材劣化に関与する微生物の生育環境を形成すること、石材中に進入する菌糸による力学的破壊、酸の分泌に助長されたイオン交換、地衣類から生じた水素イオンが鉱物中の金属イオンとの交換を加速することなどです。
・従属栄養細菌による劣化
地衣類や藻類が付着することにより保持された有機物を栄養分として、それらを分解し酸性物質を排出する微生物の存在が認められています。
排出された酸性物質は石材の表面を徐々に溶かすと考えられているが、その速度は極めて緩やかなものです。
④人為的破壊
時間の経過に伴う緩慢な自然的な原因による経年変化とは別に、人為的な原因により進行する劣化破損は急速な破壊を引き起こすことがあります。
また、日々のメンテナンスの限界もそうです。
・日常の清掃による弊害
洗剤や研磨機器類の使用は、石質により注意を払う必要があります。
過度の洗浄や洗浄後の水分の乾燥方法、研磨による損傷がより清掃困難な状況をつくります。
・整備・修復による副作用
善意の介入が思いがけない劣化や破損を引き起こすこともあります。
石材表面の付着物を洗浄するための化学薬品が石材の劣化を助長していることが推測されるケース。
コンクリート擁壁や基礎、外壁が雨水を滞留させ石材の崩壊を引き起こしているケースなどが挙げられます。
施設を構成する建材から流出するシリカなどの成分も石材に与える影響は大きな問題です。
・来場者増に伴う弊害
使用者、来客の増加は多くの新たな問題を引き起こします。
悪質な行動をとる来場者は少数であるとはいうものの、大勢の来場者が限られたスペースに押し寄せることによる建物への影響は否定できません。
施設間の移動手段に関する問題、ゴミの問題、来場者への様々な付帯施設整備などもその要因となります。
来場者の増大に伴う水利用の増大は、自然環境に著しい負荷をかけることになりかねません。
現状の対処方法としては 。。。
1. 一般洗浄
2. .コーティング
3. 特殊染み抜き洗浄
4. 水垢・錆・エフロ除去
5. 研磨作業
6. 補修、取替え
7. 滑り止め
8. 裏面防水
9. その他
専門企業がいろいろな提案をしています。
商業施設での石材使用の意義を考慮すると、早期予防はいかなるメンテナンスよりも効果的です。
石材は清掃不能に陥りやすい建材で、
お掃除できない素材と考えるのは過剰でしょうか ・・・