凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

反則技 3 (急所攻撃)

2012年09月01日 | プロレス技あれこれ
 人間には急所というものがある。異形のレスラーとてそれは同様。なので、急所を攻撃することは当然反則であり、厳禁とされる。
 具体的に急所はどこを示すのかについては、団体のルールにより少しづつ異なっている。
 喉を急所とする見方もあるが、これは気管そのものを急所と捉えるか、あるいは喉笛、ノドボトケを急所と考えるか。喉笛であればラリアートなどは反則技となってしまう。しかし多くのルールはそうは捉えていない。気管は確かに急所だろうが、多くのルールブックは「喉を絞めること」を反則としており、場所というより行為だろう。喉への反則攻撃については反則技1で言及した。
 どこでも共通して急所としているのは、目と金的である。これは、絶対にいけない。プロレスに限らず、どんな格闘技もこれは禁止しているだろう。金的攻撃=急所攻撃とすぐに連想される。ああ考えただけで気分が悪くなる。
 ところでふと疑問に思うのだが、股間攻撃が反則とされることについては、男子プロレスだけのローカルルールとして考えたほうがいいのだろうか。手元に資料がないので検索してみたが、今は日本の女子プロレスはみなインディーズ化しており、公式サイトもブログのようになっているのがほとんどで、ルールまでなかなか示してくれていない。なのでわからないのだが、どうなんだろう?
 とにもかくにも、金的攻撃は少なくとも男子においては反則である。

 ただ、金的攻撃が反則技として成立するのかは、微妙だ。プロレスには「5カウントルール」があるため、金的攻撃ですらその範疇に入ってしまう可能性はあるが、ルールブックにはたいてい「あまりにも悪質な反則行為を行った選手に対し、レフェリーの判断で即、反則負けを宣告する時もある」との一文が入っている。金的攻撃はこれに該当するのではないかと推測する。そりゃそうでしょ。あそこへの攻撃だけは、ダメだ。これが悪質すぎる行為という考え方に、全ての男性は賛成するだろう。
 したがって金的攻撃は反則技ではなく、反則であると考えられる。なので多くは、レフェリーのブラインドをついて行われる(やっぱりあるんじゃないか^^;)。
 2種に大別できると思うのだが、ひとつは金的そのものを狙ってダメージを与えようとする場合。直接蹴ったり、あるいは腕を股間に入れて振り上げて当てる。また、アトミックドロップの要領で持ち上げ、トップロープに落とすという方法もよく見られる。
 多くは相手がスタンディング状態でなされ、グラウンドでされる(いわゆる電気アンマ方式)ことはほとんどない。ダメージがわかりにくいからだろうか。例外として、コーナーポストを股の間に位置させ、場外から引っ張るという方式がある。うはぁ、書いているだけで僕にもダメージがある(汗)。
 もうひとつは、防御のために行われる場合である。具体的には、スタンディングでバックをとられスープレックスを放たれんとしたときに、脚を後ろに蹴り上げる。バックをとられた場合は通常、上半身を曲げてエルボーで防ぐことが多い。ずるいやり方で爪先を踏んづけるというのもある。しかし股間はもっとずるい。昔初代タイガーマスクがスープレックスを放つとき、よくブラックタイガーがこれをやった。あれを見ていて憤慨したものだ。そんな省エネ型で解こうとするな、と。
 他に例外として「股間の急所を握ること(新日公式)」がある。握りつぶすのなら論外で大変な反則だが、オカマレスラーが「そっと握る」のであればこれは「相手に精神的ダメージを与える」ことで5カウント以内なら反則技の範疇だろう。
 とにかく金的攻撃は、いずれにせよ卑怯感がつきまとうやり方であり、ヒールしかやらない行為だ。だから、金丸がヒールとしてイッチョマエでもないのによくこれをやっていた時は本当に腹が立った。オマエ中途半端なんだよ。またアナウンサーも「うまく頭を使っています」などと実況してアホかと思った。悪役として生きる、憎まれる覚悟を持たないと金的攻撃はやってはいけないのだよ。そこの分別はちゃんとしなさい。
 またグレーゾーンの技に、マンハッタンドロップがある。向かい合って双手刈りから抱え上げ片膝に落とす。いわばアトミックドロップのリバースバージョンである。ニューヨークの暴れん坊アドリアン・アドニスが得意とした。アドニスがさかんにこの技を用いていたときは、当然尾てい骨狙いであり反則とはみなされていなかったのだが、落とす角度によってはこれは急所に当たる。蝶野らは、そのようにして使用した。
 よってグレーゾーンと書いたが、この今は亡きアドニスの技を反則技として本当に用いないでほしい。違うんだよ本当は。そんな卑怯な技じゃないんだ。
 さて、アドニスで思い出したのだが、アドニスは金的攻撃はしなかったものの一人で勝手に痛がっていた。例えば藤波をボディスラムで投げ、マットに倒れたことろをコーナーに上がってエルボーを落とそうとする。その刹那藤波は立ち上がり、コーナートップにいるアドニスに雪崩式ブレーンバスターを放たんとして駆け上がり、まずボディにパンチを打つ。すると、アドニスはトップから崩れ落ちてターンバックルに股間を打ち付けてしまうのだ。悶絶する哀れなアドニス!
 これはアドニスの得意技(?)だったが、男が股間を打つ行為を自らするわけがない。したがってこのポーズはフェイクだったと思う。しかし、あんなふうに落ちたら絶対打つだろう。アドニスの位置は我々と違っていたのかもしれない。そういえば白人は前付きだというぞ。外国製ジーンズはファスナーの位置が上に(こういう話は技となんの関係も無くただの下ネタなので略)。

 金的と並ぶ危険な急所攻撃に、目潰しがある。技名だと「サミング」となるが、いくら名称があっても、これも金的と並んで反則技ではなく反則だろう。
 ただ、プロレスにサミングはほとんどない。総合やボクシングではあったりすると聞いているが(ジェラルド・ゴルドーのアレとかグローブに松脂をすり込んで目を擦るとか)、プロレスは「明日がある」スポーツであるため、相手の目を傷つけることは欠場に繋がりプロモーターから干されてしまう。したがってほぼこのルールは遵守される。前田日明が長州の顔面を後ろから蹴って眼底骨折に追い込んだ結果、解雇された。これには他に様々な事情があるが措いて、目への本気の攻撃は反則負けより代償は大きくなる。
 僕が見たことがあるのは、小鉄さんが天山に不意をついて指で突いたもので、突いたというより触れたという程度だろう。天山は悶絶したが、これはエキシビジョンであり「初っ切り」みたいなものだろうか。
 他に猪木が昔、アウェイで韓国のパクソンナン、パキスタンのアクラムペールワンにサミングをしたことが伝えられているが、この真相はよくわからない。ただ、プロレスのサミングは「よっぽどのこと」だと言えるだろう。
 
 金的とサミングはこのくらいにして、他に急所攻撃として「目・鼻・口・耳へのあらゆる攻撃(全日公式)」というのがある。鼻と口と耳か。
 基本的には顔面には目以外にも急所が多く、それは眉間だったり人中(鼻と口の間)であったりするが、突起している鼻と耳、歯や舌がある口への攻撃は特にご法度ということだろう。新日公式はもう少し具体的に「鼻を掴む、口の中に手を入れる、耳を引っ張る」と書いている。
 ルールとしてはあいまいだが(これでは例えば新日では鼻へのヘッドバットはOK、また全日では耳そぎチョップはNGとなる)、極端でなければ「反則技」の範囲内とみていいだろう。鼻の穴に指を入れたり耳を引っ張ったり歯や舌を掴んだりするのはプロとして魅せる競技に相応しくなく、嘲笑の対象になるから避けるのが賢明だと思われる。キャメルクラッチ中に口のなかに指を入れて引っ張ったりすることは時々見られるが、レフェリーはカウントを取る。反則技だ。

 他に「手足の指関節への攻撃は、三本以上でなくてはならない(全日公式)」というのがある。これは、折れるからだろう。昔タイガーマスク(佐山)へのインタビューでこういうのがあったようなおぼえがある(記憶で出典無く不正確です)。
 「じゃ、タイガーはアンドレにも勝てると?」
 「そうですね。戦法によっては」
 「どう攻めれば勝てるのですか」
 「手の指を一本一本折っていけば勝てます」
 なんとも怖ろしい話だが、アンドレがそう素直に指を折らせてくれるだろうか。それはともかくとして、プロレスは相手に怪我をさせるために競技をしているわけではない。上田馬之助がかつて指を逆に曲げる攻撃をしたりしていたが、それでも指は四本掴んでいたような。指一本への攻撃は、ほぼ反則技としても存在していないと思われる。折れるもん(汗)。

 だいたい急所攻撃というのは以上である。ルールは、みぞおちや脇腹(レバー)への打撃については明文化していない。これは暗黙の了解という部分もあるだろうし、正拳でなければレスラーもプロだから「うまく相手の攻撃をずらす」ことが可能だろう。そういう受身が出来ないようでは厳しいようだが駄目なのだろう。
 ところが、もうひとつ身体内で「掴むな」と書いている箇所がある。どのルールにおいても然り。それは、頭髪である。
 確かに毛を引っ張られたら痛いが、決して髪が急所だということではないだろう。頭髪を掴むと攻撃が有利になる、という視点からのルールだろうと思われる。だが、昔のルーテーズ、武藤敬司やハルクホーガン、また秋山準あたりは明確に「頭髪は急所だ」と考えていたかもしれない。おい、掴むな抜けるじゃないか!
 実際には、頭髪はよく掴まれる。ダウンしたのを起こすときはたいてい頭髪に手をかけている。みんな反則である。したがって5カウント以内に起さなければならない。
 ヘッドバットも、そうだ。ボボ・ブラジルらは頭を正面から両手で掴みぶつけていたので反則ではないが、大木金太郎や藤原組長の「一本足頭突き」は髪を掴んでいた。あれはみな反則技の範疇となる。
 さらに反則技として、ディックマードックのカーフブランディング(仔牛の焼き印押し)が挙げられると思う。マードックは藤波に各種技でダメージを負わせ、コーナーに背中から叩きつける。藤波が朦朧としている間にマードックは、コーナートップに上がって後ろから藤波の頭髪を掴む。朦朧としていた藤波がハッと気づくがもう遅い。マードックは藤波の後頭部にヒザを押し付け、そのまま前方へなだれ落ちる。極めて危険度の高い技だが、これは頭髪を掴んでいる時点で反則である。よって、髪を持ってから5秒以内に仕掛けなければならない。
 この技は天山が一応継承しているが、天山は頭髪を持たず後頭部もしくは首を両手でホールドして仕掛けている。そっちのほうがツルツルレスラーにも仕掛けられなおかつ反則にもならず良いのかもしれないが、あの「藤波がハッと気づく」くだりが天山の技にはなく、そこが多少ものたらない。もっとも稀代の受け手である藤波が居ないことが不幸なのか。それに、牛は天山であって牛が牛に焼印を押すというのはどうなのだろうか。
 他にも頭髪を掴む技はあるだろう。フェイスバスター。アドニスのブルドッキングヘッドロック。みな、反則技となる。5カウント以内でなされなければならない。

 頭髪と同じくこれも急所攻撃ではないのだが、ついでに言及しておきたい。「コスチューム等を、掴んだり、引っ張ったりする行為(全日公式)」について。
 コスチュームということは、マスクもその範疇となる。したがって「マスク剥ぎ」は反則となる。これは技とは言えないから、ただの反則。
 マスクに手をかけることが反則だという認識は一般的だが、タイツはどうか。タイツに手をかけることは、ブレーンバスターで普通に行われている。したがってブレーンバスターの多くは反則技なのである。むろん5カウント以内ならOK。だから、両者の「どっちが投げるか」の攻防で長く時間がかかるのは本来ダメなのだ。しかし、これは技の攻防として黙認されている感がある。
 ドリルアホール・パイルドライバーを放つ場合には、正面から相手の頭部を股間に挟み込み、胴をクラッチして相手を逆さに持ち上げて落とす。この際に、相手の胴を持たずタイツを持って引き上げればそれは反則となる。これもブレーンバスターと同様に技の過程であるのでそれほど大した問題でもなさそうだが、この場合はレフェリーがチェックを入れる。アンドレがこの方式でやろうして止められていた。
 これは、バディ・オースチンのパイルドライバーによる惨劇が記憶にあるからだろうと推察される。
 オースチンのドリルアホール・パイルドライバーは、タイツを掴んで持ち上げる。この方式は、相手の胴をしっかりとホールドする方式と異なり、加減が出来ず体重がもろに脳天にかかる。つまり、威力がすさまじくなり怪我をする。怪我をするどころか、オースチンはこのタイツ掴み式で2人殺している。即死だったと言われる。したがって、パイルドライバーでタイツを持つのは反則技の範疇に入らず完全な反則として厳しく取り締まられることになったのだろう。
 このようにタイツを掴む行為にも、黙認されているものから完全に反則とみなされるものまで状況により様々だが、もうひとつだけ。
 ディックマードックと藤波が(またこの2人か^^;)場外乱闘を繰り広げて時間が過ぎる。20カウント近くなり戻らないとリングアウトになるため、藤波がエプロンに足をかけて上がろうとすると、マードックが後方からタイツを掴んで引きずりおろそうとする。その刹那、藤波のタイツが下がって、おしりがぷりんとむき出しになるのだ。
 もうこの光景は、何度も見た。これは藤波に一種の恥辱を与えているわけで、精神的ダメージを加える反則技となる。さらに、このことによって藤波はあわててタイツを引き上げようとし、その隙にマードックがリングインしてしまう。勝敗を左右する反則技と言える。

 しかし、この項にはマードックとアドニス、そして藤波の登場頻度が高かったが、技を受ける天才だった藤波は反則技ですらしっかりと受け止めていたことにいまさらながら驚く。その藤波の巧さを、今は亡きマードックやアドニスは、よく分かっていたのだろうと思う。
 
 次回に続く。

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2 コメント

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ドラゴン (rollingman)
2012-09-08 21:12:19
藤波さんのファンは玄人という認識でよいですかね。(笑)

思いかえすと、プロレス見始めた頃は藤波さんがどう凄いのかが全く分からなかったんですよね。まあ三銃士以降なので若干ピークは過ぎていたとは思いますけれども。

ちょっと昔の藤波さんの試合を見てみたくなりました。
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>rollingmanさん (凛太郎)
2012-09-09 06:55:11
ありがとうございます。
藤波という人はどう考えればいいんでしょうかねー。Jrヘビーの時代は間違いなくキラキラしたスター。ヘビー級転向後は体格の物足りなさで猪木の後継者に至らず、大人気の長州の敵役へ。しか藤波だから長州を輝かせられたと言えます。Uターンした前田日明を光らせたのも藤波。長州は前田をクビにしただけ。その新日は後継者を失い迷走…。
三銃士が台頭した90年代に、既に腰を痛めてレスラーとしては使えない状況であったのが誠に残念なんです。鶴田は四天王の壁になりましたが、藤波はその立場に立てなかったのが全くもって惜しい。おそらくは、藤波なら三銃士をもっと輝かせられただろうと信じています。
馬場・猪木のように鶴田・藤波の対戦は叶いませんでしたが、もちろんレスラーとして鶴田は圧倒的に藤波より強かった。しかし、それでも「プロレスラーとして」僕は藤波のほうが上だったと思っています。
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