凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

トーホールド Ⅰ

2006年09月13日 | プロレス技あれこれ
 トーホールドという技は、プロレス技としては相当にクラシックで、関節技第一号とも言われている。これが本当のことかどうかはよくわからないけれども、少なくともフランク・ゴッチの得意技であった。
 フランク・ゴッチというレスラーは、デビューが1899年と言われるから前々世紀だ。まだプロレスは黎明期と言える段階であり、伝説のレスラーと言えるかもしれない。
 アメリカン・ヘビー級王座保持者であり、当時統一世界ヘビー級王座(これはつまりヨーロッパヘビー級王者のこと)保持者であるジョージ・ハッケンシュミットと2時間に及ぶ死闘を繰り広げて統一王者となった。後にNWA世界ヘビー級初代王者と認定されている(当時はまだNWAは無かったため、つまりはNWAの権威付けでそうなっちゃったのだが)。あのプロレスの神様と言われるカール・ゴッチは、フランク・ゴッチに憧れてリングネームをクラウザーからゴッチに改めた。つまりはそういうレスラーである。
 そのフランク・ゴッチのフィニッシュ・ホールドとも言われているのがトーホールドである。伝説の技と言ってもいいだろう。
 ところで、このトーホールドという技、フランク・ゴッチはどのように仕掛けていたのかは、僕はよく知らないのだ。プロレス年表のようなものを見ればフランク・ゴッチ=トーホールドと書かれていてそうなのかと思うが、映像を見たこともなければ解説を読んだこともないのだ。
 トーホールドであるので、トー(つま先)をホールドして相手を痛めつける技である。と言って、つま先を狙った技ではない。つま先を持って足を捻じ曲げる技である。かかとを起点としてつま先をぐいと横に曲げると足首が捻れる。足はもちろん前に向いているものであって、それを横に曲げると足首だけでなく連動してヒザ、股関節が捻れてしまう。あいたたた。これがトーホールドの基本である。
 これをフランク・ゴッチは立ったまま掛けていたのかヒザを落としていたのか、或いは寝て掛けていたのか。内側に曲げていたのか外側に曲げていたのか。
 クラシカルなトーホールドは、上田馬之助とかがスタンディングで掛けていたようにも思う。相手のもう片方の足を踏みつけ裏返らないようにして、とった足首を外側に曲げていた。相手の足は伸びている。しかし後に書こうと思うがスピニング・トーホールドになればヒザ関節を捻ることを主眼に置いているため内側に曲げている。もともとはどういう技だったのだろう。

 さて、このトーホールドはプロレス技の基本となって、よく試合には出てくるが痛め技である。見方によっては単純な技であるため、なかなかフィニッシュに結びつける選手はいない(本来痛い技なのだけれど)。しかし、これに似た技は今でも必殺技として君臨している。ヒールホールドはその最たるものだろう。
 ヒールホールドとは、足先を脇に挟み(脇に挟まなくてもいいけど固定し)、かかとを肘で引っ掛けて持ち上げるように極める。そうすると、ヒザ関節が極まってしまうのである。足首を固定してつま先を支点にかかとを持ち上げる(足首を身体に対して横に曲げる)ことによって、ヒザ関節が捻れる。一瞬にして膝の靭帯を損傷してしまう危険性があるため、禁じ手とされる場合も多い。総合格闘技をよく見ている人にはおなじみだろう。ヒール(かかと)ではなくヒザを破壊する技である。
 プロレスは相手に怪我をさせるためにやっているわけではないので力加減が重要になる(八百長論ではない。ギブアップさせれば勝ちなのだから)。プロレス的には、痛みからギブアップさせると言うより、ヒールホールドが掛かった時点でヒザを破壊されてしまう恐怖が先に立ち、思わずギブアップ、という方が恐怖性が増す。さあ力を入れるぞ、再起不能にしちゃうぞ、と舌なめずりする残忍な顔が出来れば一流のレスラーだと思うのだが、そこまでの役者はなかなか居ない。鈴木みのるなんてのは、初期にはヒールホールドを使っていたパンクラスの男だから、舌なめずりが似合いそうなのだが。いずれにせよ難しい技である。

 ところで、書くほうも難しい。関節技なんて書くんじゃなかった(後悔)。

 見た目ヒールホールドと見間違う技にアンクルホールドがある。これはヒールホールドがヒザ関節への攻撃であるのに対し、あくまでアンクル(足首)である。
 うつぶせの相手の足を取り、片手で足首の部分を抱え込んで、反対の手でつま先を掴む。相手の足が横向きになる。そのつま先を、足首を固定しながら押すようにすれば、足首の関節が極まる。見た目は足首にスリーパー・ホールドを掛けているような感じ。
 これをフィニッシュにしているのが金本浩二である。金本は、この地味な技を派手にアピールする。まずうつぶせの相手にまず自らがスタンディングで掛け、会場に大見得を切る。相手がロープに逃げようともがくのを、極めた足首をぐっと引き寄せてリング中央に戻す。そしてさらにギブアップしない場合は自らもマットに倒れこんで足で相手を動けなくしてしまう。これでジ・エンド。なんともカッコいい。

 金本は、この10月が来れば40歳である。もうそんな年か。小橋や健介や高山と同じだ(中西もか)。若手のイメージがずっと僕にはあったが、とんでもない話で大変なベテランである。かつては3代目タイガーマスクだった。しかし優等生でなくてはならないタイガーには合わないキャラクターであり、喧嘩番長である。関西弁でまくし立てるそのかすれた声はなかなかにいい。最近は「アニキ」と呼ばれる。どんどんいいキャラになっていくような気がする。ムーンサルトプレスやファルコンアローが必殺技として知られるが僕はこのアンクルホールドが好きだ。地味な関節技がこんなに絵になるのは金本のパワーだろう。先日、G1に出場してMVPとなったが、十分納得がいった。なんと言うか、意気を感じる。ジュニアの第一人者として、これからも若手を引っ張って欲しい。

 スピニング・トーホールドまで話が行かなかった。次回に続く。

 小技画伯のHPにイラストがあります。「小技のプロレス画集」で「金本浩二のアンクルホールド」
を描かれています。分かりやすいですねー。
 画伯、いつもお世話になります。

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2 コメント

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Unknown (明石家_1955)
2006-09-14 09:47:02
同じ足への攻撃でも決める場所や決めに入る形によって選手それぞれが名前を付けたりしてる場合もありますよね。

でも、今はやはり金本選手が1番上手く使ってると思います。
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>明石屋_1955さん  (凛太郎)
2006-09-14 22:26:07
足関節って難しいですね。ちょっとしたことでも変わってくる。こういうのは、プロレス技として語るのには相応しくないかもですねぇ。ヒールホールドだの裏アキレスだのという技は。やっぱりプロレスでは4の字固めとかインディアンデスロックについて話す方がいいのかもしれません。

アームロックについてもいつか書こうとは思っているけど、キーロックとかの方がプロレスらしいよなあ。



それにしても、金本はいいよね♪
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