凛太郎の徒然草

別に思い出だけに生きているわけじゃないですが

フェイスバスター

2006年03月18日 | プロレス技あれこれ
 ブロック・レスナーの「バーディクト(F5)」という技には、説得力がないと僕は思っている。
 これは一種の爆弾発言かもしれないし、お前はプロレスの見方がなっていない、と言われればそれまでなのだけれども。

 これは、実際に効く、効かないはもちろん僕は受けたこともないしわからない。そりゃ効くのかもしれない。ただ、どう効いているのかについてがよくわからないのだ。その意味での「説得力がない」である。
 この技は、相手をエアプレン・スピンの状態で担ぎ上げ回転する。回転と言ってもエアプレン・スピンのようにぐるぐる回すわけではない。勢いをつける目的である。そして、ロックを離し相手をうつ伏せの状態のままマットに叩きつける。レスナーはでかいので、まあ2階から落とされるような状況だろう。しかしただ落とすだけなら相手もプロレスラーであり受身を取るのでさほどのダメージはない。このバーディクトの主眼は、これがフェイスバスターであることにある。相手をマットに落とす時に、自らも倒れ込みながら相手の頭を腕でマットに叩きつけるようにする。ここで、フェイスバスターとしてのダメージを加えるのである。このようにバーディクトは普通フェイスバスターの亜種であると言われ、そこにノックアウト技の価値が生まれる。
 しかしながら、新日本プロレスに登場して以来のレスナーをTVで見ていると、どうもちゃんとフェイスをバスターしていない。本来であれば、エアプレンスピンから相手を空中に放り出し、相手がマットに落下するその間にレスナーは体勢を入れ替えて相手の後頭部をしっかりと腕でロックし、頭部に体重をかけて落とし、顔面をマットに叩きつければならない。そうすればフェイスバスターの完成である。しかしながら、バーディクトは旋回させるために遠心力が加わり、自らも倒れこまなくてはならないために空中で頭部をロックするという作業がいつも完全に出来ていないように見える。頭部に自らの体重を乗せないと相手は普通受身が取れるのでさほどダメージを与えられないのではないか。
 これは、エアプレンスピンの状態で既に相手の頭部をロックしているのに、回転して投げることでそのロックを一旦外し、さらに空中でロックしなおすという作業が加わることによる弊害である。無理がある技なのだ。相手をエアプレン状態に担ぎ上げて頭部を落とす技は、小橋のバーニングハンマーや高岩のデスバレーボムがある。いかにも効きそうだ。これは受身がとれない。しかしバーディクトは、受身の余地がある。前述のように完全に決まれば凄いが、なかなか無理があって決まらない。
 余談になるが、これに似た技に中西のヘラクレスカッターがある。これはバーディクトとは逆に相手をアルゼンチンバックブリーカーの状態に担ぎ上げ、やはり旋回して落とす。相手は背中から落下するが、その時やはり相手の頭部をロックするようにして体重をかけ、後頭部を打ち付ける。こっちはネックブリーカードロップになる。この場合、相手が落ちる際上向きなので、遠心力でうまく相手のアゴに腕が引っかかる。なのでうまくロックできるが、バーディクトは下向きなので引っかかる部分がない(後頭部なので)。なのでロックが出来ないのだ。
 (※F5についてはコメント欄のWWE_FANさんのお話を参照)

 かと言ってバーディクトという技が嫌いだと言っているのではない。怪力レスナーに似合う派手な技だと思っている。ただ、これが不完全なフェイスバスターであるために、フィニッシュとするには(?)なのだ。もっと豪腕を活かした技の方がいいのに。

 そもそも、フェイスバスターという技はどんな技なのだろうと考えてみる。端的に言えば、相手の顔面をマットに叩きつける技だ。顔面には凹凸があり、マットに叩きつけると痛そうだ(汗)。鼻の骨が折れそうな感がある。
 顔面砕きがフェイスバスターであり、厳密な技の定義はないと言ってもいいのではないか。ドリル・ア・ホールパイルドライバーの体勢で、脳天を落とすのではなく前に落とす。ブレーンバスターの要領で相手を持ち上げ、後方ないし垂直に落とすのではなく前方に落とす。いずれも顔面砕きとなる。後方に落とすと、後頭部と背中を打ち付ける技となるが、前方に落とすと顔面砕きになる。これは、前方に落とすということによってマットと自分の体の距離感が把握しやすいので、「胸と腹を打ち付ける」ことになりにくいからだろう。ただ頭部をロックしているので顔面は叩きつけられてしまう。こうやって考えると、マットに自分の顔が叩きつけられるのが見えるわけで、恐怖感は凄いものがあるだろう。
 吉江のやる、カナディアンバックブリーカーの体勢から前方へ倒す、リバースオクラホマスタンピートのようなカナディアンハンマーも顔面砕きになる。この場合、吉江は相手の頭部をロックしているわけではないが、吉江の腹が後頭部からのしかかってくるわけで(怖)、160㎏の体重が顔面を押し潰す。普通は鼻の骨が折れますな。

 もっと端的に顔面だけを打ち付ける技もある。カーフブランディング(仔牛の焼印押し)もネックブリーカーの要素と共にフェイスバスターである。あれが完璧に決まれば顔面は破壊される。ダブルアーム式フェースバスターというのもある。ダブルアームスープレックスで投げるように持ち上げて前方へ落とす。タイガードライバーの前倒しと言ってもいい。これは両腕ロックなので怖い。
 いちばん端的な技はフェイスクラッシャーである。武藤敬司は、相手をコーナーに叩きつけエルボーを放った後、相手の頭を掴んでマットの中央に走りこみ顔面を叩きつける。派手だ。以前にヘッドロックⅡで書いたが、ブルドッキングヘッドロックもフェイスクラッシャーに近い打ち方がある(アドリアン・アドニス等)。

 これらを考えてみると、実際フェイスバスターは恐怖感たっぷりの技だが、あまりフィニッシュには結びついていないことがわかる。「痛め技」の範疇だ。難しい言い方になるけれども、本当に鼻の頭をマットに叩きつけたら怪我をしてしまう。鼻の骨など鍛えようがないからだ。ここには暗黙の了解があるのではないか。なのである程度の加減が必要となり(相手に怪我を負わせるのがプロレスの目的ではない)、結局フィニッシュには結びつかないことになるのではないだろうか(八百長論ではありません。僕はプロレス大好き)。
 そうすると「バーディクト」は、実に珍しいフォールのとれるフェイスバスターということになるのだが、前述したようにフェイスバスターとしての説得力に欠ける(と、思う)。

 レスナーが「フェイスクラッシャー」をやればもの凄いことになるのではないか。もちろん鼻の頭を叩きつけたら大怪我になるので、そこはうまくコントロールして前頭部をマットに叩きつける。あの豪腕でやればアタマはグラングランして、確実にフォールに結びつくのではないだろうか。少なくとも自然落下に頼るバーディクトよりも説得力は格段に生まれると思うのだがどうだろうか。
 といいつつ、明日の両国での曙との一戦は楽しみでもある。レスナーが曙にバーディクトを仕掛けられるのか。曙相手であれば、あの215㎏の体重が自らを押し潰す。バーディクトにも説得力が生まれるだろう。

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6 コメント

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レスナーは・・・ (明石家_1955)
2006-03-18 13:53:53
確かに力もあり実力もありそうなんですが・・・

何かが足りない感があるような気しません?



このままだとただの怪力レスラーの一人として

終わるのも近いような気がします。
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大いに同感。 (凛太郎)
2006-03-18 17:25:48
うんうん。とても足りない気がする(笑)。

大味のアメリカンプロレスが好きな人にはいいのかもしれないけれど…。ただ、それはあくまで僕の感想で、世間的にはああいうのが求められているのかもしれないなあ。

彼はまだ結局のところスポーツマンであって、味わいがないのかも。ドラマを作り出せないのですね。殴ってブン投げて終り、というか。

「世界のプロレス」で見ていた頃のウォリアーズがまさにそれで、僕はつまんないレスラーが出てきたなと思ったのですが世間的には大人気。ただ、ウォリアーズは力が落ちてきた頃から逆に見ごたえのある試合をするようになったなぁ。そう言ってたら死んじゃったけど(涙)。

かつてのハルクホーガンもつまんなかったけれど、猪木が彼をレスラーにした、と思っています。ところが今のマット界ではレスナーを育てる人がいない。どうなるんだろうなあ。
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どうもアメプロの技は・・・ (ヒロリン)
2006-03-19 21:41:37
 アメプロの技は説得力に欠けますよね・・・。「F5」しかり、ゴールドバーグの「ジャックハマー」しかり・・・。



 見栄えで勝負するショープロレスですから仕方ないのでしょうが、レスナーには、(ホーガンが猪木から盗んだみたいに)もうちょっと日本的なインサイドワークや試合運びの細かさみたいなものを学んでほしいと思います。
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大味の技ばかりでは…。 (凛太郎)
2006-03-19 23:10:53
ヒロリンさんのおっしゃるとおりですが、いかにショープロレスでも説得力に欠けることはやって欲しくないのですね。つーか、WWEをプロレスと呼ぶのはもう止めて欲しいのですが…。



「ジャックハマー」なんて出来損ないのブレーンバスターみたいな技出して何が面白いのでしょう。エンタならばエンタでもう少しちゃんとやりなさい(怒)。



と怒ってもしょうがないのですが(笑)、レスナーには本音では育って欲しいのです。まだ若いから。曙がライバルでは難しいのですが。
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かなり古い記事ですが・・・ (WWE_FAN)
2008-04-04 11:20:33
このブログにはWWEのレスナーを見たことのある人がいないんですね・・・。
レスナーのF5は、原型では相手の体をロックした形でたたきつけるフェイスバスターでしたが、けが人が出たために今の安全な形になったのです。
前受身は失敗するととても危険なので、受身の不得意な相手にでもかけられるあの形になったという経緯があります。
とはいえ、来日時のF5はWWE末期のころと比べてはるかにスケールダウンしてましたが・・・。
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>WWE_FANさん (凛太郎)
2008-04-04 21:51:19
ご指摘どうもありがとうございます。
「このブログには」と断定されますと、誰が見てらっしゃるのかまでは僕の方では特定出来ないのでなんともわかりませんけど、少なくとも僕はWWEでのレスナーは観ていません(汗)。観られる環境を整えてはいないのです。
ちょっと時事的に傾きすぎたキライがこの記事にはありますので(今読むと古いなぁ^^;)、曙との一戦などもう彼岸のことのようですが、この記事を書いた当時と違って今はYouTubeもありますので、ちょっと探してみました。

これなど分かりやすいかもしれませんね。
http://jp.youtube.com/watch?v=5XB066om5gk
(いつリンク切れしないとも限りませんが…)

これで観ますと、レスナーはF5においてはロックを外していませんね。ご指摘の通りです。ありがとうございました。ちょっと本文に注釈を入れたいと思います。
m(_ _;)m

フェイスバスターは本文でも書きましたしWWE_FANさんもおっしゃられていますが、非常に受身が難しいだろうという事は容易に想像がつきます。結局放つ側がコントロールしないと怪我に繋がる。その意味ではやはりあの技には無理があったのかなと。昔ですと「禁じ手」技になってしまうところですが(アンドレのツームストンドライバーのように)、レスナーは形を変えてあれをフィニッシュにし続けた。ですので、僕のように途中から観ると「説得力が無い」という感想に繋がってしまうのです。
難しいですね。昔は相手に怪我をさせる技は「封印」ということになりがちだったのですが、今は形を変えて示すようになった。武藤敬司のシャイニングウィザードが正面眉間狙いニーパットから回し蹴りに変わり、三沢のエメラルドが高角度パイルドライバーから今では変形オクラホマスタンピートになった。かつて封印技の代名詞だった藤波のドラゴンスープレックスも、今では普通に繰り出される。しかしそれと同時に説得力は失われた。僕は(あくまで個人的にですが)封印されたままの方が伝説となって生き残ったのではないかと夢想したりします。

どうもありがとうございました。
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