ちょっと旧聞だけれども、9/16のミル・マスカラスが大阪プロレスに登場したのをTVで見た。マスカラスはもう64歳だと言う。僕がプロレスを見始めた時期は、それはもうマスカラス全盛時代で、あの「スカイ・ハイ」のテーマが流れるとそれだけで興奮したものだ。言わば伝説のレスラーであるが、この伝説をリアルで見ることが出来るのがプロレスの素晴らしさであり、また摩訶不思議な魅力であると思う。あまり深くは考えずに幸せを享受した。
6人タッグで、もちろんおいしいとこ取りで戦った訳だけれども(そりゃ64歳だもの)、身体に衰えが目立つのは当然だが、あの背筋を伸ばした姿勢を崩さないのが立派。タッグを組んだライガーもデルフィンもマスカラスとフライング・クロスチョップの「編隊飛行」が出来て嬉しそうだ。おそらくマスクの下はニヤニヤに違いない。彼らはレスラーだけれども同時にプロレスファンだからなあ。それよりおいしいのは対戦したビリーケン・キッド&秀吉&政宗で、政宗はマスカラスのフライング・ボディアタックに沈んだ。よかったねぇ。カウント2で返したりしたらバチがあたるぞ。
マスカラスのボディアタックは、スピード感こそないものの両手を反るように大きく広げて飛翔するスタイルは健在だった。これでなくちゃ。リングにそそぐライトを背負って逆光に映えるマスカラスの飛翔。スカイ・ハイですなあ。
さて、ここでちょっと考える。ボディアタックとボディプレスの違いはどこから出てくるのだろうか。
違いは一点しかない。それは相手が寝ているか、立っているかだけである。
これはつまり、エルボーパットとエルボードロップの違いと同じなのか。いやそうではあるまい。ボディアタックは、立っている相手に身体の正面からぶつかる。そのぶつかった衝撃が相手にダメージを与えるのか? いや、見ていると、ボディアタックを食らった場合必ずマットに背中から倒れこむ。そしてマットに叩きつけられる。相手とマットの間に挟まれて(プレスされ)衝撃をうける。ボディとボディがぶつかる衝撃というものはもちろんあるはずだが、両者とも身体の正面をぶつけ合っているのだから、ダメージはほぼ同じと見ていい。エルボーがぶつかってくるのとは違う。結局下になったからプレスされてキツいのだ。
ボディプレスは、倒れこんでいるところに相手が飛んでくる。相手の体重が衝撃となりプレスされる。
そうなると、ボディアタックとボディプレスのダメージは同じと見ていいのではないだろうか。受身の問題はあるけれども、身体の正面同士のぶつかり合いであり、これは同系統の技である。
しかし同系統とは言えマスカラスのはボディアタックであり、受ける側は立ち上がっていなくてはいけない。アトミックドロップを食った後でもマスカラスがコーナートップに上れば立ち上がらないと。受ける側もなかなか厳しい。
マスカラスのボディアタックはコーナー最上段から飛んでくるのだが、この技はロープに振ってカウンターでも使える。ジュニアではよくある技だが、ハンセンやブロディもこの技を使った。ブロディは迫力があった。あの鋼のような肉体が当った時には衝撃音が伝わるようで、先ほど「ダメージはほぼ同じと見ていい」と書いたが、ああいうのはまた別のような気がする。
また、「フライング・ボディシザース・ドロップ」という技とも類似しているが、あちらは一応「相手に飛び掛って身体を抱え込んで後方に倒れこむ」という技である。もっとも「空中銅締め落し」をちゃんとやっているレスラーは少なく、ぶつかる時に身体がヨコかタテかだけで区別される場合が多いのは確か。
さて、このボディアタックにはもうひとつの呼び名がある。もちろん「プランチャ」である。プランチャとはルチャ・リブレ(メキシカンプロレス)で言うボディアタックであるが、どうもTVのプロレス中継では場外にいる相手に対して放つボディアタックを「プランチャ」と言っているような気がしてしょうがない。あれは「プランチャ・スイシーダ」である。「スイシーダ」とは「自殺者」の意味で、場外に飛ぶというのは危険なことで自殺行為にも比するためこう呼ばれる。
さて、相手がマットに倒れたままの状態であればそれはボディプレスである。このボディプレスで思い出すのは、なんと言っても僕には"スーパーフライ"ジミー・スヌーカだ。スヌーカは相手が立っていてもかまわず飛んできたりするのでその場合はボディアタックである。
ヒールとしてリッキー・スティムボードらと抗争をくり広げたスヌーカは悪役らしくコーナートップで顔を歪ませ見得を切り、身体のバネを利かせて飛んでくる。その肉体はボディビルダー出身だけあって素晴らしく、手足が長いのでスーパーフライは映える。金のとれる飛翔だった。フォールを奪った後ニヤリと笑うそのふてぶてしさは「千両役者」であったと思う。最近は絵になる外人レスラーがいないなあ。金網デスマッチで、さらに高い位置から飛んでくるスヌーカを見たことがあるが、その迫力たるや凄まじい。今は外道がスーパーフライの名を受け継ぐが、頑張ってはいるもののあのスヌーカの迫力はなかなか出せない。
日本では山本小鉄だ。小鉄さんは身体はさほど大きくないが、コーナートップから高く飛んで空中で四肢をいったん広げるように勢いをつけ飛んでくる。出来るだけ体重を乗せようとする工夫で、相手に強いダメージを与える。
これが進化したものが野上彰の「ムササビボディプレス」で、あれはなかなかに美しい。四肢の広げ方が迫力を生むのだな。
さて、コーナートップからのボディプレスは、どんどん派手に進化していった。初代タイガーマスクが「ラウンディング・ボディプレス(コーナートップに後ろ向きに立ち、バック転をしてボディプレス)」を見せたときにはその華麗さに目を見張ったものだが、これをヘビー級でもやりだしたのは凄い。なんと言っても武藤敬司で、その後この技はムーンサルト・プレスと呼ばれる。この技は今では多くのレスラーが使う。ヘビー級でやると強烈なフィニッシュ・ホールドとはなり得るのだが…。
この技は確かに派手だが、正面から飛ぶのと違いバック転であるので、そのフォームの美しさに重点が置かれて、相手に体重を浴びせるという本来の目的からずれてしまっているのではないかと危惧する。こう書いていいのかどうか迷うが、ダメージは「スーパーフライ」などと比べて一歩も二歩も譲るように見えてしかたがない。肝心のプレスする瞬間は「相手の身体上になんとかヒットした」だけであるように見えてしょうがない。つまり「説得力に欠ける」と思ってしまう。なので僕はあまり好まない。しっかり相手を正面から見てプレスした方がいいように思うのだがどうだろうか。
また、後方回転を伴うので目測を誤りやすい。ヘタなやり方だとちゃんとダウンしている相手のボディに乗らない「失敗」も多い。飛びすぎてアゴがヒットしたり、また足りなくて腿がヒットしたりとか。自らの受身も難しいだろう。武藤がヒザを痛めたのも、ジャンプの踏み切りでではなく受身の問題ではないのか。自らのヒザをマットに強打する場合が多い。小橋健太もヒザを痛めてしまった。また忘れられないのは天山で、回転しそこねて頭からマットに落下した事故があった。怖ろしい。首を鍛えに鍛えまくっているレスラーだからよかったものの、普通なら死んでいる。
その他の「派手ボディプレス」も同じ事だと思う。確かに華麗ではあるが。ライガーがやる「シューティングスタープレス(コーナーに前向きに立って後方回転しながら落ちる)」などは目測も何もあったものではない。そりゃ格好いいことは確かだが。「スターダストプレス」などは捻りも加えている(この技は曰く付きだが)。さらにどんどん進む。スカイツイスタ-プレス。スプラッシュオブスーサイド。見ていて目が回りそうだ。関空トルネード。くいしんぼう仮面があれをやるのを見るのは大好きだが(カッコいいねー)ダメージは捻れば捻るほど増すのかな。うーむ。
個性を出すのはやはり大変なことなのだ。
もちろんダイビングしないボディプレスもある。超へピー級レスラーだと、その場ジャンプで相手を押し潰す。なんと言っても"人間空母"ヘイスタイック・カルホーンで、273kgの体重で相手を押し潰す。フライング・ソーセージと呼ばれた。クラッシャー・バンバンビガロやベイダー(ビッグバン・クラッシュだな)なども印象に残る。最近では曙か。あの体重は凄いが、脂肪も凄いためせっかくの体重なのにクッションが入ってしまうような気がしてしょうがない(しかしあのブヨブヨがのしかかってくるのはそれはそれで怖いが)。
華麗に映える技からグシャっと押し潰す技まで、ボディアタックは千差万別。しかし、やっぱりミル・マスカラスはカッコいい。そんなことを再認識した先日だった。
6人タッグで、もちろんおいしいとこ取りで戦った訳だけれども(そりゃ64歳だもの)、身体に衰えが目立つのは当然だが、あの背筋を伸ばした姿勢を崩さないのが立派。タッグを組んだライガーもデルフィンもマスカラスとフライング・クロスチョップの「編隊飛行」が出来て嬉しそうだ。おそらくマスクの下はニヤニヤに違いない。彼らはレスラーだけれども同時にプロレスファンだからなあ。それよりおいしいのは対戦したビリーケン・キッド&秀吉&政宗で、政宗はマスカラスのフライング・ボディアタックに沈んだ。よかったねぇ。カウント2で返したりしたらバチがあたるぞ。
マスカラスのボディアタックは、スピード感こそないものの両手を反るように大きく広げて飛翔するスタイルは健在だった。これでなくちゃ。リングにそそぐライトを背負って逆光に映えるマスカラスの飛翔。スカイ・ハイですなあ。
さて、ここでちょっと考える。ボディアタックとボディプレスの違いはどこから出てくるのだろうか。
違いは一点しかない。それは相手が寝ているか、立っているかだけである。
これはつまり、エルボーパットとエルボードロップの違いと同じなのか。いやそうではあるまい。ボディアタックは、立っている相手に身体の正面からぶつかる。そのぶつかった衝撃が相手にダメージを与えるのか? いや、見ていると、ボディアタックを食らった場合必ずマットに背中から倒れこむ。そしてマットに叩きつけられる。相手とマットの間に挟まれて(プレスされ)衝撃をうける。ボディとボディがぶつかる衝撃というものはもちろんあるはずだが、両者とも身体の正面をぶつけ合っているのだから、ダメージはほぼ同じと見ていい。エルボーがぶつかってくるのとは違う。結局下になったからプレスされてキツいのだ。
ボディプレスは、倒れこんでいるところに相手が飛んでくる。相手の体重が衝撃となりプレスされる。
そうなると、ボディアタックとボディプレスのダメージは同じと見ていいのではないだろうか。受身の問題はあるけれども、身体の正面同士のぶつかり合いであり、これは同系統の技である。
しかし同系統とは言えマスカラスのはボディアタックであり、受ける側は立ち上がっていなくてはいけない。アトミックドロップを食った後でもマスカラスがコーナートップに上れば立ち上がらないと。受ける側もなかなか厳しい。
マスカラスのボディアタックはコーナー最上段から飛んでくるのだが、この技はロープに振ってカウンターでも使える。ジュニアではよくある技だが、ハンセンやブロディもこの技を使った。ブロディは迫力があった。あの鋼のような肉体が当った時には衝撃音が伝わるようで、先ほど「ダメージはほぼ同じと見ていい」と書いたが、ああいうのはまた別のような気がする。
また、「フライング・ボディシザース・ドロップ」という技とも類似しているが、あちらは一応「相手に飛び掛って身体を抱え込んで後方に倒れこむ」という技である。もっとも「空中銅締め落し」をちゃんとやっているレスラーは少なく、ぶつかる時に身体がヨコかタテかだけで区別される場合が多いのは確か。
さて、このボディアタックにはもうひとつの呼び名がある。もちろん「プランチャ」である。プランチャとはルチャ・リブレ(メキシカンプロレス)で言うボディアタックであるが、どうもTVのプロレス中継では場外にいる相手に対して放つボディアタックを「プランチャ」と言っているような気がしてしょうがない。あれは「プランチャ・スイシーダ」である。「スイシーダ」とは「自殺者」の意味で、場外に飛ぶというのは危険なことで自殺行為にも比するためこう呼ばれる。
さて、相手がマットに倒れたままの状態であればそれはボディプレスである。このボディプレスで思い出すのは、なんと言っても僕には"スーパーフライ"ジミー・スヌーカだ。スヌーカは相手が立っていてもかまわず飛んできたりするのでその場合はボディアタックである。
ヒールとしてリッキー・スティムボードらと抗争をくり広げたスヌーカは悪役らしくコーナートップで顔を歪ませ見得を切り、身体のバネを利かせて飛んでくる。その肉体はボディビルダー出身だけあって素晴らしく、手足が長いのでスーパーフライは映える。金のとれる飛翔だった。フォールを奪った後ニヤリと笑うそのふてぶてしさは「千両役者」であったと思う。最近は絵になる外人レスラーがいないなあ。金網デスマッチで、さらに高い位置から飛んでくるスヌーカを見たことがあるが、その迫力たるや凄まじい。今は外道がスーパーフライの名を受け継ぐが、頑張ってはいるもののあのスヌーカの迫力はなかなか出せない。
日本では山本小鉄だ。小鉄さんは身体はさほど大きくないが、コーナートップから高く飛んで空中で四肢をいったん広げるように勢いをつけ飛んでくる。出来るだけ体重を乗せようとする工夫で、相手に強いダメージを与える。
これが進化したものが野上彰の「ムササビボディプレス」で、あれはなかなかに美しい。四肢の広げ方が迫力を生むのだな。
さて、コーナートップからのボディプレスは、どんどん派手に進化していった。初代タイガーマスクが「ラウンディング・ボディプレス(コーナートップに後ろ向きに立ち、バック転をしてボディプレス)」を見せたときにはその華麗さに目を見張ったものだが、これをヘビー級でもやりだしたのは凄い。なんと言っても武藤敬司で、その後この技はムーンサルト・プレスと呼ばれる。この技は今では多くのレスラーが使う。ヘビー級でやると強烈なフィニッシュ・ホールドとはなり得るのだが…。
この技は確かに派手だが、正面から飛ぶのと違いバック転であるので、そのフォームの美しさに重点が置かれて、相手に体重を浴びせるという本来の目的からずれてしまっているのではないかと危惧する。こう書いていいのかどうか迷うが、ダメージは「スーパーフライ」などと比べて一歩も二歩も譲るように見えてしかたがない。肝心のプレスする瞬間は「相手の身体上になんとかヒットした」だけであるように見えてしょうがない。つまり「説得力に欠ける」と思ってしまう。なので僕はあまり好まない。しっかり相手を正面から見てプレスした方がいいように思うのだがどうだろうか。
また、後方回転を伴うので目測を誤りやすい。ヘタなやり方だとちゃんとダウンしている相手のボディに乗らない「失敗」も多い。飛びすぎてアゴがヒットしたり、また足りなくて腿がヒットしたりとか。自らの受身も難しいだろう。武藤がヒザを痛めたのも、ジャンプの踏み切りでではなく受身の問題ではないのか。自らのヒザをマットに強打する場合が多い。小橋健太もヒザを痛めてしまった。また忘れられないのは天山で、回転しそこねて頭からマットに落下した事故があった。怖ろしい。首を鍛えに鍛えまくっているレスラーだからよかったものの、普通なら死んでいる。
その他の「派手ボディプレス」も同じ事だと思う。確かに華麗ではあるが。ライガーがやる「シューティングスタープレス(コーナーに前向きに立って後方回転しながら落ちる)」などは目測も何もあったものではない。そりゃ格好いいことは確かだが。「スターダストプレス」などは捻りも加えている(この技は曰く付きだが)。さらにどんどん進む。スカイツイスタ-プレス。スプラッシュオブスーサイド。見ていて目が回りそうだ。関空トルネード。くいしんぼう仮面があれをやるのを見るのは大好きだが(カッコいいねー)ダメージは捻れば捻るほど増すのかな。うーむ。
個性を出すのはやはり大変なことなのだ。
もちろんダイビングしないボディプレスもある。超へピー級レスラーだと、その場ジャンプで相手を押し潰す。なんと言っても"人間空母"ヘイスタイック・カルホーンで、273kgの体重で相手を押し潰す。フライング・ソーセージと呼ばれた。クラッシャー・バンバンビガロやベイダー(ビッグバン・クラッシュだな)なども印象に残る。最近では曙か。あの体重は凄いが、脂肪も凄いためせっかくの体重なのにクッションが入ってしまうような気がしてしょうがない(しかしあのブヨブヨがのしかかってくるのはそれはそれで怖いが)。
華麗に映える技からグシャっと押し潰す技まで、ボディアタックは千差万別。しかし、やっぱりミル・マスカラスはカッコいい。そんなことを再認識した先日だった。
「キャー!クラッシャー・バンバンビガロだって~
彼のボディアタック(ボディアタックと言うよりも体重攻撃??)は筋肉に脂肪がまとわりついて返せないような
あの脂肪攻撃は本当にすごいと思います!!!!
PS 単純な、誰もが使う技こそオリジナリティを持った技にする工夫が必要になるんですよね~♪
同時期にキングコング・バンディも居ましたけど憶えてらっしゃいますか?(笑)。猪木とボディスラムマッチをやった大男です。彼も太かったなぁ。
マクガイヤー兄弟をはじめ超デブは身体が持ちません。曙も上手く身体コントロールをしないとなあ。