書店散策の折、目に入ってきた。
秋の夕暮れの法隆寺。
ススキにピントが合い、法隆寺の五重塔は、ぼんやりと景色の中に。
渋いオレンジ色の空。
懐かしい、そう思わされる表紙。
帯には、「入江泰吉没後20年特別企画」とある。
入江泰吉さんのお名前は、亡き父、尾埜 善司の書架から知った。
何冊かの写真集。
その記憶と目の前の表紙がリンクした。
実家の数多い父の書籍が並んだ書架が、私のリンク元の一つ。
実学書はほとんどないが、文化は多岐に及ぶ。
無意識的だったけど、父の書架はリンク元なんだと最近意識した。
亡くなる一年ほど前、私の家に来る機会があり、書棚を眺め、「大体一緒やな。」と告げた父。
何がしかの嬉しい気持ちになった記憶があるが、縦も横も遠く及ばない。
「大和路」とは、もちろん奈良が中心。
奈良には菩提寺があり、先祖の墓もあるため小さい頃からちょこちょこ行った。
数年前から、ご縁も広がり、縁のある土地。
独特の空気感がある。
フェイスブックで交流させていただいているTさん。
奈良にお住まい。
「入江さんの撮られた頃とは、同じ位置に立っても、木々の重なりや、土塀の美しさ等は、変わっていまいましたね。大池から望む薬師寺東塔の風景も、すっかり鮮やかになって、胸締め付けられるような寂寥感は、少なくなくなったように思います。2月堂裏の土壁も、美しすぎるように感じています。 」
繊細な方です。
写真集には、当然ながら60年代、70年代の景色が多く切り取られている。
懐かしいという景色は、逆に言うと今はもう見れないということ。
だから、タイトルも「古色」。
近鉄電車、平城駅から徒歩10分くらいにあるお墓の周りは、小さい頃からほとんど変わらない。
少なくなった、ホッとできる場所。