origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

山内昌之『歴史学の名著30』(ちくま新書)

2008-02-09 19:07:58 | Weblog
これを読んでいる。
トゥキディディス『戦史』 ヘロドトスとは異なり、極めて冷徹な視点によって書かれた歴史書であるらしい。リアリズムの祖とも考えられ、アーノルド・ジョゼフ・トインビーが再評価し、ジョゼフ・ナイのような政治学者からも高く評価されているという。
班固『漢書』 司馬遷の『史記』とよく比べられる紀伝体の歴史書。『史記』が自由奔放に歴史を描いたのに対して、『漢書』は厳しい儒教倫理に貫かれているという。前漢を滅ぼした新の王莽に関してはかなり批判的に書かれており、高祖劉邦に始まる「正しい王朝である漢の歴史」を描いたものだといえる。
新井白石『読史余論』 九変五変論という独自の論を展開した。九変とは本朝の9つの変であり、藤原良房の「外威専権の始」、基経の関白就任などが挙げられる。五変とは武家政治の5つの変であり、鎌倉幕府、北条氏の執権政治、室町幕府、織豊政権、江戸幕府のことである。江戸幕府の正当性を証明しようとした歴史書でもある。
劉知幾『史通』 8世紀に成立した書物で、幾多もの歴史書を批判分析することの重要性が説かれている。近代の歴史観に通じる書物だ。『漢書』びいきだったらしく、司馬遷の天命説には与することはなかったという。

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