origenesの日記

読書感想文を淡々と書いていきます。

荒俣宏『知識人99人の死に方』(角川ソフィア文庫)

2009-01-09 00:28:45 | Weblog
作家や学者、音楽家といった日本の知識人たちがどのように死んでいったかを叙述した本。荒俣版『人間臨終図鑑』と言えようか。荒俣が主な著者ではあるが、章によっては関川夏央(有吉佐和子)、猪瀬直樹(三島由紀夫)、都築響一(稲垣足穂)、武田徹(今西錦司)といった作家たちの手による文章を読むことができる。特に都築の稲垣足穂に関する文章は素晴らしく、足穂という我儘で世間を斜めから見た作家の魅力を伝えてくれる。三島も川端も安岡も安岡も大江も、皆足穂から悪口を言われている。当時は足穂から批判されることが一流作家の条件だったのも。
>>
私の死はもう眼の前に迫っているが、私は死について何も考えていない。考える事の興味が無い。多くの人が死について色々考えているが、すべて無駄だと私は思っている。
(259)
<<
第1回芥川賞作家・石川達三が死に迫ったときに言った台詞である。死について人は色々と考えるが、どのような思想も死を的確に表現することはできない。石川のこの考え方は、実は著者荒俣の死に対する考え方に近いのではないかと思う。様々な知識人が死について考えたが、結局それは正しかったと言えるのだろうか。ロシュフーコーの名言にあるとおり、いかに知識人といえども、死を直視することはできなかったのではないか。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。