遺体屋の仕事

日常生活では見ることも聞くこともない「遺体屋の仕事」とは・・・

変わり果てた姿

2006-07-06 17:38:52 | Weblog
ある日の朝。葬儀社さんから

「これから直ぐに来れますか?」

「交通事故死で遺体の損傷が激しいので湯灌はできないと思います。処置重視で納棺をお願いします。」

と連絡をいただきました。
故人様は19歳の男の子です。


先輩と現場に向かう中、湯灌をして髪や顔、身体に付着した血液を洗い流してから着付をしようなどと打ち合せをしました。(湯灌をしたほうが綺麗になるので・・・)
現場に到着。

父親と故人様の兄弟、お友達、ご親族で20名くらいいらっしゃいましたが、故人様の死を受け入れることができず、家の中は静まりかえってました。
ご家族の皆様にご挨拶をした際、父親が、

「母親は海外旅行に行っていて今夜、戻ってきます。」

「顔は見えないようにしてください・・・。妻が見たら気がおかしくなるかもしれませんから・・・」

と言われ、

私たちは、

「故人様を確認させていただき、できる限りの処置をさせていただきます。」

と告げて、父親の言葉などから損傷や出血があることが予測できましたので、ご家族には処置の間、別室に移動していただき、お部屋を閉めきって処置に入らせていただきました。


故人様は、ビニールシートの上に安置され、大きなシーツに包まれていました。捲ってみると・・・
上半身(顔含む)は黒焦げになっていて表現は悪いですが、炭のようになっていました。髪は焼けて無くなり、目・鼻・口・耳も焼け潰れてました。
思わず、『うわぁ』と声が出てしまいました。
ご遺体の損傷は想像をはるかに超えていて、私たちは故人様を眺めるだけで、しばらく動けませんでした。
(あとから聞いた話ですが、衝突した際、車が炎上してしまったそうです。)

予定していた湯灌は中止し、処置重視に切り替えました。
衣類は身につけていませんでしたので、首から下は焼け焦げた皮膚が落ちないように処置ビニールで巻き、そのうえから通常通り、経帷子を着付けました。

問題は首から上です。
先輩は特殊メイクも検討していましたが、骨格もなくなり、炭のようになってしまったお顔に特殊メイクを施しても生前同様にはならないと判断し、首から上は包帯で巻かせていただきました。
納棺式もご家族の心情を考慮し、立ち会っていただくことは避けました。


・・・父親に事情をお話し、生前のお写真を棺の窓の上に置き、棺の窓から中が見えないようにすることにしました。

私たちが処置をする前の焼け焦げ、変わり果てたお顔をお見せしなかったことは、母親のことを考えると良かったのかもしれません。



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13 コメント

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Unknown (Unknown)
2006-07-06 19:07:00
炭のような顔って・・・?何か恐い・・・。
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Unknown (ナイス)
2006-07-06 19:11:05
ちょうど今の仕事に限界を感じていた所でした。

しかし、このブログを拝見してから茜さんの仕事内容を読ませていただき、世の中こんなすさまじい状況でお仕事をしたおられる方がいるんだなぁと今の仕事に対する認識が改まりました。

大変なお仕事だと思いますががんばってください。

毎日の更新楽しみにしています。
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Unknown (MIKA)
2006-07-06 19:48:55
海外で息子さんの死の連絡を受けてから、帰ってくる道中のお母様の気持ちを考えると胸が詰まります。
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Unknown (Unknown)
2006-07-06 20:28:33
お母さんが海外旅行中の事故ですか。

お母さんは「息子がこんな苦しみながら死んだというのに、私はのんきに海外旅行なんかして…」って、今後ずっと自分を責めたりしそう。
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Unknown (ある母親)
2006-07-06 21:39:35
おかあさんの旅行と息子さんの事故は全く因果関係がないことなのに、母親というのは、子供の苦しみを自分が背負えなかった事でものすごく苦しみます。

流産しては、自分の妊娠中の生活が悪かったんじゃないかと苦しみ、子供が病気になると、自分の不注意じゃないかと苦しみ、また子供が大きくなってからの病気や事故でも自分が代ってやれなかった事に苦しみます。



最後のお顔をおかあさんが見られなかった事が、おかあさんのこころの中で今どんなふうに残っているのかは解りません。

子供の悲惨な最期の顔を見なかった事でまだ救われたのか、それとも、悲惨な最期だったからこそ母親である自分がきちんと見届けてあげたかったのか・・・それは湯灌に立ち会った方以上におかあさん自身がいちばんわからない事だと思います。

このおかあさんが全ての苦しみを忘れて、ゆっくり眠れる日が来るかどうかはわかりませんが、他の家族の方のためにも、1日も早く心が安らかになることを願います。

家族にとって母親が笑顔でいる事ほど、当たり前で大切なことはないと思います。
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夢に (Unknown)
2006-07-07 08:17:51
いつも拝見させていただいております、毎日ご苦労様です。

大変不躾な質問で恐縮なのですが、今回の様にご家族様は勿論の事、遺体屋のお仕事をされておられる方々にとっても衝撃的な現場に出られた場合にその後悪夢などは見られないのでしょうか?

私などは小心者ですので、文を読ませていただくだけでも寒々としております。



お体、お心両面においてこれからもご健康であられますよう、このblogを見ながらお祈りさせて頂きます。
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Unknown (Unknown)
2006-07-08 00:24:26
上の方のコメントで思ったのですが、やはりこういうお仕事をされていると、亡くなった方の体と接するということに加えて、ご遺族の方の悲しみのオーラにいつも直面されてるわけですよね。



茜さんだけでなく、こういうお仕事をされていらっしゃる方は皆様プロとして淡々と職務をこなされているとは思いますが、ご自分自身でも気がつかないところで心が疲れてしまわれるのではないかと、ふと心配になりました。



頑張ってと言うのはたやすいですが、実際にされるのは大変なお仕事でしょう。

心が切れないようにご自愛していただきたいと思います。

上のコメントの方同様、心のご健康もお祈りしております。
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何か、悲しいですね・・・・・・。 (雀の涙)
2006-07-08 07:54:24
はじめまして。

お邪魔でしたらごめんなさい。



人はどこから来て

何のために生きて

どこへ向かっているのでしょうか・・・?。

この世界の終末はどうなるのでしょうか・・・?



神の存在、愛とは何か、人生の意味は何か、いのちと死の

問題などについて、分かりやすく聖書の福音を書き綴ってい

るブログです。暇なときにご訪問下さい。





~~~~~
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Unknown (tom)
2006-07-08 17:53:26
茜さん いつも楽しみに拝見させていただいております。いつも貴重な気付きをありがとうございます!ここ二日更新されていないので、さぞお忙しい事かと思います。どうか毎日ではなくても、ご自分のペースで書いていただければ嬉しく思います。また次の書き込みを楽しみにしております。
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まさか (Unknown)
2006-07-08 19:59:42
退職なんてことないよね?
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