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6月の合宿課題本『シンセミア』

2007-07-20 09:59:59 | ・例会レポ

「シンセミア 」1~4

阿部和重 著
2006年10月06日発売(朝日文庫)


本郷の老舗旅館、鳳明館本館にて今年も面本パワーが炸裂いたしました。

読書会兼宴会の後は新機軸、面本ウルトラクイズ。懐かしのウルトラクイズを彷彿とさせるマルバツ戦に梅雨の鬱陶しさも吹き飛び、クライマックスの恒例のビンゴ総取り戦へと辿り着きました。

 

課題本は阿部和重「シンセミア」(上・下巻、朝日新聞社刊)

 

著者の故郷、実在の山形県神町を舞台に様々な人間関係が歴史的背景を踏まえて描かれています。虚構と現実とを巧みに構成し、一つの世界の構造を描いている作品です。

 

評価は分かれましたが参加者20名中18名が読破。内容の是非にかかわらず最後まで読ませるパワーがあった作品だったようです。

 

「シンセミア」をネットでみると「マリファナを開花させる段階で雌花を雄花から離し、雌花が受粉しないことでより強くハイになれるように作られたマリファナ」という説明がありました。強いがケミカルではなくナチュラルハイなのですが果たして今回どれだけハイになれたのでしょうか。

 

「嫌いな人は理由がはっきりしているけど、面白かった人は何かしらすっきりしない後味の人が多いみたい」という感想も聞かれました。

 

評価しない人の中には、「人生の中でムダにした2週間だった」と断言した人もいました。

 

「言葉使いが汚い」、「救いが無い一方深遠な闇が見えてくるわけでもない」、「賢いのにわざと汚い言葉を使う小学生のようだ」、「変態を装った常識人の小説なのではないか」など。

 

面白かった人でも、「感情移入できる登場人物がいなかった」、「これだけ悪い人が出てくる小説はめずらしい」、「最後が好きでない」。作品の構成力にはうならされても、評価はねじれていました。

 

講師からは山形県といえば藤沢周平の海坂藩の世界もあるとの指摘もあり。日本の自然主義小説の流れの中で、詩性と物語性を排除していない所で小説世界を構築してきたが、この作品では当てはまらないのではないか。神町に戦後の事件を集約した力技を評価しながら「実際、日本列島には普通じゃない人がふえているしなあ。」

 

著者は中上健次の「枯木灘」、大江健三郎「万延元年のフットボール」を意識していたようです。すっきりとはいかなくてもパンチの効いた作品だったのは確かではないでしょうか。

 

(のりすけやま)

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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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うまいけど (ままりん)
2007-08-13 12:56:52
すごく後味の悪い小説でした
性的犯罪者が、こんな小さな町で、ごく日常的なものとして描かれるのに違和感がありました。しかし、それを肯定して読み進んだのに、のきなみ「作者=創造主」の「制裁」が加えられる結末には、がっかりでした。余韻も何も残さず、読者がバカにされてる気がしてしまうんですが。
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